技術顧問・アドバイザーとして活躍するエンジニアのキャリアパス:経験を活かした新しい働き方

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お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!

結論から言うと、10年以上の経験を持つエンジニアにとって、技術顧問・アドバイザーは「現場を離れずに働き方を変える」有力な選択肢です。
フルタイムの正社員でもなく、完全なフリーランスでもない、第三の働き方として注目されています。

「マネジメントより技術で貢献したい」「複数の会社で経験を活かしたい」「週5日フルコミットは難しいが、技術力は維持したい」

こうした悩みを持つシニアエンジニアの方は多いのではないでしょうか。
私自身、PjMとして複数の技術顧問の方と仕事をしてきましたが、「技術顧問」という働き方は、経験豊富なエンジニアにとって非常に合理的な選択だと感じています。

本記事では、技術顧問・アドバイザーとして活躍するためのキャリアパスと、具体的な始め方を解説します。

技術顧問・アドバイザーとは何か:働き方の全体像

まず、「技術顧問」「技術アドバイザー」とは何かを整理しておきましょう。
これらの役割は、企業の技術的な意思決定をサポートする外部の専門家として位置づけられます。

技術顧問の主な役割

技術顧問が担う役割は、企業のフェーズや課題によって異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。

  • 技術戦略の策定支援:技術選定、アーキテクチャ設計、技術ロードマップの策定
  • 技術的な意思決定のレビュー:重要な技術判断に対するセカンドオピニオン
  • エンジニア組織の構築支援:採用基準の策定、評価制度の設計、チーム構成の最適化
  • 技術的な課題解決:パフォーマンス問題、セキュリティ課題、レガシーシステムの刷新
  • エンジニアの育成・メンタリング:技術リーダーの育成、コードレビュー、技術勉強会の実施

正社員・フリーランスとの違い

技術顧問は、正社員やフリーランスとは異なる特徴を持っています。

  • コミット時間:週1〜2日、月数回など、限定的な稼働が一般的
  • 契約形態:業務委託契約や顧問契約が多く、雇用関係はない
  • 報酬体系:月額固定(10〜50万円程度)または時間単価(1〜3万円/時間)
  • 複数社との契約:同時に複数の企業と契約することが一般的

エンジニアのためのマネジメントキャリアパスでも解説されているように、キャリアの選択肢は「正社員 vs フリーランス」の二択ではありません。
技術顧問は、その中間に位置する柔軟な働き方です。

フリーランスと正社員を行き来する振り子キャリア戦略:働き方の柔軟性を最大化するエンジニアの選択肢でも触れていますが、働き方の選択肢を増やすことは、キャリアのリスクヘッジにもなります。

Man Wearing White Dress Shirt and Black Blazer

ケーススタディ:正社員から技術顧問へ転身した佐藤さんの事例

ここでは、私がPjMとして一緒に仕事をした技術顧問の佐藤さん(仮名・45歳)の事例を紹介します。

状況(Before)

佐藤さんは、大手SIerで20年以上のキャリアを持つシニアエンジニアでした。
転身前の状況は以下の通りです。

  • 役職:技術部門のマネージャー(部下15名)
  • 年収:約1,100万円
  • 課題:マネジメント業務が増え、技術に触れる時間が激減。会議と調整に追われる日々
  • 希望:技術で貢献したいが、年齢的にIC(Individual Contributor)に戻るのは難しいと感じていた

行動(Action)

佐藤さんは、以下のステップで技術顧問への転身を進めました。

  • Step 1:副業として開始:まず、知人のスタートアップで月2回の技術相談を副業として開始(月額10万円)
  • Step 2:実績を積む:6ヶ月間で3社の技術顧問を副業で経験し、「何ができるか」を言語化
  • Step 3:独立を決断:副業収入が月40万円を超えた時点で、正社員を退職して独立
  • Step 4:契約社数を拡大:独立後、5社と技術顧問契約を締結(月額合計120万円)

結果(After)

転身から2年後、佐藤さんの状況は大きく変わりました。

  • 年収:約1,400万円(+300万円)
  • 稼働時間:週3〜4日(以前は週5日+残業)
  • 技術への関与:5社のアーキテクチャ設計に関与し、技術的な意思決定に直接参加
  • 満足度:「マネジメントのストレスから解放され、技術に集中できるようになった」

Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかでも強調されているように、「自分が最も価値を発揮できる領域」に集中することが、キャリアの満足度を高める鍵です。

マネジメントからICに戻るキャリア戦略:技術職回帰で市場価値を高める判断基準でも解説していますが、マネジメントから技術に戻る選択肢は、技術顧問という形でも実現できます。

A Woman in Black Blazer Sitting at the Table

技術顧問の契約形態と報酬相場

技術顧問として活動する際には、契約形態と報酬相場を理解しておくことが重要です。
ここでは、主な契約形態とその特徴を整理します。

契約形態別の特徴

以下のグラフは、各契約形態のメリットを比較したものです。

このグラフから読み取れるポイントは以下の通りです。

  • 業務委託契約:最も一般的。成果物や稼働時間に応じた報酬。柔軟性が高い
  • 顧問契約:月額固定で安定収入。長期的な関係構築に向いている
  • 副業:正社員を維持しながら始められる。リスクが低いが、稼働時間に制限あり
  • 正社員兼務:社員として在籍しながら他社の顧問も務める。安定性と柔軟性のバランス

報酬相場の目安

技術顧問の報酬は、経験・スキル・稼働時間によって大きく異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。

  • 月額固定型:10〜50万円/月(稼働日数や役割による)
  • 時間単価型:1〜3万円/時間(専門性や希少性による)
  • プロジェクト型:50〜200万円/プロジェクト(規模や期間による)

フリーランスの教科書でも解説されているように、報酬交渉では「自分の提供価値」を明確に言語化することが重要です。

転職で年収アップを実現するエンジニアのスキル棚卸しと交渉術で紹介したスキル棚卸しの手法は、技術顧問としての報酬交渉にも活用できます。

技術顧問の契約形態別メリット比較

技術顧問を始めるための準備ステップ

技術顧問として活動を始めるには、いくつかの準備が必要です。
ここでは、具体的なステップを整理します。

Step 1:自分の専門領域を明確にする

技術顧問として求められるのは、「特定の領域における深い専門性」です。
まずは、自分が最も価値を提供できる領域を明確にしましょう。

  • 技術領域:バックエンド、フロントエンド、インフラ、セキュリティ、AI/MLなど
  • 業界知識:金融、医療、EC、SaaSなど、特定業界の知見
  • 組織課題:採用、評価制度、チームビルディング、技術的負債の解消など

Step 2:実績を言語化する

技術顧問の案件を獲得するには、「何ができるか」を具体的に説明できる必要があります。
以下の観点で実績を整理しましょう。

  • 規模:何人のチームで、どのくらいの規模のシステムを扱ったか
  • 成果:パフォーマンス改善率、コスト削減額、リリース頻度の向上など
  • 課題解決:どのような課題を、どのように解決したか

Step 3:副業から始める

いきなり独立するのではなく、副業として技術顧問を始めることをおすすめします。
副業であれば、リスクを抑えながら「技術顧問としての働き方」を体験できます。

副業で技術顧問を始める際のポイントは以下の通りです。

  • 最初の案件は知人経由で探す:信頼関係がある人からの紹介が最もスムーズ
  • 月額10万円程度から始める:最初は実績作りを優先し、単価は後から上げる
  • 契約書は必ず作成する:業務範囲、稼働時間、報酬、秘密保持などを明確に
  • 本業との利益相反に注意:競合他社の顧問は避ける、必要に応じて会社に報告

転職と副業のかけ算でも解説されているように、副業は「キャリアの実験場」として活用できます。

フリーランスエンジニアが案件を選ぶ側に回るための3ステップ戦略:エージェント活用と単価交渉の実践フレームワークで紹介した案件選びの考え方は、技術顧問の案件選びにも応用できます。

Photo Of People Near Wooden Table

おすすめエージェント:技術顧問案件を探す

技術顧問の案件を探す方法はいくつかありますが、エージェントを活用するのが効率的です。
ここでは、技術顧問案件を扱うエージェントの選び方を整理します。

ハイクラス案件を狙う場合

年収1,000万円以上を目指すシニアエンジニアには、ハイクラス特化型のエージェントがおすすめです。
ITエンジニアのハイクラス転職なら【TechGo(テックゴー)】は、IT・Web業界に特化したハイクラス転職サービスで、技術顧問ポジションの案件も扱っています。

フリーランスとして活動する場合

フリーランスとして技術顧問活動を行う場合は、フリーランスエージェントの活用が有効です。
ITフリーランスエンジニアの案件探しなら【techadapt】は、首都圏のハイクラスフリーランス案件に強く、技術顧問的な役割を含む案件も多く扱っています。

また、フリーランスエンジニアに安心保障と豊富な案件紹介を【Midworks】は、正社員並みの福利厚生を提供するフリーランスエージェントで、安定性を重視する方に向いています。

複数エージェントの使い分け

技術顧問案件は、一般的なエンジニア案件よりも数が限られるため、複数のエージェントに登録しておくことをおすすめします。
それぞれのエージェントが持つ案件は異なるため、選択肢を広げることが重要です。

ITエンジニアが転職エージェントを使い分ける判断基準:複数登録のメリットと効果的な活用法で紹介したエージェント活用術も参考にしてください。

A Man and a Woman Shaking Hands in an Office

まとめ

技術顧問・アドバイザーは、経験豊富なエンジニアにとって魅力的なキャリアパスです。
本記事で紹介したポイントを整理すると、以下の通りです。

  • 技術顧問の役割:技術戦略の策定、意思決定のレビュー、エンジニア組織の構築支援など
  • 契約形態:業務委託、顧問契約、副業、正社員兼務など、柔軟な選択肢がある
  • 報酬相場:月額10〜50万円、時間単価1〜3万円が一般的
  • 始め方:まずは副業から始め、実績を積んでから独立を検討する

技術顧問という働き方は、「マネジメントか技術か」という二択を超えた、第三の選択肢です。
まずは副業として小さく始めてみることで、自分に合った働き方かどうかを確認してみてください。
焦らず、着実に実績を積み上げていくことが成功への近道です。

経験を活かして複数の企業に貢献しながら、自分のペースで働く――そんなキャリアを実現する一歩を踏み出してみましょう。

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