新任エンジニアリングマネージャーが最初の90日で信頼を築くオンボーディング戦略

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先日、私のチームに新しいエンジニアリングマネージャー(EM)が着任しました。優秀なエンジニアだった彼が、着任3週間で「何をすればいいかわからない」と相談してきたのです。技術力には自信があっても、マネジメントの立ち上がりに苦戦するケースは珍しくありません。

新任EMが直面する最大の課題は、「成果を出すまでの時間」と「信頼を築くまでの時間」のギャップです。エンジニアとして即戦力だった人ほど、マネージャーとしての成果がすぐに見えないことに焦りを感じます。

本記事では、新任EMが最初の90日間で何を優先し、どのようにチームの信頼を獲得していくかを、私自身の経験と受け入れ側の視点から解説します。

目次

新任EMが陥りやすい3つの罠

新任EMの多くが、着任直後に同じパターンで躓きます。まずはこれらの罠を認識することが、90日間を有効に使う第一歩です。

罠1:すぐに成果を出そうとする

エンジニアとして活躍してきた人ほど、「早く結果を見せなければ」というプレッシャーを感じます。しかし、チームの状況を理解しないまま改善施策を打ち出すと、メンバーからは「現場を知らないのに口を出してくる人」と見られてしまいます。

罠2:前任者のやり方を否定する

「自分ならこうする」という思いが強いと、前任者や既存のプロセスを批判しがちです。しかし、そのプロセスには何らかの理由があったはずです。エンジニアのためのマネジメントキャリアパスでも強調されているように、まずは現状を理解し、なぜそうなっているのかを把握することが重要です。

罠3:1on1を形式的にこなす

「1on1をやらなければ」という義務感だけで始めると、単なる進捗確認の場になってしまいます。新任EMにとって1on1は、チームメンバーを理解するための最重要ツールです。形式ではなく、相手の話を聴くことに集中すべきです。

これらの罠を避けるためには、90日間の優先順位を明確にする必要があります。中堅エンジニアがキャリア停滞を抜け出す90日設計でも触れていますが、最初の90日は「学習期間」と割り切ることが大切です。

A group of adults having a team meeting outdoors in a garden during the day.

90日オンボーディングフレームワーク

新任EMの90日間を3つのフェーズに分けて考えます。各フェーズで達成すべきゴールと、具体的なアクションを整理しました。

フェーズ1:観察と理解(1〜30日)

最初の30日間は「聴く」ことに徹します。この期間の目標は、チームの現状を正確に把握することです。

具体的なアクションとしては、全メンバーとの1on1を2回以上実施し、チームの歴史、現在の課題、メンバーの強み・弱みを把握します。チームトポロジーで紹介されているチーム構造の観点も参考になります。また、既存のドキュメント、過去の振り返り資料、技術的負債のリストなどを読み込み、チームが抱えている課題の全体像を掴みます。

フェーズ2:関係構築と小さな貢献(31〜60日)

2ヶ月目は、信頼関係を深めながら、小さな改善を始めます。この期間の目標は、「この人は味方だ」とメンバーに思ってもらうことです。

メンバーが困っていることを1つ解決する、会議の進行を改善する、情報共有の仕組みを整えるなど、すぐに効果が見える小さな改善から始めます。大きな変革は後回しにし、まずは「この人がいると助かる」という実感を持ってもらうことが重要です。

フェーズ3:方向性の提示と実行(61〜90日)

3ヶ月目は、チームの方向性を示し、中期的な改善に着手します。この期間の目標は、チームとして次の四半期に何を達成するかを明確にすることです。

フェーズ1・2で得た情報をもとに、チームの課題と優先順位を整理し、メンバーと共有します。開発リーダーからプロダクトマネージャーへのキャリアチェンジガイドでも触れていますが、方向性を示すことはマネージャーの重要な役割です。

新任EMの90日間で重視すべき活動の優先度

ケーススタディ:私が新任EMを受け入れたときの90日間

ここでは、私のチームに新任EMが着任したときの実例を紹介します。

状況(Before)

私のチームは、バックエンドエンジニア5名、フロントエンドエンジニア3名、QAエンジニア2名の計10名構成でした。前任EMが退職し、社内異動で新しいEMが着任することになりました。新任EMは、別チームでテックリードを3年務めた30代前半のエンジニアで、マネジメント経験はありませんでした。

チームの課題としては、リリースサイクルが月1回と遅い、技術的負債が溜まっている、メンバー間のコミュニケーションが希薄という状態でした。

行動(Action)

新任EMと私(PjM)で、90日間のオンボーディング計画を立てました。具体的には、以下のスケジュールで進めました。

最初の30日間は、新任EMが全メンバー10名と週1回・30分の1on1を実施。私は同席せず、EMとメンバーの関係構築を優先しました。EMには「最初の1ヶ月は何も変えなくていい。とにかく聴くことに集中してほしい」と伝えました。1on1では「今困っていること」「チームについて思うこと」「キャリアの希望」の3つの質問を必ず聴くようにしました。EMは1on1の内容をNotionに記録し、各メンバーの課題と希望を一覧化しました。

31〜60日目は、EMが1on1で聞いた課題の中から「すぐに解決できるもの」を3つ選び、実行しました。選定基準は「1週間以内に完了できる」「メンバーの同意が得られる」「効果が目に見える」の3点です。具体的には、朝会の運用を変更し時間短縮(30分→15分、アジェンダを事前共有するルールを導入)を実現しました。また、Slackチャンネルの整理を実施し50チャンネル→25チャンネルに統合、命名規則を統一しました。さらに、ドキュメント管理をNotionに移行し、Confluence、Google Drive、ローカルに散在していたものを一元化しました。Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかで紹介されている「クイックウィン」の考え方を参考にしました。

61〜90日目は、EMがチームの技術的負債を可視化し、四半期ごとに20%の工数を負債解消に充てる提案をしました。負債の可視化には、各メンバーから「これがあると開発が遅くなる」と感じる箇所をリストアップしてもらい、影響度(高・中・低)と対応工数(1日・3日・1週間)のマトリクスで優先順位を付けました。最初の四半期では、影響度「高」かつ工数「1日」の項目から着手することを決定しました。メンバーからの反発はなく、むしろ「やっと手を付けられる」という声が上がりました。

結果(After)

90日後の変化は以下の通りです。

リリースサイクルは月1回から隔週に改善。メンバーの1on1満足度は5段階中3.2から4.1に向上。EMに対する信頼度調査では、10名中9名が「信頼できる」と回答しました。

特に効果的だったのは、最初の30日間で「何も変えない」と決めたことです。新任EMは「早く成果を出したい」と焦っていましたが、この期間があったからこそ、メンバーの本音を聞き出すことができました。

SIerから自社開発企業に転職したエンジニアが最初の90日で信頼を勝ち取る技術キャッチアップ戦略でも同様のアプローチを紹介していますが、新しい環境での最初の90日は「学習期間」と割り切ることが成功の鍵です。

Top view of a diverse team collaborating in an office setting with laptops and tablets, promoting cooperation.

90日間を成功させるための習慣化ステップ

フレームワークを知っているだけでは意味がありません。ここでは、90日間を確実に成功させるための具体的な習慣を紹介します。

週次の振り返り習慣

毎週金曜日に30分、以下の3つの質問に答える時間を確保します。

1. 今週、メンバーから何を学んだか
2. 今週、メンバーに何を提供できたか
3. 来週、最も優先すべきことは何か

この振り返りを90日間続けることで、自分の成長と課題が可視化されます。学習する組織 ― システム思考で未来を創造するでも、定期的な振り返りの重要性が強調されています。

1on1の質を高めるテンプレート

新任EMが陥りがちなのは、1on1を「進捗確認の場」にしてしまうことです。以下のテンプレートを使うと、メンバーの本音を引き出しやすくなります。

最初の5分は「最近どう?」というオープンな質問から始めます。中盤の20分は、メンバーが話したいことを聴きます。最後の5分で、次のアクションを確認します。ポイントは、EMが話す時間を全体の20%以下に抑えることです。

上司・ステークホルダーとの期待値調整

新任EMは、メンバーだけでなく、上司やステークホルダーとの関係構築も重要です。着任1週間以内に、上司と「90日後に何を達成していれば成功か」を明確にしておきます。

フリーランスエンジニアの単価交渉を成功させる準備と実践テクニックでも触れていますが、期待値の調整は信頼構築の基本です。

Two professional women discussing ideas on a whiteboard in a modern office setting.

おすすめエージェント・サービス

ハイクラス転職を目指す場合

EMとしての経験を活かして年収アップを狙うなら、ハイクラス向けの転職エージェントが有効です。ITエンジニアのハイクラス転職なら【TechGo(テックゴー)】は、ITエンジニアのハイクラス転職に特化しており、EM経験者の市場価値を正しく評価してくれます。

また、自分らしく働けるエンジニア転職を目指すなら【strategy career】は、自分らしい働き方を重視する方に向いています。リモートワークやフレックスなど、働き方の条件も含めて相談できます。

ITコンサルへのキャリアチェンジ

EM経験を活かしてITコンサルタントを目指す場合は、テックゲートエキスパート|20代・30代のITコンサル転職が選択肢になります。20代・30代のITコンサル転職に強く、EM経験者のポテンシャルを評価してくれます。

複数サービスの使い分け

転職活動では、複数のエージェントを並行して使うことをおすすめします。複数の内定を獲得するための並行応募戦略でも解説していますが、エージェントによって得意な領域が異なるため、2〜3社を併用することで選択肢が広がります。

Laptop displaying code with reflection, perfect for tech and programming themes.

まとめ

新任EMが最初の90日間で信頼を築くためのポイントを整理します。

短期的には、最初の30日間は「聴く」ことに徹し、チームの現状を正確に把握することが重要です。すぐに成果を出そうとせず、メンバーとの関係構築を優先します。

中期的には、31〜60日目で小さな改善を積み重ね、「この人がいると助かる」という実感を持ってもらいます。61〜90日目で方向性を示し、チームとして次の四半期に何を達成するかを明確にします。

長期的には、90日間のオンボーディングを成功させることで、その後のマネジメントがスムーズになります。最初の90日で築いた信頼は、チームの成果を最大化するための土台になります。

EMへのキャリアチェンジは、エンジニアとしての成長の延長線上にあります。焦らず、着実に信頼を積み上げていきましょう。最初の90日で築いた信頼は、その後のマネジメントキャリアを支える土台になります。

厳しめIT女子 アラ美による解説ショート動画はこちら

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この記事を書いた人

ITアライグマのアバター ITアライグマ ITエンジニア / PM

都内で働くPM兼Webエンジニア(既婚・子持ち)です。
AIで作業時間を削って実務をラクにしつつ、市場価値を高めて「高年収・自由な働き方」を手に入れるキャリア戦略を発信しています。

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