
中堅エンジニアがキャリア停滞を抜け出す90日設計:市場価値・転職・単価を同時に伸ばす
お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!
先日、評価面談のあとに1on1をした中堅エンジニア(経験7年・30代前半)が、ぽつりと言いました。
「成果は出しているつもりなのに、評価も年収も伸びない」
「転職した方がいい気もするけど、何から手を付ければいいかわからない」
この手の「キャリア停滞」は、努力不足ではなく打ち手の順番がズレているだけで起きがちです。
本記事では、私がPjMとして現場・採用・育成の両方を見てきた経験を踏まえつつ、市場価値の棚卸し→転職準備→単価(年収)交渉を90日で前に進めるための設計図を整理します。
問題の枠組みと前提の整理
キャリア停滞は、よくある一言で片付けると「成長が止まった」ですが、実態はもう少し分解できます。
私の経験上、詰まっているポイントは大きく3つに分かれます。
- 評価の基準が見えていない:求められている期待値が「実装」なのか「影響範囲」なのかが曖昧
- 市場価値の言語化ができていない:成果があっても、外部市場で通じる形に翻訳できていない
- 行動が単発で終わっている:転職サイト登録・資格学習などが点で終わり、線の戦略になっていない
ここで重要なのは、「全部を頑張る」ではなく捨てる勇気を持つことです。
思考の整理にはエッセンシャル思考が役に立ちます。
市場価値の考え方の土台は、30代エンジニアが年収800万円を突破するためのキャリア設計と転職戦略でも触れているので、あわせて読んでおくと判断が早くなります。
停滞の正体は「評価」ではなく「期待値のズレ」
中堅エンジニアの停滞で多いのは、本人の実力が落ちたわけではなく、組織の期待値が「実装の速さ」から「影響範囲の広さ」へ移っているのに、本人の打ち手が変わっていないパターンです。
たとえば、
- チームが求めている:設計レビューで意思決定できる、障害の再発を止められる、育成できる
- 本人が頑張っている:チケットを早く捌く、夜間対応を引き受ける、炎上を火消しする
このズレは、努力を重ねるほど深刻になります。
なぜなら「やればやるほど忙しくなり、戦略を考える時間がなくなる」からです。
市場価値は「スキル」ではなく「再現可能な成果」で決まる
市場価値を語るとき、つい言語やフレームワーク名の羅列になりがちです。
でも採用側が見たいのは、実装の経験よりも「再現可能な成果」です。
同じJavaでも、
- 何を改善したか:性能、安定性、保守性、開発体験
- どう判断したか:なぜその打ち手を選び、何を捨てたか
- どこまで影響したか:チーム、ユーザー、売上、運用コスト
この3点が揃うと、現職の評価も転職の評価も一気に通りやすくなります。
逆に言うと、ここを作らずに転職活動へ突入すると、面接で「で、あなたは何が強みですか?」の問いに詰まりやすいです。
ケーススタディ:キャリア停滞を90日で抜けた「伸び悩み」の正体
【状況(Before)】
Aさん(32歳・バックエンドエンジニア・経験7年)は、SaaSの保守運用と新機能開発を担当。
直近1年で障害件数を月10件→月3件に減らし、リリース頻度も月1回→隔週に改善しました。
しかし評価は据え置きで、年収も520万円のまま。
【行動(Action)】
Aさんが最初にやったのは「転職」ではなく、成果を外部市場の言葉に翻訳する棚卸しでした。
具体的には、
1. 改善内容を「影響範囲」「再現手順」「数字」で1枚にまとめる
2. その1枚をベースに職務経歴書の冒頭3行を作り直す
3. エージェント面談を2社入れ、想定年収レンジと不足スキルを確認する
【結果(After)】
90日後、Aさんは「SRE寄りバックエンド」ポジションで年収620万円のオファーを獲得。
同時に、現職でも評価面談の材料が整ったことで、次の昇給査定で+30万円の増額が通りました。

フレームワークの全体像
ここからは、90日を「4ブロック」に分けた設計図を示します。
ポイントは、転職か現職残留かを最初に決めるのではなく、どちらにも転べる材料を先に集めることです。
意思決定の型は、転職活動で複数内定を獲得するITエンジニアの並行応募戦略:意思決定フレームワークと交渉術が参考になります。
計画を「仮説→検証」に落とす感覚は仮説思考が扱っているので、迷いが多い人ほど一度読み返すと腹落ちしやすいです。
第1ブロック(1〜14日):成果を「外部市場の言葉」に翻訳する
最初の2週間でやるのは、転職サイトを開くことではありません。
まずは、あなたの成果を「外部市場の言葉」に翻訳します。
- 成果の棚卸し:改善・削減・短縮・安定化の数字を集める
- 判断の棚卸し:なぜその設計にしたか、なぜその順番にしたか
- 再現手順:読者(採用側)が同じ改善を再現できる粒度で書く
私がPjMとして評価面談の準備をするときも、まずはここから始めます。
この材料がないと、評価者がどれだけ善意でも「雰囲気の良さ」「忙しそうだった」みたいな評価に流れてしまうからです。
第2ブロック(15〜35日):市場で検証し、戦う土俵を決める
棚卸しができたら、次にやるのは「市場での検証」です。
ここで初めて、
- 今の経験で狙える年収レンジ
- 狙える職種(SRE寄り、EM寄り、社内SE寄りなど)
- 足りない経験(レビュー、設計、採用、運用など)
を現実ベースで確認します。
この段階で「戦う土俵」が定まると、学ぶべきこと・やるべきことが一気に減ります。
第3ブロック(36〜63日):応募・面談で材料を増やす
このブロックは、内定を取るためというより、材料を増やすための期間です。
応募・面談を通して、
- あなたの棚卸しのどこが刺さるのか
- どの実績が弱いのか(突っ込まれるのか)
- どの軸が市場で評価されるのか
を言語化していきます。
第4ブロック(64〜90日):交渉と意思決定を一気に終わらせる
最後の1カ月は、交渉と意思決定です。
ここで大事なのは「交渉術」よりも、交渉の材料が揃っていることです。
具体的には、
- 成果の棚卸しが数字とストーリーで揃っている
- 市場レンジが複数ソースで検証されている
- 選択肢が1社ではなく複数ある
この3つが揃っていると、現職の評価交渉でも転職のオファー交渉でも、話が早いです。
以下のグラフは、90日で前に進めるための行動配分の目安です。
現職の忙しさに合わせて調整して構いませんが、棚卸しだけで30日溶かすのが一番もったいないです。

具体シーン1:現場での適用例
フレームワークは「きれいに計画を立てる」ためではなく、現場の意思決定を早めるために使います。
私がPjMとしてよく見るのは、成果は出ているのに「評価される形」に翻訳されず、本人だけが消耗しているケースです。
評価される材料の集め方は、ITエンジニアの転職失敗パターンと回避策:よくある後悔から学ぶキャリア設計の「失敗の芽を先に潰す」視点が役立ちます。
棚卸しに使うフォーマットを作るなら、仕事の分解に強い達人プログラマーの考え方が意外と効きます。
適用例1:評価面談の「質問」に先回りする
評価面談でよく聞かれるのは、
- 今年の成果は何ですか
- 来年は何を伸ばしますか
- チームにどう影響しましたか
です。
この質問は、準備していないと「頑張りました」で終わります。
私はPjMとして面談準備の段階で、必ず「数字」「判断」「影響範囲」を1枚にまとめます。
その1枚があるだけで、評価者の質問が「確認」になり、面談の主導権を取り戻せます。
適用例2:転職を決めていなくても面談を入れる
転職を決める前に面談を入れるのは、逃げではありません。
むしろ「現職に残る」選択を強くするための検証です。
面談で得られるのは、求人の紹介以上に「どの実績が評価されるか」「どこが弱いか」というフィードバックです。
適用例3:現職での打ち手を「市場で通る形」に変える
市場で通る形が見えると、現職で何をやればいいかも変わります。
たとえば、
- 障害の火消しより、再発防止の仕組み(アラート設計・Runbook整備)
- 実装量より、意思決定(技術選定・優先順位)
- 個人の成果より、チームの成果(レビュー文化・育成)
に寄せるだけで、「評価される軸」が揃い始めます。

行動に落とし込む・習慣化のステップ
90日設計は、実は「毎日の小さな習慣」で決まります。
転職サイトを眺めるだけでも、勉強を始めるだけでも、面談を入れるだけでも中途半端に終わるからです。
習慣化の設計は、3年未満の転職は本当に不利なのか:短期離職のリスクと戦略的キャリア設計のように「意思決定の前に行動を整える」考え方と相性が良いです。
継続の仕組みづくりにはジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣が鉄板です。
週1回30分の「棚卸しタイム」を先に確保する
中堅層が詰まる最大の原因は、忙しさです。
忙しさを理由にすると、棚卸しも面談も永遠に後回しになります。
なので私は、最初に「棚卸しタイム」をカレンダーに固定するのをおすすめします。
毎週30分で構いません。
その30分で、
- 今週の成果(数字)
- 今週の判断(なぜそれを選んだか)
- 来週の実験(何を試すか)
だけを書き残します。
面談で聞くべきことをテンプレ化する
エージェント面談やカジュアル面談は、慣れていないと「良さそうですね」で終わります。
私は、面談の質問をテンプレ化して、毎回同じ観点で比較するようにしています。
たとえば、
- この職種で評価される成果は何か
- 入社後90日で求められる期待値は何か
- 年収レンジが上下する条件は何か(技術、マネジメント、ドメイン)
この3点が聞けるだけで、情報の粒度が一段上がります。
現職の動き方も「検証モード」に切り替える
「転職するか残るか」を決める前に、現職でできる実験は意外とあります。
たとえば、
- 設計レビューの主担当を引き取る
- 運用の負債を1つだけ潰す(アラート、Runbook、SLOなど)
- 後輩の1on1を月2回やる
こうした実験は、転職の面接でもそのまま語れます。
私はPjMとしてチームのキャリア相談に乗るとき、「転職準備のために現職を捨てないで、現職を素材にする」とよく言います。

おすすめエージェント・サービス
ここでは、読者の悩みに合わせて「何を相談すべきか」と「どのサービスが向いているか」を整理します。
重要なのは、登録先を増やすことではなく、検証したい仮説(年収レンジ/働き方/単価)に合わせて使い分けることです。
エージェントの使い分けは、ITエンジニアが転職エージェントを使い分ける判断基準:複数登録のメリットと効果的な活用法が基準になります。
使い分けの基準は「質問の種類」
エージェントやサービスは、万能ではありません。
なので私は「どこに登録するか」ではなく、「何を聞きたいか」から逆算します。
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相場が見えると、現職で「何を伸ばすべきか」も決めやすくなります。

まとめ
キャリア停滞を抜け出すために必要なのは、気合いではなく打ち手の順番です。
- 市場価値の棚卸しは「外部市場の言葉」に翻訳する
- 転職準備と現職の評価材料づくりは同じ素材で進められる
- 90日は短いので、仮説→検証→意思決定のサイクルを回す
- 年収アップや単価アップは、交渉より前の準備で決まる










