【実録】Void Editor vs Cursor vs Claude Code|1ヶ月使い倒したPjMが語る、プロジェクト別の最適解

こんばんは!IT業界で働くアライグマです!

「Void Editor」「Cursor」「Claude Code」—。この3つのAIエディタの名前を、最近よく耳にするようになったのではないでしょうか。GitHub Copilotが切り開いたAIコーディング支援の世界は、今や群雄割拠の戦国時代を迎えています。

しかし、選択肢が増えた分、新たな悩みも生まれました。「結局、どれを使えばいいの?」「それぞれの強みと弱みは?」「プロジェクトによって使い分けるべき?」

私自身、PjMとして複数のプロジェクトを並行して進める中で、この3つのツールを実際に1ヶ月間、徹底的に使い倒してきました。Laravel APIの開発、レガシーPHPコードのリファクタリング、新規機能のプロトタイピング、そしてドキュメント作成まで、あらゆる場面でそれぞれのツールの実力を試してきたのです。

その結果、見えてきたのは「万能のツールは存在しない」という、ある意味で当たり前の結論でした。しかし同時に、「適材適所で使い分ければ、生産性は確実に向上する」という確信も得ることができました。

この記事では、机上の空論ではなく、実際のプロジェクトで得た生々しい経験を基に、それぞれのツールが本当に輝く場面と、逆に足を引っ張る場面を、包み隠さずお伝えします。

Void Editor:ミニマリストのための究極の集中環境

まず最初に取り上げるのは、検索トレンドでも注目度が急上昇している「Void Editor」です。

以前の記事「なぜ私はCursorより「Void Editor」を"気持ちいい"と感じたか?」でも触れましたが、このエディタの最大の特徴は、その徹底したミニマリズムにあります。

Void Editorが圧倒的に優れている場面

私が実際に使って「これは他のツールでは代替できない」と感じたのは、以下のような場面でした。

深い思考が必要なアーキテクチャ設計時。新規プロジェクトのデータベース設計や、複雑なビジネスロジックの実装方針を考える際、Void Editorの静寂な環境は、まるで禅の境地に入ったかのような集中状態を作り出してくれます。余計な通知も、派手なUIアニメーションも、サジェストのポップアップもない。ただ、コードと自分だけが存在する空間。

セキュリティが最優先のプロジェクト。金融系のクライアントワークや、個人情報を扱うシステムの開発では、コードを外部に送信しないことが絶対条件となる場合があります。Void Editorのローカル完結型のAI支援は、こうした要件に完璧に応えてくれます。

実際、先月担当した決済システムのリファクタリングプロジェクトでは、Void Editorを使うことで、セキュリティポリシーを満たしながら、AIの恩恵を受けることができました。

Void Editorの限界と向かない場面

一方で、Void Editorには明確な限界もあります。

大規模なチーム開発には不向きです。VSCodeやJetBrains系IDEが持つ、豊富な拡張機能やチーム連携機能がないため、複数人での開発では生産性が落ちる可能性があります。

また、学習曲線が急峻であることも事実です。「Void Editor入門:インストールから基本設定までを徹底解説」でも詳しく解説していますが、初期設定にはそれなりの知識と時間が必要です。

Cursor:コンテキスト理解の王者

次に、多くのエンジニアから支持を集めている「Cursor」について見ていきましょう。

Cursor + Ollamaで実現する、完全ローカルAIコーディング術」でも紹介したように、Cursorの最大の強みはプロジェクト全体のコンテキストを理解する能力にあります。

Cursorが本領を発揮する場面

既存プロジェクトへの機能追加において、Cursorは他の追随を許しません。

先週、5年前から運用されているLaravelプロジェクトに新機能を追加する案件がありました。コードベースは10万行を超え、独自のヘルパー関数やミドルウェアが複雑に絡み合っている状態。正直、どこから手をつけていいか途方に暮れていました。

しかし、Cursorに「既存の認証システムを拡張して、2要素認証を追加したい」と伝えると、驚くべきことが起きました。既存のUserモデル、認証ミドルウェア、そしてビューファイルまで、すべてを考慮した上で、最小限の変更で機能を実装する方法を提案してくれたのです。

コードレビューとリファクタリングも、Cursorの得意分野です。「このコントローラーのメソッドが肥大化しているので、責務を分割したい」と依頼すると、既存のアーキテクチャパターンに沿った形で、きれいにリファクタリングしてくれます。

ただし、AIが提案するリファクタリングが本当に適切かを判断するには、リファクタリングの原理原則を理解している必要があります。

リファクタリング 既存のコードを安全に改善する(第2版)

Martin Fowlerによるこの名著は、コードの振る舞いを維持しながら内部構造を改善する技法を体系的に解説しています。Cursorが生成したリファクタリング案を評価し、さらにブラッシュアップするための知識が、この一冊で身につきます。

Cursorの弱点と注意点

ただし、Cursorにも弱点はあります。

月額料金が高いことは、個人開発者にとって大きなハードルです。また、インターネット接続が必須であるため、オフライン環境では使えません。

さらに、プロジェクトのコンテキストを理解させるために、初期の学習時間が必要です。

このようなAIツールの限界を理解し、その上で効果的に活用するためには、エンジニアとしての確固たる基礎が不可欠です。

達人プログラマー ―熟達に向けたあなたの旅

AIが生成したコードの品質を見極め、適切に修正・改善できる力。それは、この名著が説く「プラグマティックなアプローチ」から生まれます。技術のトレンドに左右されない、本質的な開発者としての在り方を学ぶ上で、最高の投資となるでしょう。

Claude Code:ターミナルの魔術師

最後に、私が最近最も使用頻度が高くなっている「Claude Code」について語らせてください。

私がPhpStormよりターミナルの「Claude Code」を開く時間が増えた3つの理由」でも詳しく書きましたが、このツールの魅力はCLIとの親和性の高さにあります。

Claude Codeが最強になる瞬間

バッチ処理やスクリプトの作成では、Claude Codeの右に出るものはありません。

例えば、「CSVファイルから特定の条件でデータを抽出し、別のフォーマットに変換してAPIに送信する」といったタスク。こうした一連の処理を、自然言語で説明するだけで、エラーハンドリングまで含めた堅牢なスクリプトを生成してくれます。

// Claude Codeが生成したバッチ処理の例
$csv = new SplFileObject('data.csv');
$csv->setFlags(SplFileObject::READ_CSV);
$filtered = [];
foreach ($csv as $row) {
    if ($row[2] > 1000 && $row[3] === 'active') {
        $filtered[] = [ 'id' => $row[0], 'name' => $row[1], 'value' => $row[2] ];
    }
}

// API送信処理(エラーハンドリング付き)
try {
    $response = Http::post('https://api.example.com/data', $filtered);
    if ($response->successful()) {
        Log::info('Data uploaded successfully');
    }
} catch (Exception $e) {
    Log::error('Upload failed: ' . $e->getMessage());
}

デプロイメントやインフラ作業も、Claude Codeの得意分野です。DockerfileやGitHub Actionsの設定ファイル生成、シェルスクリプトの作成など、ターミナルで完結する作業では圧倒的な生産性を発揮します。

Claude Codeの制約事項

一方で、GUIベースの開発には向きません。ビジュアルなデバッガーや、リアルタイムのコード補完を求める場合は、CursorやVSCodeの方が適しています。

また、プロジェクト全体の把握が苦手という弱点もあります。単一ファイルや小規模なスクリプトには強いですが、大規模なアプリケーション開発では、Cursorに軍配が上がります。

実践的な使い分けガイドライン

1ヶ月間の実験を経て、私は以下のような使い分けルールを確立しました。

プロジェクトの性質による使い分け

新規開発・プロトタイピングCursor 理由:ゼロから構築する際の提案力と、コード生成の速度が圧倒的。「生産性を10倍にするCursorとObsidianの連携方法」で紹介した手法を使えば、アイデアから実装までのスピードがさらに加速します。

既存システムの保守・改修Cursor または Claude Code 理由:小規模な修正ならClaude Code、大規模なリファクタリングならCursorが適切。

セキュリティ重視のプロジェクトVoid Editor 理由:コードを外部に送信しない唯一の選択肢。

スクリプト・自動化Claude Code 理由:CLIとの親和性が高く、バッチ処理に最適。

タスクの種類による使い分け

深い思考が必要な設計Void Editor 朝一番の頭がクリアな時間に、Void Editorで設計を練る。これが私のルーティンになっています。

コードレビューCursor プロジェクト全体を理解した上でのレビューが可能。

定型作業の自動化Claude Code マイグレーションファイルの生成、テストデータの作成など。

ドキュメント作成Cursor + ObsidianCursorとObsidianの組み合わせは何がすごいのか?」で解説した通り、この組み合わせは技術文書作成において最強です。

導入コストと学習曲線の現実

それぞれのツールを導入する際の、現実的なコストと時間も共有しておきます。

初期投資と月額コスト

Void Editor

  • 初期投資:0円(オープンソース)
  • 月額:0円
  • 隠れたコスト:学習時間(約20時間)

Cursor

  • 初期投資:0円
  • 月額:約20ドル(Pro版)
  • 隠れたコスト:プロジェクトごとの初期設定時間

Claude Code

  • 初期投資:0円
  • 月額:Claude Pro(約20ドル)
  • 隠れたコスト:PhpStormなどのIDEライセンス(併用する場合)

習熟までの時間

私の経験では、基本的な操作を習得するまでに要した時間は以下の通りでした。

  • Claude Code:2-3時間(最も簡単)
  • Cursor:1-2日(VSCode経験者なら数時間)
  • Void Editor:1週間(カスタマイズ含む)

複雑なAIエディタはもう不要?「Void Editor」の始め方」を参考にすれば、Void Editorの習得時間は短縮できるはずです。

組み合わせ使用による相乗効果

実は、最も生産性が上がったのは、複数のツールを組み合わせて使った時でした。

私の黄金パターン

  1. 朝:Void Editorで設計とアーキテクチャを考える
  2. 午前:Cursorで実装を進める
  3. 午後:Claude Codeでテストとデプロイメントスクリプトを作成
  4. 夕方:Cursor + Obsidianでドキュメントを整備

この流れにより、それぞれのツールの強みを最大限に活かすことができています。

特に効果的だったのが、Void EditorとCursorの併用です。Void Editorで練った設計を、Cursorで高速に実装する。この組み合わせは、品質とスピードの両立を可能にしてくれました。

長時間の作業を快適にするため、キーボードにもこだわっています。

ロジクール SIGNATURE K855BG

このキーボードの魅力は、現代の開発ワークフローに寄り添う徹底した実用性にあります。最大3台のデバイスをシームレスに切り替えるBluetoothマルチポイント機能は、メインの開発マシンとiPadでのドキュメント確認、スマートフォンでのSlack返信などを、一つのキーボードで完結できます。また、電池式でありながら長寿命という点も、充電を忘れがちな私にとっては、日々の小さなストレスを確実に減らしてくれる重要なポイントです。

よくある失敗パターンと対策

この1ヶ月で、私自身も多くの失敗を経験しました。同じ轍を踏まないよう、失敗パターンと対策を共有します。

失敗1:ツールに振り回される

症状:新しい機能を試すことに夢中になり、本来の開発が進まない。

対策:各ツールの「コア機能」だけをまず習得する。高度な機能は、必要になってから学ぶ。

失敗2:不適切なツール選択

症状:Void Editorで大規模チーム開発を試みて、生産性が低下。

対策:プロジェクト開始時に、要件とツールの特性をマッチングする時間を設ける。

失敗3:セキュリティ意識の欠如

症状:機密情報を含むコードをCursorで扱ってしまう。

対策:プロジェクトごとに「使用可能ツールリスト」を作成し、チーム全体で共有。

今後の展望と準備すべきこと

AIエディタの進化は、まだ始まったばかりです。今後予想される変化と、それに備えるべきことを考察します。

統合の時代へ

現在は各ツールが独自の強みを持っていますが、いずれは統合されたソリューションが登場するでしょう。JetBrainsが開発を進めている「JetBrains Junie」や、Amazonの「Kiro」など、大手企業の参入も相次いでいます。

ローカルLLMの重要性増大

プライバシーとコストの観点から、ローカルLLMの重要性は今後ますます高まるでしょう。「Cursor + Ollamaで実現する、完全ローカルAIコーディング術」のような設定が、標準的になる日も近いかもしれません。

必要なスキルセット

これからのエンジニアに求められるのは、AIツールを使いこなす能力と、AIには任せられない創造的な問題解決能力の両方です。

具体的には:

  • プロンプトエンジニアリング
  • AIが生成したコードの品質評価能力
  • セキュリティとプライバシーの知識
  • 複数ツールを組み合わせる設計力

まとめ

1ヶ月間、Void Editor、Cursor、Claude Codeを使い倒した結果、見えてきたのは「完璧なツールは存在しない」という真実と、「適材適所の使い分けこそが最強」という結論でした。

Void Editorは、深い思考とセキュリティが求められる場面で。 Cursorは、大規模プロジェクトとチーム開発で。 Claude Codeは、自動化とCLI作業で。

それぞれが持つ強みを理解し、プロジェクトの特性に応じて使い分ける。そして時には、複数のツールを組み合わせることで、相乗効果を生み出す。

これが、現時点での私の答えです。

ただし、この答えも、ツールの進化とともに変わっていくでしょう。重要なのは、常に新しいツールに触れ、評価し、最適な選択を更新し続けることです。

あなたも、まずは気になるツールから試してみてはいかがでしょうか。「Void Editorの導入ガイド」や「Cursor × Obsidian連携入門」など、過去記事も参考にしながら、自分だけの最適解を見つけてください。

AIエディタの戦国時代は、まだ始まったばかり。この激動の時代を、共に楽しみながら乗り越えていきましょう。