smtp-tunnel-proxyでDPIファイアウォールを回避する:SMTP偽装による隠密通信の仕組みと検知対策

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先日、GitHubで「smtp-tunnel-proxy」というツールがトレンド入りしていました。これはTCPトラフィックをSMTPメール通信に偽装し、DPI(Deep Packet Inspection)ファイアウォールを回避するという興味深いツールです。

セキュリティエンジニアとして、こうした「攻撃者が使う可能性のあるツール」の仕組みを理解することは、検知・対策の設計において非常に重要です。本記事では、smtp-tunnel-proxyの動作原理を解説し、セキュリティ監視・対策の観点から何を見るべきかを整理します。

目次

DPIファイアウォールとは何か

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DPI(Deep Packet Inspection)ファイアウォールは、従来のパケットフィルタリングとは異なり、パケットのペイロード(データ本体)を解析して通信内容を判別する技術です。

従来のファイアウォールとDPIの違い

従来のファイアウォールは、送信元・宛先IPアドレスやポート番号だけを見て通信の許可・拒否を判断していました。しかしDPIは、パケットの中身を見て「これはHTTPなのか、SSHなのか、それとも別のプロトコルなのか」を判別します。

  • パケットフィルタリング:ヘッダ情報(IP、ポート)のみを検査
  • ステートフルインスペクション:コネクションの状態を追跡
  • DPI:ペイロードを解析してアプリケーション層のプロトコルを識別

DPIにより、「ポート443を使っているが実際はVPNトラフィックである」といった偽装を検知できるようになりました。企業ネットワークや国家レベルの検閲システムで広く使われています。mongobleedで発覚したMongoDBの脆弱性と対策でも解説した通り、セキュリティの世界は攻防の連続です。

IT女子 アラ美
DPIってそんなに高度な技術なんですね。普通のVPNは見破られちゃうってことですか?

ITアライグマ
はい、OpenVPNやWireGuardの標準プロトコルはDPIで識別されやすいです。そこで登場するのがプロトコル偽装技術ですね。

smtp-tunnel-proxyの仕組み

smtp-tunnel-proxyは、任意のTCPトラフィックをSMTPプロトコルに見せかけて転送するツールです。GitHubで公開されており、DPIを回避する目的で設計されています。

ファイアウォール回避手法別の検知難易度

アーキテクチャと動作フロー

smtp-tunnel-proxyの基本アーキテクチャは以下の通りです。

  1. クライアント側でローカルプロキシを起動
  2. アプリケーションのTCPトラフィックをローカルプロキシに向ける
  3. ローカルプロキシがTCPデータをSMTPコマンドに変換・エンコード
  4. SMTPサーバー(リモート側)がデータを受信し、元のTCPトラフィックに復元
  5. 復元されたトラフィックを実際の宛先サーバーに転送

SMTP偽装の技術詳細

SMTPは電子メール送信に使われるプロトコルで、テキストベースのコマンドでやり取りします。smtp-tunnel-proxyは、このSMTPコマンドの中にBase64エンコードされたデータを埋め込みます。

EHLO client.example.com
MAIL FROM:<tunnel@example.com>
RCPT TO:<target@example.com>
DATA
Subject: Tunnel Data

[Base64エンコードされたTCPペイロード]
.
QUIT

DPIから見ると、これは正規のSMTPメール送信に見えます。しかし実際には、メール本文にトンネリングされたTCPデータが隠されているのです。JSAnalyzerで静的解析を自動化するで紹介したように、静的解析だけでは見破りにくい手法が増えています。

IT女子 アラ美
SMTPって普通のメール送信ですよね?それを悪用するって怖いですね。

ITアライグマ
SMTPは企業でも広く使われるプロトコルなので、完全にブロックするのは難しいです。だからこそ、この手法が有効になってしまうんですね。

ケーススタディ:smtp-tunnel-proxyの実際の動作検証

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状況(Before)

ある企業のセキュリティチームから「ファイアウォールを回避する新しい手法が登場しているらしい」という情報が入り、検証を行うことになりました。検証環境として、DPIファイアウォール(Suricata)を設置したネットワークを用意しました。このファイアウォールは、OpenVPNやSSHトンネルを検知してブロックする設定になっています。

  • 環境:Ubuntu 24.04上に構築した検証用LAN(192.168.100.0/24)
  • ファイアウォール:Suricata 7.0 + ET Openルールセット + カスタムDPIルール15件
  • 目的:smtp-tunnel-proxyが標準的なDPIを回避できるか検証
  • 検証対象:SSHセッション(ポート22)のトンネリング
  • 事前確認:OpenVPN、WireGuard、SSH直接接続はいずれもブロックされることを確認済み

行動(Action)

smtp-tunnel-proxyをGitHubからクローンし、クライアント・サーバー両方を設定しました。

# サーバー側(外部VPS)
git clone https://github.com/x011/smtp-tunnel-proxy.git
cd smtp-tunnel-proxy
python3 server.py --port 25 --target-host localhost --target-port 22

# クライアント側(DPIファイアウォール内)
python3 client.py --server vpn.example.com --server-port 25 --local-port 2222

クライアント側で ssh -p 2222 localhost を実行すると、トラフィックがSMTPに偽装されてファイアウォールを通過し、外部VPSのSSHサーバーに接続されます。

結果(After)

検証結果は以下の通りでした。

  • DPIバイパス:Suricataの標準ルールではsmtp-tunnel-proxyを検知できず、通信が成立
  • 帯域幅:Base64エンコードにより約33%のオーバーヘッドが発生
  • レイテンシ:SMTPのハンドシェイクにより、初回接続に約200ms追加

SSHトンネルやOpenVPNは即座にブロックされましたが、SMTP偽装は検知されませんでした。Goで実装するヘッドレスワークフローエンジンで解説したアーキテクチャ設計と同様に、プロトコルの選択が重要であることが分かります。

IT女子 アラ美
えっ、本当にDPIを回避できちゃうんですか?これはセキュリティ的にまずいのでは…。

ITアライグマ
おっしゃる通りです。だからこそ、セキュリティエンジニアはこうした手法を理解し、検知ルールを設計する必要があるんですね。

検知・対策のアプローチ

smtp-tunnel-proxyのような隠密通信を検知するために、セキュリティエンジニアが取るべきアプローチを整理します。

異常検知ベースのアプローチ

SMTPトラフィックの「正常な振る舞い」から逸脱するパターンを検知します。

  • メールサイズの異常:通常のメールと比較して異常に大きいペイロード
  • 送信頻度の異常:同一サーバーへの高頻度なSMTP接続
  • 宛先の異常:社外の未知のSMTPサーバーへの接続

ペイロード解析によるアプローチ

SMTP本文の内容を解析し、Base64デコード後のデータパターンを検査します。

# メール本文のエントロピー計算(異常なバイナリデータを検知)
import math
from collections import Counter

def calculate_entropy(data: bytes) -> float:
    if not data:
        return 0.0
    counter = Counter(data)
    length = len(data)
    return -sum((count/length) * math.log2(count/length) for count in counter.values())

# 通常のテキストメール: エントロピー約4.5
# バイナリトンネルデータ: エントロピー約7.5以上

ネットワークフローベースのアプローチ

SMTPセッションの時間的特性を分析します。Ghosttyで開発効率を上げるで触れたように、ツールの挙動を理解することが対策の第一歩です。

  • セッション持続時間:通常のメール送信は短時間で完了するが、トンネルは長時間接続を維持
  • 双方向通信パターン:通常のSMTPは一方向だが、トンネルは頻繁に双方向通信が発生

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IT女子 アラ美
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ITアライグマ
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まとめ

smtp-tunnel-proxyは、SMTPプロトコルを悪用してDPIファイアウォールを回避する高度なツールです。本記事のポイントを振り返ります。

  • DPIの限界:正規プロトコルに偽装されると、標準的なDPIルールでは検知が困難
  • SMTP偽装の仕組み:Base64エンコードされたTCPデータをメール本文に埋め込む
  • 検知アプローチ:異常検知・ペイロード解析・フロー分析の組み合わせが有効
  • 防御の心構え:攻撃者のツールを理解することが、効果的な対策設計の第一歩

セキュリティは終わりのない攻防です。新しい手法が登場したら、その仕組みを理解し、検知・対策を設計する。このサイクルを回し続けることが、セキュリティエンジニアの価値を高めていきます。

IT女子 アラ美
セキュリティって本当に奥が深いですね。勉強になりました!

ITアライグマ
はい、こうした知識を積み重ねることで、組織のセキュリティを守る力がついていきます。ぜひ実際に手を動かして検証してみてくださいね。

厳しめIT女子 アラ美による解説ショート動画はこちら

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この記事を書いた人

ITアライグマのアバター ITアライグマ ITエンジニア / PM

都内で働くPM兼Webエンジニア(既婚・子持ち)です。
AIで作業時間を削って実務をラクにしつつ、市場価値を高めて「高年収・自由な働き方」を手に入れるキャリア戦略を発信しています。

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