
AI失業リスクに備えるITエンジニアのキャリア戦略:自動化されにくいスキルと働き方の選択
お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!
「AIでホワイトカラーの仕事が一気になくなるのでは?」「エンジニアもLLMに置き換えられてしまうのではないか」と、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。
特にここ1〜2年で、生成AIや自動化ツールの進化スピードが一気に上がり、「このまま今のスキルセットだけで大丈夫なのか?」と感じる場面が増えてきました。
結論から言うと、AIに代替されやすい仕事と、AIを味方につけることでむしろ価値が高まる仕事は、かなりハッキリ分かれつつあります。大事なのは、感覚的に怖がることではなく、どの領域に軸足を移していくかを早めに設計しておくことです。
私自身、PjMとして複数の開発チームを見てきましたが、「同じエンジニア職でも、AI自動化の波で仕事が減っていく人」と「AIを活かしてむしろ意思決定や年収のレンジが上がっていく人」が、少しずつ分かれ始めていると感じています。
本記事では、トレンドデータや既存のキャリア系記事で見えてきた傾向を踏まえつつ、ITエンジニアがAI失業リスクを下げながら市場価値を高めていくための具体的なキャリア戦略を整理していきます。
問題の枠組みと前提の整理
まずは、「AI失業リスク」をどのような枠組みで捉えるべきかを整理しておきます。ここを曖昧にしたまま不安だけを増幅させてしまうと、誤った方向にキャリアチェンジしてしまうリスクが高まります。
一般的な議論では、「AIに仕事を奪われる/奪われない」という二元論になりがちですが、実務レベルで見ると次のように分解したほうが現実に近いです。
- タスク単位で自動化されやすい部分(定型コーディング、単純な資料作成など)
- プロセス設計や意思決定の部分(要件定義・アーキテクチャ設計・優先度判断など)
- 関係者調整や信頼構築の部分(ステークホルダーとの合意形成、メンバーの評価・育成など)
実際の現場では、1つの職種の中にこれらがミックスされています。私のチームでも、コーディングやテストの一部はAIで効率化しつつ、要件のすり合わせやリスク判断のような「文脈理解が必要な仕事」にはむしろ人の時間を割くようにシフトしてきました。
また、年代や現在のポジションによってもリスクの位置は変わります。たとえば40代以降のキャリア設計については、40代エンジニアの転職成功戦略:経験を武器に変えるキャリア設計 でも詳しく整理していますが、共通して重要になるのは「どこで意思決定に関わるか」という視点です。
ここから先は、ある思考法の書籍エッセンシャル思考の考え方も参考にしつつ、「AI時代でも価値が下がりにくいスキル」と「今のうちから手放していくべき依存スキル」を分けて考えていきます。

フレームワークの全体像
ここからは、AI時代にエンジニアがキャリアを設計するときの「地図」となるフレームワークを整理します。
感覚や不安ベースではなく、どのレイヤーにどれだけ時間とエネルギーを投資するかを意識することで、日々の行動に落とし込みやすくなります。
AI時代のキャリアポートフォリオ3レイヤー
私がチームメンバーの1on1でよく使っているのは、仕事を次の3レイヤーに分解して棚卸しする考え方です。
- レイヤー1:自動化されやすいタスク層(定型コーディング、テストケース作成、単純なドキュメント整形など)
- レイヤー2:プロセス設計・意思決定層(要件定義、アーキテクチャ設計、優先度付け、品質基準の設計など)
- レイヤー3:関係性・価値提案層(ステークホルダー調整、ビジネス側との共創、チーム育成、信頼構築など)
多くのエンジニアがキャリア初期にレイヤー1へ多くの時間を割きますが、AI時代に年収レンジを維持・向上させたいなら、レイヤー2・3の比率を意識的に増やしていく必要があります。
中長期の市場価値については、ミドル層エンジニアが転職で年収ダウンを回避する市場価値の伝え方 でも詳しく整理していますが、そこでも鍵になっているのは「どのレイヤーで成果を出せているか」です。
スキルマップと時間配分の見える化
次に、自分のスキルセットをこれら3レイヤーにマッピングし、「どの領域がAIに代替されにくいか」を可視化します。
キャリア面談の場では、PjMとして私がこのグラフイメージを使いながら、メンバーごとの強みと投資すべき領域を一緒に確認しています。
グラフでは、要件定義・設計やアーキテクチャ設計、チームマネジメント、顧客折衝といったスキルほど「AI代替困難度」が高く、一方で定型コーディングや単純なテストは相対的に低い位置にあります。
もちろんこれはあくまでモデル化ですが、「どの仕事が将来的に自動化されやすいか」を1度言語化しておくだけでも、学習や案件選びの優先度がかなり明確になるはずです。
ここで役立つのが、ある思考法の本仮説思考です。
「3年後の自分の仕事のうち、どの割合がAIに置き換わっていてほしいか」「どの仕事は絶対に人間として握っていたいか」といった問いを立て、この思考法の本の考え方を使いながら、仮説ベースでキャリアポートフォリオを設計してみてください。

具体シーン1:現場での適用例
ここからは、実際のプロジェクトでAI時代のキャリア戦略フレームワークをどう適用したかを、ケーススタディとしてご紹介します。
Before:レイヤー1に偏った35歳バックエンドエンジニア
仮に「Sさん(35歳、バックエンドエンジニア)」というケースを考えてみます。
Sさんは受託開発会社でAPI実装やバッチ処理の開発を中心に担当しており、日々の業務の8割以上が「既存仕様に沿った実装と改修」でした。
・年収は約560万円でここ3年ほぼ横ばい
・要件定義や見積もりはリードエンジニアが担当
・顧客との打ち合わせにはほとんど参加せず、チケットベースでタスクを消化
ChatGPTや各種コード補完ツールが普及する中で、Sさんは「このまま実装だけをしていて良いのか」と強い不安を感じていました。
Action:レイヤー2・3へのシフトを意識した1年計画
私がPjMとして関わったプロジェクトでは、Sさんと一緒に次のようなステップでキャリア戦略を組み立てました。
- Step1:現在の仕事をレイヤー別に棚卸し(レイヤー1:80%/レイヤー2:15%/レイヤー3:5%)
- Step2:1年後の理想比率を定義(レイヤー1:50%/レイヤー2:30%/レイヤー3:20%)
- Step3:案件内で「任せてもらう仕事」を明確にリクエスト(小さな要件整理、レビュー観点の言語化、後輩メンバーのフォローなど)
特に効果が大きかったのは、「仕様レビューMTGにオブザーバー参加 → 議事メモとリスク整理を引き受ける」という動きでした。
これにより、Sさんは少しずつレイヤー2・3の仕事に接触し、チーム内でも「仕様理解が深い人」として認識されるようになりました。
After:年収レンジと役割の変化
1年後、Sさんは同じ会社の別プロジェクトにリードエンジニアとしてアサインされ、年収も約80万円アップしました。
あわせて、書類選考の通過率はおよそ30%から60%前後に上がり、残業時間も月45時間程度から30時間前後へと減少しました。
日々のタスクも次のように変化しました。
- 要件定義・基本設計レビューへの参加:週1〜2本
- 若手メンバーのコードレビューと育成:稼働の20〜30%
- 自分で実装するタスクは、AI補完を前提とした難易度の高い部分に集中
この変化により、Sさんは「AIに奪われない仕事」に時間を使えるようになり、転職市場でも「リード/テックリード候補」として扱われるポジションを狙える状態になりました。
転職エージェントとの対話の具体的な進め方については、ITエンジニアが転職エージェントを使い分ける判断基準 も参考になるはずです。
こうしたケースを見ていると、データの読み解きやリスク整理のスキルを磨きたい方には、データリテラシーの書籍FACTFULNESS(ファクトフルネス)10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣 を通じて「数字とストーリーの両方で語る」練習をしておくことも、AI時代のキャリア防衛として有効だと感じています。

行動に落とし込む・習慣化のステップ
最後に、ここまでの考え方を「明日から何をするか」というレベルに落とし込んでいきます。
ポイントは、一気にキャリアチェンジしようとするのではなく、小さな習慣の積み上げでレイヤー2・3の比率を増やしていくことです。
30日チャレンジ:レイヤー2の仕事を毎週1つ増やす
まずは30日間、「レイヤー2の仕事を毎週1つ増やす」ことを目標にしてみてください。
- 今週:レビュー観点を3つに整理してPull Requestにコメントする
- 来週:小さな技術選定(ライブラリ比較など)のメモを書き、チームに共有する
- 3週目:スプリント計画MTGで、リスクや前提条件を1つ以上発言する
- 4週目:振り返りMTGで「次スプリントの改善案」を1つ提案する
このレベルであれば、今の案件や組織を変えなくても実践できますし、PjMとしても歓迎される動きです。
バーンアウトを防ぎつつ働き方を見直す観点では、バーンアウトを防ぐエンジニアの働き方設計 との組み合わせもおすすめです。
週次レビューの型を決めておく
小さな行動を習慣化するには、「毎週同じフォーマットで振り返る」ことが有効です。
私のチームでは、メンバーに次の3点を毎週ノートに書いてもらっています。
- 今週やったレイヤー2・3の仕事は何か
- AIツールに任せられそうだったレイヤー1の仕事は何か
- 来週、レイヤー2・3を1つ増やすために具体的に何をするか
こうした習慣づくりの考え方については、ジェームズ・クリアーの複利で伸びる1つの習慣ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 がとても参考になります。
「努力ではなく仕組みで自分を変える」という視点は、AI時代のキャリア構築と非常に相性が良いと感じています。

おすすめエージェント・サービス
ここまでの内容を踏まえると、AI時代のキャリア戦略では「どのレイヤーで価値を出していくか」によって選ぶべきエージェントも変わってきます。
ここでは代表的なパターンごとに、高単価A8案件を3つだけご紹介します。
安定志向で社内SE・情報システム寄りのキャリアを取りたい人
「AI自動化の波は怖いけれど、まずは自社プロダクトや社内インフラの理解を深めながら腰を据えて働きたい」という方には、社内SE向け転職サービス社内SEを目指す方必見!IT・Webエンジニアの転職なら【社内SE転職ナビ】 が選択肢になります。
要件整理や部門調整といったレイヤー2・3の仕事が中心になりやすく、長期的なキャリア防衛という意味でも相性が良い領域です。
年収レンジと裁量を一気に引き上げたいミドル層エンジニア
レガシーSIerやSESから自社開発・SaaSに移りたい方や、「AIを前提とした開発組織でテックリードを目指したい」という方には、特化型転職エージェントITエンジニアのための転職エージェント【TechClipsエージェント】 が向いています。
レイヤー2のアーキテクチャ設計やレイヤー3のチームリード経験をしっかり評価してくれる案件が多く、AI時代の市場価値を意識したポジション選びがしやすい印象です。
フリーランスとしてレイヤー2・3のスキルをポートフォリオ化したい人
「ゆくゆくはフリーランスとして案件を選べる立場になりたい」という方は、あるフリーランスエンジニア向けサービスフリーランスエンジニアに安心保障と豊富な案件紹介を【Midworks】 も候補になります。
単なる常駐案件だけでなく、要件整理や技術選定まで任されるポジションを選びやすく、レイヤー2・3の経験を積み重ねておくことで、AI時代でも単価を維持・向上しやすくなります。
なお、フリーランス案件の比較軸については、高単価フリーランス案件を獲得するためのエージェント選びと活用法 でより詳しく整理していますので、こちらもあわせて確認してみてください。

まとめ
ここまで、AI失業リスクが語られる時代にITエンジニアがキャリアを守り、むしろ市場価値を高めていくための考え方と具体策を整理してきました。
・仕事を「自動化されやすいタスク」「プロセス設計・意思決定」「関係性・価値提案」の3レイヤーに分けて捉える
・レイヤー2・3の比率を少しずつ増やすことで、AIを味方につけながら年収レンジと裁量を引き上げていく
・ケーススタディのように、今いる職場の中でも役割と時間配分を変えることで、1年単位でポジションと評価を変えていく
・30日チャレンジや週次レビューの型を使って、小さな行動を習慣化し続ける
AIの進化そのものを止めることはできませんが、「どの仕事をAIに手放し、どの仕事を人として握り続けるか」を早めに設計しておくことで、選べる未来の幅は大きく変わります。
ぜひ、今日の業務を振り返りながら、自分のキャリアポートフォリオを3レイヤーで棚卸ししてみてください。そこから見えてくる小さな一歩が、数年後の安心感と選択肢につながっていきます。







