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結論から言うと、AIにコードを丸投げする「バイブコーディング」は短期的には生産性を上げますが、中長期的にはプロジェクトを崩壊させるリスクがあります。CursorのCEOマイケル・トゥルエル氏が2025年12月に警告したこの問題は、AIコーディングを本番運用している多くの開発現場にとって見過ごせない内容でした。
「AIにプロンプトを投げて、出力されたコードをそのまま使うスタイルに慣れてしまった」
「レビューも雑になり、気づけばコードベースの全体像を把握できなくなっている」
本記事では、バイブコーディングがなぜ崩壊につながるのか、そしてAIコーディングを持続可能な形で運用する現実的なアプローチを、実際の開発現場での経験則と具体的な運用ルールを交えて解説します。
バイブコーディングとは何か:AIコーディングの「甘い罠」
バイブコーディング(Vibe Coding)とは、AIにプロンプトを投げ、生成されたコードをほとんど確認せずにそのまま採用する開発スタイルを指します。「雰囲気(vibe)でコードを書く」という皮肉を込めた造語で、2024年後半からAIコーディングツールの普及に伴い広がった言葉です。
一見すると、バイブコーディングは魅力的に思えます。
- プロンプトを投げるだけでコードが生成される
- 自分で書くより圧倒的に速い
- 複雑なロジックも「なんとなく動く」
しかし、CursorのCEOマイケル・トゥルエル氏は2025年12月のFortuneのインタビューで、この開発スタイルが「崩壊につながる」と明確に警告しました。
CursorのCEOが指摘する3つの問題
トゥルエル氏が指摘したバイブコーディングの問題点を整理すると、以下の3つに集約されます。
- コードの理解不足:AIが生成したコードの内部ロジックを理解しないまま進めると、バグ修正や機能追加時に手が出せなくなる
- 技術的負債の蓄積:「なんとなく動く」コードが積み重なり、リファクタリング不能な状態に陥る
- チームの技術力低下:コードを書く機会が減ることで、エンジニア個人とチーム全体の技術力が徐々に低下する
ある開発チームでも、一時期バイブコーディングに近い状態に陥ったことがあります。あるメンバーがClaude Codeで生成したコードを「動くから」とそのまま本番環境に入れ続けた結果、3ヶ月後にはそのモジュールだけ誰も触れなくなっていました。
AIエージェントを活用した開発については、コンテキストエンジニアリング入門:AIエージェントの精度を高める設計パターンと実装戦略も参考になります。
IT女子 アラ美なぜバイブコーディングは崩壊するのか:技術的負債の構造
バイブコーディングが崩壊につながる理由を、もう少し深掘りしましょう。ポイントは「理解なきコードは負債になる」という原則です。
AIコーディングの「見えないコスト」
AIが生成するコードには、人間が書くコードとは異なる特徴があります。
- 局所最適:プロンプトで指定した要件に対しては最適化されるが、システム全体との整合性は考慮されにくい
- 過剰な抽象化:「ベストプラクティス」を詰め込みすぎて、シンプルな要件に対して過度に複雑なコードを生成することがある
- コンテキストの欠落:プロジェクト固有の設計方針やチームの慣習を反映しにくい
「動くコード」と「良いコード」の違い
一般的に、AIが生成したコードの約70%は「動くコード」ですが、「良いコード」と呼べるのはそのうち30%程度と言われています。残りの40%は、短期的には問題なく動作しますが、以下のような問題を抱えています。
- 命名規則がプロジェクトの慣習と合っていない
- エラーハンドリングが不十分
- パフォーマンス上の問題がある
- テストが書きにくい構造になっている
これらの問題は、コードレビューを通じて発見・修正しなければ、技術的負債として蓄積していきます。
よくある開発関連の落とし穴については、GPT-1からGPT-5.2までの特殊トークン解説:LLMの内部構造を理解してプロンプトを最適化するでプロンプトの仕組みを理解しておくと役立ちます。



AIコーディングを持続可能にする3つの運用ルール
では、バイブコーディングの罠を避けながら、AIコーディングのメリットを最大化するにはどうすればよいのでしょうか。実際に効果を上げている運用ルールを紹介します。
ルール1:AI生成コードは必ず「説明可能」な状態にする
最も重要なルールは、AIが生成したコードを採用する前に、そのコードを自分の言葉で説明できるかを確認することです。
具体的には、以下のチェックリストを使っています。
- このコードが何をしているか、30秒以内に説明できるか?
- なぜこのアプローチが選択されたか、理由を言えるか?
- このコードにバグがあった場合、どこを直せばいいか分かるか?
3つ中2つ以上「No」なら、そのコードは採用しないか、理解するまで時間をかけるというルールです。
ルール2:レビュープロセスを「AI対応型」に変える
従来のコードレビューは「人間が書いたコード」を前提としています。AI生成コードに対応したレビュー観点を追加しました。
- 過剰設計チェック:AIは「ベストプラクティス」を詰め込みがち。シンプルな要件に対して過度に複雑なコードになっていないか
- コンテキスト整合性チェック:プロジェクトの設計方針や命名規則と合っているか
- テスタビリティチェック:テストが書きやすい構造になっているか
ルール3:AIに任せる範囲を明確に定義する
あるチームでは、AIに任せてよい作業と、人間が判断すべき作業を明文化しています。
| AIに任せてよい | 人間が判断すべき |
|---|---|
| ボイラープレートコードの生成 | アーキテクチャの設計判断 |
| テストケースの雛形作成 | ビジネスロジックの設計 |
| リファクタリングの提案 | セキュリティに関わる実装 |
| ドキュメントの下書き | パフォーマンスクリティカルな処理 |
AIの活用と適切な分担については、Amazon Bedrock AgentCoreでAIエージェントを本番運用する:品質評価とポリシー制御の実装ガイドも参考になります。



ケーススタディ:バイブコーディングからの脱却と品質改善


ある開発チームで実際に行った改善事例を紹介します。
状況(Before)
- メンバー5名のWebアプリ開発チーム
- Claude CodeとGitHub Copilotを全員が利用
- AI生成コードのレビューは「動作確認」のみで、内部ロジックの確認は省略されていた
- 3ヶ月で約2万行のコードが追加されたが、バグ修正に平均3日かかる状態
- 品質スコア(社内基準)は42点
行動(Action)
- 上記の3つの運用ルールを段階的に導入
- 最初の1週間は「ルール1:説明可能性チェック」のみを徹底
- 2週目からレビュー観点を追加、3週目からAIに任せる範囲の明文化を実施
- 週次の振り返りで「今週AIに任せすぎたコード」を共有
結果(After)
- 導入後2ヶ月で品質スコアが42点→68点に改善
- さらに詳細レビュー体制を強化した結果、3ヶ月後には91点を達成
- バグ修正の平均時間は3日→0.5日に短縮
- メンバーからも「コードベースの全体像が把握できるようになった」との声
チームでのAI活用をさらに発展させたい方は、Model Context Protocol(MCP)でAIエージェントを拡張する実践ガイド:Claude・ChatGPT対応も参考になります。
本記事で解説したようなAI技術を、基礎から体系的に身につけたい方は、以下のスクールも検討してみてください。
| 比較項目 | DMM 生成AI CAMP | Aidemy Premium |
|---|---|---|
| 目的・ゴール | ビジネス活用・効率化非エンジニア向け | エンジニア転身・E資格Python/AI開発 |
| 難易度 | プロンプト作成中心 | コード記述あり |
| 補助金・給付金 | リスキリング補助金対象 | 教育訓練給付金対象 |
| おすすめ度 | 今の仕事に活かすなら | AIエンジニアになるなら |
| 公式サイト | 詳細を見る | 詳細を見る |



まとめ
本記事では、CursorのCEOが警告するバイブコーディングのリスクと、AIコーディングを持続可能な形で運用するためのアプローチを解説しました。
- バイブコーディングの問題点:コードの理解不足、技術的負債の蓄積、チームの技術力低下
- 現実的な運用ルール:説明可能性チェック、AI対応型レビュー、AIに任せる範囲の明文化
- 継続的な改善:週次の振り返りで運用ルールを定着させ、段階的に品質を向上
AIコーディングツールは、使い方次第で「最高の相棒」にも「静かな破壊者」にもなります。便利さに流されず、「理解できるコードを維持する」という原則を守ることで、AIのメリットを最大限に活かしながら、持続可能な開発体制を築いていきましょう。












