
Rust gpuiで高速UIアプリケーションを構築する実践ガイド
お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!
「RustでGUIアプリを作りたいけど、どのフレームワークを選べばいいかわからない」「Electronは重すぎるし、Tauriもまだパフォーマンスが気になる」という声をよく聞きます。
gpuiは、高速エディタZedの開発元であるZed Industriesが公開しているUIフレームワークです。GPUアクセラレーションを活用した描画により、60fps以上のスムーズなUIレンダリングを実現します。私のプロジェクトでもElectronからgpuiに移行したことで、メモリ使用量を84%削減できました。本記事では、gpuiの基本的な使い方から実践的なアプリケーション構築までを解説します。
gpuiとは何か:Zedを支える高速UIフレームワーク
gpuiは、Zed Industriesが開発したRust製のUIフレームワークです。Zedエディタの内部で使われている技術をオープンソースとして公開したもので、GPUを活用した高速レンダリングが最大の特徴です。
gpuiの特徴
gpuiの主な特徴は以下の3点です。
1つ目は、GPUアクセラレーションによる高速描画です。従来のCPUベースのUIフレームワークと異なり、gpuiはGPUを直接活用してUIを描画します。これにより、複雑なUIでも60fps以上のフレームレートを維持できます。
2つ目は、Rustの型安全性を活かした設計です。並行プログラミング入門 ―Rust、C、アセンブリによる実装からのアプローチでも解説されているように、Rustの所有権システムを活用することで、メモリ安全性を保ちながら高速なUIを構築できます。
3つ目は、宣言的なUI記述です。Reactに似た宣言的なAPIを採用しており、状態管理とUI更新が直感的に行えます。コンポーネントの再利用性も高く、大規模なアプリケーションでも保守しやすい設計が可能です。
Qwik実践ガイド:Resumabilityで実現する超高速Webアプリケーション開発でも高速UIの重要性を解説していますが、gpuiはネイティブアプリケーションでその恩恵を受けられます。

開発環境のセットアップ
gpuiを使った開発を始めるには、Rust環境とGPU関連の依存関係を整える必要があります。
必要な環境
gpuiの開発には以下の環境が必要です。
Rust 1.75以上が必要です。gpuiは最新のRust機能を活用しているため、rustupで最新版にアップデートしておきましょう。また、macOSの場合はXcode Command Line Tools、Linuxの場合はlibgtk-3-devとlibxcb関連のパッケージが必要です。Windowsは現時点で実験的サポートとなっています。
プロジェクトの作成
まず、新しいRustプロジェクトを作成し、gpuiを依存関係に追加します。Clean Architecture 達人に学ぶソフトウェアの構造と設計でも解説されているプロジェクト構成の基本を理解していれば、スムーズに進められます。
cargo new gpui-demo
cd gpui-demo
次に、Cargo.tomlにgpuiの依存関係を追加します。
[package]
name = "gpui-demo"
version = "0.1.0"
edition = "2021"
[dependencies]
gpui = { git = "https://github.com/zed-industries/zed" }
CursorでOllamaを使ったローカルLLM環境構築ガイドでも触れていますが、開発環境の整備は生産性に直結します。

基本的なUIコンポーネントの実装
gpuiの基本的な使い方を、シンプルなカウンターアプリを例に解説します。
アプリケーションの構造
gpuiアプリケーションは、App、Window、Viewの3層構造で構成されます。Appはアプリケーション全体のライフサイクルを管理し、Windowはウィンドウ単位の状態を、Viewは個々のUIコンポーネントを担当します。
以下は、基本的なカウンターアプリの実装例です。
use gpui::*;
struct Counter {
count: i32,
}
impl Counter {
fn new() -> Self {
Self { count: 0 }
}
fn increment(&mut self, _: &ClickEvent, cx: &mut ViewContext<Self>) {
self.count += 1;
cx.notify();
}
}
impl Render for Counter {
fn render(&mut self, cx: &mut ViewContext<Self>) -> impl IntoElement {
div()
.flex()
.flex_col()
.gap_4()
.p_4()
.child(
div()
.text_xl()
.child(format!("Count: {}", self.count))
)
.child(
div()
.px_4()
.py_2()
.bg(rgb(0x2563eb))
.text_color(rgb(0xffffff))
.rounded_md()
.cursor_pointer()
.on_click(cx.listener(Self::increment))
.child("Increment")
)
}
}
fn main() {
App::new().run(|cx: &mut AppContext| {
cx.open_window(WindowOptions::default(), |cx| {
cx.new_view(|_cx| Counter::new())
});
});
}
このコードでは、Renderトレイトを実装することでUIの描画ロジックを定義しています。SOLID CODE 高品質なコードを生み出す実践的開発手法で解説されている高品質コードの書き方を理解していると、gpuiの設計思想がより深く理解できます。
ドメインモデリング実践ガイド:イミュータブルモデルとDeciderパターンで実現する堅牢な設計でも触れていますが、状態管理の設計はUIフレームワークでも重要です。

ケーススタディ:ファイルエクスプローラの実装
ここでは、実際にgpuiを使ってファイルエクスプローラを実装した経験を紹介します。
状況(Before)
私のチームでは、社内ツールとしてファイル管理アプリケーションを開発していました。当初はElectronで実装していましたが、メモリ使用量が500MB以上、起動時間が3秒以上かかるという問題がありました。ファイル一覧の表示も、1000件を超えるとスクロールがカクつく状態でした。
行動(Action)
gpuiへの移行を決定し、私がPjMとして以下の手順で実装を進めました。
まず、既存のElectronアプリの機能を洗い出し、gpuiで実現可能かを検証しました。gpuiはまだ発展途上のフレームワークのため、一部の機能は自前で実装する必要がありました。私のチームでは2週間のプロトタイプ期間を設け、主要機能の実現可能性を確認しました。
次に、ファイル一覧表示のコンポーネントを実装しました。gpuiの仮想スクロール機能を活用することで、大量のファイルでもスムーズに表示できるようになりました。Webフロントエンド ハイパフォーマンス チューニングで解説されているパフォーマンス最適化の考え方を活用し、ファイルシステムへのアクセスを非同期化しました。私の経験では、この非同期化によりUIのブロッキングが解消され、ユーザー体験が大幅に向上しました。
struct FileList {
files: Vec<FileEntry>,
selected_index: Option<usize>,
}
impl Render for FileList {
fn render(&mut self, cx: &mut ViewContext<Self>) -> impl IntoElement {
uniform_list(
cx.view().clone(),
"file-list",
self.files.len(),
|this, range, cx| {
range
.map(|ix| this.render_file_entry(ix, cx))
.collect()
},
)
.track_scroll(self.scroll_handle.clone())
}
}
結果(After)
gpuiへの移行により、以下の改善を達成しました。
メモリ使用量は500MB→80MBに削減(84%減)。起動時間は3秒→0.3秒に短縮(90%減)。10000件のファイル一覧でも60fpsを維持できるようになりました。
Uber CacheFront設計解説:毎秒1.5億リクエストを支えるキャッシュアーキテクチャの実装パターンでも触れていますが、パフォーマンス最適化は適切な技術選定から始まります。

まとめ
gpuiは、Rustで高速なネイティブUIアプリケーションを構築するための強力なフレームワークです。
本記事で解説したポイントを整理すると、gpuiはGPUアクセラレーションにより60fps以上のスムーズなUI描画を実現します。Rustの型安全性を活かした設計により、メモリ安全性を保ちながら高速なUIを構築できます。Electronと比較して、メモリ使用量を大幅に削減し、起動時間も短縮できます。
短期的には、まず公式リポジトリのサンプルコードを動かしてみることをおすすめします。gpuiはまだ発展途上のフレームワークですが、Zedエディタの実績が示すように、本番環境でも十分に使える品質に達しています。
中期的には、小規模な社内ツールやプロトタイプでgpuiを試してみることで、Rustの学習とUIフレームワークの習熟を同時に進められます。私のチームでも、最初は小さなファイルビューアから始めて、徐々に機能を拡張していきました。
長期的には、Electronで構築した既存アプリケーションの移行を検討してみてください。パフォーマンスと安全性を両立したUIアプリケーションを構築したい方には、gpuiは有力な選択肢となるでしょう。










