SES契約から直接契約へ移行するエンジニアの交渉術:中間マージンを削減して手取りを増やす実践ガイド

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「SES契約で働いているけど、中間マージンが高すぎて手取りが思ったより少ない」「同じ現場で同じ仕事をしているのに、契約形態が違うだけで年収に100万円以上の差がある」と、モヤモヤを感じているエンジニアの方は多いのではないでしょうか。

SES(システムエンジニアリングサービス)契約は、案件に入りやすい反面、SES企業が20〜40%のマージンを取るため、実際の単価と手取りに大きな乖離が生まれやすい構造になっています。

私自身、PjMとして複数のSESエンジニアと一緒に仕事をしてきましたが、同じスキルレベルでも契約形態によって年収が200万円以上違うケースを何度も見てきました。本記事では、SES契約から直接契約(準委任・業務委託)へ移行するための交渉術と実践的なステップを整理していきます。

SES契約と直接契約の構造的な違い

まずは、SES契約と直接契約の違いを構造的に整理しておきます。ここを理解しないまま交渉を始めてしまうと、「何を交渉すればいいのか」「どこに働きかければいいのか」が曖昧になり、結果的に現状維持で終わってしまいます。

SES契約の仕組みとマージン構造

SES契約では、エンジニアはSES企業に雇用され、SES企業がクライアント企業と契約を結びます。クライアントが支払う単価からSES企業がマージン(通常20〜40%)を差し引いた金額が、エンジニアの報酬になります。

たとえば、クライアントが月単価80万円を支払っている場合、マージン30%のSES企業であれば、エンジニアの手取りは56万円程度になります。年間で換算すると、マージンだけで約290万円がSES企業に流れている計算です。

直接契約のメリットとリスク

直接契約(準委任契約・業務委託契約)では、エンジニアがクライアント企業と直接契約を結ぶため、中間マージンが発生しません。同じ月単価80万円であれば、そのまま80万円が報酬になります。

ただし、直接契約には以下のリスクもあります。

  • 案件獲得の営業を自分で行う必要がある(または手数料の低いエージェントを活用)
  • 契約終了時の次案件探しを自分で行う必要がある
  • 社会保険・年金・確定申告などの事務処理が増える(フリーランスの場合)

正社員からフリーランスへ独立するエンジニアの準備チェックリスト:収入・保険・案件獲得の現実 でも触れていますが、直接契約への移行は「手取りが増える」だけでなく、フリーランスの教科書 のようなフリーランスの基礎知識を押さえておくことが重要です。

Crop unrecognizable coworkers in formal wear standing at table with laptop and documents while greeting each other before meeting

直接契約への移行フレームワーク

SES契約から直接契約へ移行するには、「現場との信頼関係」「契約形態の選択肢」「交渉のタイミング」の3つを整理しておく必要があります。

移行の3ステップ

以下のフレームワークに沿って進めると、スムーズに移行できます。

  • Step 1:現場での信頼構築(6ヶ月〜1年):まずは現場で「この人がいないと困る」と思われるポジションを確立する
  • Step 2:契約更新タイミングでの打診:契約更新の1〜2ヶ月前に、クライアント側の担当者に「直接契約の可能性」を打診する
  • Step 3:条件交渉と契約切り替え:SES企業との契約終了と、クライアントとの直接契約締結を同時に進める

業務委託エンジニアとして年収を最大化する戦略:案件選定から単価交渉まで でも触れていますが、仮説思考 のような思考法を身につけておくと、交渉の場面で「相手にとってのメリット」を提示しやすくなります。

契約形態別の手取り比較(月単価80万円の場合)

ケーススタディ:私のチームでの直接契約移行事例

グラフのように、同じ月単価80万円でも契約形態によって手取りが大きく変わります。SES(マージン30%)と直接契約では、月額で24万円、年間で約290万円の差が生まれます。

私がPjMとして関わっていたプロジェクトで、実際にSES契約から直接契約へ移行したエンジニアの事例を紹介します。

状況(Before)

田中さん(仮名・34歳)は、SES企業経由で私のチームに参画していたバックエンドエンジニアでした。クライアント(私の所属企業)がSES企業に支払っていた月単価は75万円。田中さんの手取りは月52万円(マージン約30%)で、年収換算で約620万円でした。

田中さんは入社1年半で、チーム内で「この人がいないとリリースが回らない」というポジションを確立していました。コードレビューの品質が高く、障害対応でも頼りにされる存在でした。

行動(Action)

契約更新の2ヶ月前、田中さんから私に「直接契約の可能性を探りたい」と相談がありました。私は上長と相談し、以下の条件で直接契約への切り替えを提案しました。

  • 契約形態:準委任契約(業務委託)
  • 月単価:70万円(SES企業への支払いより5万円減)
  • 契約期間:3ヶ月更新

クライアント側としては、月5万円のコスト削減になり、田中さんとしては手取りが月52万円→70万円(+18万円)になるため、双方にメリットがある提案でした。

結果(After)

SES企業との契約終了と同時に、田中さんは個人事業主として私の所属企業と直接契約を締結。年収は620万円→840万円(+220万円)に増加しました。

ただし、移行にあたっては以下のハマりポイントがありました。

  • SES企業との契約に「競業避止条項」があり、同一クライアントとの直接契約が1年間禁止されていた→ 契約書を確認し、条項の適用範囲を弁護士に相談。結果的に「同一プロジェクト」ではなく「同一クライアント」への転籍は問題ないと判断
  • 社会保険の切り替えタイミングで1ヶ月の空白期間が発生→ 国民健康保険への切り替え手続きを事前に準備しておくことで対応

フリーランスエンジニアが案件を選ぶ側に回るための3ステップ戦略 でも触れていますが、フリーランスの法律 のようなフリーランスの法務知識を押さえておくと、契約書のリスクを事前に把握できます。

Colleagues in an office celebrating a successful negotiation with a handshake.

交渉を成功させるための準備と心構え

直接契約への移行交渉を成功させるには、「相手にとってのメリット」を明確に提示できるかどうかがカギになります。

交渉前に準備すべき3つのポイント

  • 自分の市場価値を数値化する:同じスキルセットのエンジニアが、直接契約でどのくらいの単価を得ているかを調査する。フリーランスエージェントの案件情報や、知人のフリーランスエンジニアへのヒアリングが有効
  • クライアント側のコストメリットを計算する:SES企業への支払い額と、直接契約での提示単価の差額を明示する。「御社にとっても月5万円のコスト削減になります」と言えると交渉が進みやすい
  • 契約書のリスクを事前に確認する:SES企業との契約に競業避止条項や引き抜き禁止条項がないかを確認。必要に応じて弁護士に相談する

交渉のタイミングと伝え方

交渉のベストタイミングは、契約更新の1〜2ヶ月前です。更新直前だとクライアント側の稟議が間に合わず、更新後だと次の更新まで待つことになります。

伝え方としては、「辞めます」ではなく「より良い形で貢献したい」というスタンスで話すのがポイントです。「直接契約にすることで、御社のコストを下げつつ、私自身もより長期的にコミットできる体制を作りたい」という形で提案すると、クライアント側も前向きに検討しやすくなります。

交渉がうまくいかないケースへの対処法

もちろん、すべての交渉がうまくいくわけではありません。クライアント側が「直接契約は社内規定で難しい」と回答するケースもあります。その場合は、以下の選択肢を検討しましょう。

  • マージン率の低い別のSES企業への移籍:同じ現場で働き続けながら、マージン率の低いSES企業に移籍することで手取りを改善できる場合があります
  • フリーランスエージェント経由での再参画:一度現場を離れ、フリーランスエージェント経由で同じクライアントに再参画する方法もあります
  • 別のクライアントで直接契約を目指す:現在の現場での直接契約が難しい場合は、別のクライアントで最初から直接契約を結ぶことを目指すのも一つの選択肢です

重要なのは、一度の交渉でうまくいかなくても諸めないことです。現場での信頼を積み上げながら、タイミングを見計らって再度交渉に臨むか、別の選択肢を探るかを判断しましょう。

転職で年収アップを実現するエンジニアのスキル棚卸しと交渉術 でも触れていますが、ジェームズ・クリアー式 複利で伸びる1つの習慣 のような習慣化の考え方を取り入れると、交渉前の準備を継続的に行う仕組みを作れます。

Business team meeting in modern office with laptops and documents.

おすすめエージェント・サービス

直接契約への移行を検討する際、「いきなり完全に自力で営業する」のはハードルが高いと感じる方も多いでしょう。その場合は、マージン率が低いフリーランスエージェントを活用するのも有効な選択肢です。

マージン率の低いエージェントを選ぶ

フリーランスエージェントの中には、マージン率を10〜15%程度に抑えているサービスもあります。SES企業の30%と比べると、同じ単価でも手取りが10〜15%増える計算です。

高単価案件を扱うエージェントとしては、フリーランスエンジニアに安心保障と豊富な案件紹介を【Midworks】 が正社員並みの福利厚生を提供しつつ高単価案件を紹介しており、SESからの移行先として人気があります。また、設立から四半世紀!フリーランスエンジニアの独立をサポート【PE−BANK】 は老舗のフリーランスエージェントで、エンジニアの手取りを最大化する「共同受注」モデルを採用しています。どちらもマージン率が明確に開示されており、SES企業のように「単価がいくらなのかわからない」という不透明さがありません。

直接契約を前提としたサービス

エージェントを介さず、クライアントと直接契約を結ぶことを前提としたサービスもあります。国内最大級のフリーランスエンジニア向け案件検索サイト【フリーランスボード】 は、案件情報を直接閲覧でき、マッチング後はクライアントと直接契約を結ぶ形式のため、中間マージンを最小限に抑えられます。

エージェント選びのポイント

フリーランスエージェントを選ぶ際は、以下のポイントを確認しましょう。

  • マージン率が明確に開示されているか:「業界最低水準」などの曖昧な表現ではなく、具体的なパーセンテージを確認する
  • 支払いサイトが充実しているか:確定申告サポート、福利厚生、案件途切れ時の保証など、フリーランスの不安を解消するサポートがあるか
  • 案件数と単価帯が自分のスキルに合っているか:エージェントによって得意な領域が異なるため、複数登録して比較するのがおすすめ

PE-BANKとMidworksを徹底比較:フリーランスエージェントの選び方と使い分け でも詳しく比較していますので、自分の状況に合ったサービスを選んでください。

Confident businessman in suit shaking hands at office desk, symbolizing successful partnership.

まとめ

最後に、本記事のポイントを整理します。

  • SES契約と直接契約では、同じ単価でも手取りに20〜40%の差が生まれる。月単価80万円の場合、年間で200万円以上の差になることも
  • 直接契約への移行は、「現場での信頼構築」→「契約更新タイミングでの打診」→「条件交渉と契約切り替え」の3ステップで進める
  • 交渉を成功させるには、「クライアント側のコストメリット」を明示することがカギ。「御社にとっても月○万円のコスト削減になります」と言えると進みやすい
  • いきなり完全に自力で営業するのが難しい場合は、マージン率の低いフリーランスエージェントを活用するのも有効

SES契約から直接契約への移行は、一度成功すれば年収が大きく変わる可能性があります。まずは現場での信頼構築から始めて、タイミングを見計らって交渉に臨んでみてください。

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