
Qwik実践ガイド:Resumabilityで実現する超高速Webアプリケーション開発
お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!
「初期表示が遅くてユーザーが離脱してしまう…」
「JavaScriptのハイドレーションが重くてパフォーマンスが出ない…」
「Core Web Vitalsのスコアが上がらない…」
フロントエンド開発で、こんな悩みを抱えていませんか?
ReactやNext.jsなどのフレームワークは便利ですが、ハイドレーション(Hydration)のコストが初期表示を遅くするという根本的な課題があります。
SSRでHTMLを返しても、クライアント側でJavaScriptを再実行してイベントハンドラを紐付ける必要があり、これがボトルネックになります。
そこで注目されているのがQwikです。
QwikはResumability(再開可能性)という革新的なアーキテクチャを採用し、ハイドレーションを完全に排除することで、超高速な初期表示を実現しています。
私はPjMとして複数のWebプロジェクトに関わってきましたが、パフォーマンス改善は常に優先度の高い課題でした。
Qwikのアプローチは、従来のフレームワークとは根本的に異なるため、理解しておく価値があります。
この記事では、QwikのResumabilityの仕組みを理解し、実際にプロジェクトで活用するための実践的なガイドを提供します。
QwikとResumabilityの基本概念
まず、Qwikが解決しようとしている問題と、Resumabilityの基本概念を理解しましょう。
従来のフレームワークの課題:ハイドレーション
ReactやVue、Next.jsなどのフレームワークでは、SSR(Server-Side Rendering)を使っても以下の流れが発生します。
- サーバーでHTMLを生成:初期表示は速い
- クライアントでJavaScriptをダウンロード:バンドルサイズに依存
- ハイドレーション実行:コンポーネントツリーを再構築し、イベントハンドラを紐付け
問題は、ハイドレーションがページ全体のJavaScriptを実行することです。
ユーザーがクリックしないボタンのイベントハンドラも、ページ読み込み時にすべて準備されます。
Resumabilityとは何か
QwikのResumabilityは、この問題を根本から解決します。
- サーバーでアプリケーションの状態をシリアライズ:HTMLに状態を埋め込む
- クライアントでは必要な時だけJavaScriptを読み込む:遅延読み込み(Lazy Loading)
- ハイドレーション不要:サーバーの状態を「再開」するだけ
つまり、Qwikは「一時停止したアプリケーションを再開する」というアプローチを取ります。
これにより、初期表示に必要なJavaScriptはほぼゼロになります。
フロントエンドのパフォーマンス最適化については、Next.js 15 App Router移行ガイドでも触れていますが、Qwikはさらに根本的なアプローチを取っています。
Webパフォーマンスの基礎を学ぶには、ソフトウェアアーキテクチャの基礎が参考になります。アーキテクチャの観点からパフォーマンスを考えることで、Qwikの設計思想がより深く理解できます。

Qwikプロジェクトのセットアップ
Qwikを使い始めるための環境構築を行います。
前提条件
- Node.js 18以上:LTS版を推奨
- npm または pnpm:パッケージマネージャー
- TypeScriptの基礎知識:Qwikは TypeScript ファーストで設計されています
プロジェクト作成
Qwikのプロジェクトは、公式CLIで簡単に作成できます。
# Qwikプロジェクトの作成
npm create qwik@latest
# プロジェクト名を入力
# テンプレートを選択(Basic App推奨)
# パッケージマネージャーを選択
# 依存関係のインストール
cd my-qwik-app
npm install
# 開発サーバーの起動
npm run dev
開発サーバーが起動したら、http://localhost:5173 でアプリケーションにアクセスできます。
プロジェクト構成
Qwikのプロジェクト構成は以下のようになっています。
- src/routes/:ファイルベースルーティング(Next.jsのApp Routerに似ている)
- src/components/:再利用可能なコンポーネント
- src/root.tsx:アプリケーションのルートコンポーネント
- vite.config.ts:Viteの設定ファイル
TypeScriptの型安全な開発については、TypeScript型安全実践ガイドも参考になります。
開発環境の構築を効率化するには、達人プログラマーの考え方が役立ちます。ツールチェーンの理解は、生産性向上の基盤になります。

Qwikコンポーネントの基本
Qwikのコンポーネントは、Reactに似た構文を持ちながら、Resumabilityを実現するための独自の仕組みを持っています。
component$とシグナル
Qwikでは、コンポーネントをcomponent$関数で定義します。
$サフィックスは、遅延読み込みの境界を示す重要なマーカーです。
import { component$, useSignal } from '@builder.io/qwik';
export const Counter = component$(() => {
// useSignalでリアクティブな状態を管理
const count = useSignal(0);
return (
<div>
<p>Count: {count.value}</p>
<button onClick$={() => count.value++}>
Increment
</button>
</div>
);
});
$サフィックスの意味
Qwikでは、$サフィックスが付いた関数は遅延読み込みの対象になります。
- component$:コンポーネント全体を遅延読み込み
- onClick$:クリックイベントハンドラを遅延読み込み
- useTask$:副作用を遅延読み込み
これにより、ユーザーが実際にボタンをクリックするまで、そのイベントハンドラのJavaScriptは読み込まれません。
これがResumabilityの核心です。
useSignalとuseStore
Qwikでは、状態管理にuseSignalとuseStoreを使います。
import { component$, useSignal, useStore } from '@builder.io/qwik';
export const Form = component$(() => {
// プリミティブな値にはuseSignal
const name = useSignal('');
// オブジェクトにはuseStore
const form = useStore({
email: '',
password: '',
errors: [] as string[],
});
return (
<form>
<input
type="text"
value={name.value}
onInput$={(e) => name.value = (e.target as HTMLInputElement).value}
/>
<input
type="email"
value={form.email}
onInput$={(e) => form.email = (e.target as HTMLInputElement).value}
/>
</form>
);
});
私がPjMとして関わったプロジェクトでは、状態管理の設計が後々のメンテナンス性に大きく影響しました。
QwikのuseSignalとuseStoreは、ReactのuseStateよりもシンプルで、パフォーマンスも優れています。
コンポーネント設計については、React状態管理とパフォーマンス最適化も参考になります。
コンポーネント設計の基礎を固めるには、リファクタリング(第2版)が参考になります。リファクタリングの考え方は、コンポーネント設計にも応用できます。

Qwik Cityによるルーティングとデータフェッチ
Qwik Cityは、Qwikのメタフレームワークで、ルーティング、データフェッチ、ミドルウェアなどの機能を提供します。
ファイルベースルーティング
Qwik Cityでは、src/routes/ディレクトリ内のファイル構成がそのままURLになります。
- src/routes/index.tsx:ルートパス
- src/routes/about/index.tsx:aboutページ
- src/routes/blog/(動的パラメータ)/index.tsx:動的ルート
routeLoader$によるデータフェッチ
Qwik Cityでは、routeLoader$を使ってサーバーサイドでデータをフェッチします。
import { component$ } from '@builder.io/qwik';
import { routeLoader$ } from '@builder.io/qwik-city';
// サーバーサイドでデータをフェッチ
export const useProductData = routeLoader$(async ({ params }) => {
const response = await fetch(`https://api.example.com/products/${params.id}`);
const product = await response.json();
return product;
});
export default component$(() => {
// フェッチしたデータを使用
const product = useProductData();
return (
<div>
<h1>{product.value.name}</h1>
<p>{product.value.description}</p>
<p>Price: {product.value.price}</p>
</div>
);
});
routeAction$によるフォーム処理
フォームの送信処理には、routeAction$を使います。
import { component$ } from '@builder.io/qwik';
import { routeAction$, Form } from '@builder.io/qwik-city';
export const useAddToCart = routeAction$(async (data, { cookie }) => {
// サーバーサイドでカートに追加
const productId = data.productId;
// ... カート処理
return { success: true };
});
export default component$(() => {
const addToCart = useAddToCart();
return (
<Form action={addToCart}>
<input type="hidden" name="productId" value="123" />
<button type="submit">Add to Cart</button>
</Form>
);
});
私がPjMとして見てきた中で、データフェッチの設計はパフォーマンスとUXに直結します。
Qwik CityのrouteLoader$は、Next.jsのServer Componentsに似たアプローチで、サーバーサイドでのデータフェッチを簡潔に記述できます。
APIとの連携については、Supabase Edge Functions実践も参考になります。
データフェッチの設計を深く理解するには、ドメイン駆動設計が参考になります。設計思想の考え方は、API設計にも応用できます。

まとめ
Qwikは、Resumabilityという革新的なアーキテクチャで、従来のフレームワークが抱えていたハイドレーションの問題を根本から解決しています。
この記事で解説したポイントを振り返ると、
- Resumability:ハイドレーション不要で、サーバーの状態を「再開」する
- $サフィックス:遅延読み込みの境界を示し、必要な時だけJavaScriptを読み込む
- useSignal/useStore:シンプルで高性能な状態管理
- Qwik City:ファイルベースルーティングとサーバーサイドデータフェッチ
Qwikは、Core Web Vitalsのスコア改善やユーザー体験の向上を目指すプロジェクトに特に適しています。
まずは、公式CLIでプロジェクトを作成し、簡単なコンポーネントを作ってみてください。
Reactに慣れている方なら、構文の違いにすぐ慣れるはずです。







