
正社員とフリーランスの年収比較で判断するエンジニアのキャリア選択ガイド
お疲れ様です!IT業界で働くアライグマです!
結論から言うと、正社員とフリーランスのどちらが「正解」かは、あなたの優先順位次第です。年収だけで見ればフリーランスが有利な場面も多いですが、安定性・福利厚生・キャリアパスまで含めると、正社員の方が合っている人も少なくありません。
「フリーランスは稼げるって聞くけど、本当に自分に向いているのか?」「正社員のまま年収を上げる方法はないのか?」——こうした悩みを抱えているエンジニアは多いのではないでしょうか。私自身、PjMとしてフリーランスエンジニアと正社員エンジニアの両方と仕事をしてきた経験から、それぞれの働き方の特徴と、どんな人にどちらが向いているかを整理してみました。
この記事では、年収比較の具体的な数字を示しながら、あなたが「どちらを選ぶべきか」を判断するためのフレームワークを提供します。
正社員とフリーランスの年収構造を理解する
正社員とフリーランスの年収を比較する際、単純な「手取り額」だけを見ると判断を誤ります。それぞれの年収構造は根本的に異なるため、まずはその違いを理解しましょう。
正社員の年収構造
正社員の年収は、基本給・賞与・各種手当で構成されます。さらに、会社が負担する社会保険料(健康保険・厚生年金の約半額)や福利厚生(家賃補助、交通費、研修費など)を含めると、実質的な報酬は額面年収の1.2〜1.5倍程度になることがあります。
例えば、額面年収600万円の正社員の場合、社会保険料の会社負担分が約90万円、福利厚生(家賃補助等)が約50万円となり、実質報酬は約740万円相当になります。これは見逃されがちですが、転職やフリーランス転向を検討する際には必ず考慮すべきポイントです。
フリーランスの年収構造
一方、フリーランスの年収は「売上」であり、ここから経費・社会保険料・所得税・住民税などを自分で支払います。月単価80万円(年間960万円)のフリーランスでも、手残りは600〜700万円程度になることが一般的です。
ただし、経費計上による節税効果や、稼働日数をコントロールできる自由度を考慮すると、単純な手取り比較では見えない価値もあります。PC・書籍・セミナー費用などを経費として計上できるため、実質的な可処分所得は手取り額以上に大きくなる場合もあります。
正社員からフリーランスへの転向を考える際は、フリーランスエンジニアが案件単価を上げる交渉術も参考にしてください。

経験年数別の年収比較データ
実際の数字で比較すると、正社員とフリーランスの年収差はどの程度あるのでしょうか。私がPjMとして見てきた実績値と、各種調査データを基に整理してみました。
経験3〜5年目:差が開き始める時期
経験3年目程度では、正社員とフリーランスの年収差はそこまで大きくありません。正社員で450〜500万円、フリーランスで月単価50〜60万円(年間600〜720万円)程度が一般的です。
ただし、ここから5年目にかけて差が開き始めます。正社員は昇給ペースが緩やかな一方、フリーランスはスキルアップに応じて単価が上がりやすいためです。特にクラウドやコンテナ技術、AI/ML関連のスキルを持つエンジニアは、フリーランスとして早期に高単価を獲得しやすい傾向があります。
経験7〜10年目:差が最大化する時期
経験7年目以降になると、年収差は明確になります。正社員で600〜750万円程度が中央値ですが、フリーランスでは月単価80〜100万円(年間960〜1200万円)に到達するエンジニアも珍しくありません。
ただし、この比較には注意が必要です。フリーランスは「稼げる人」と「そうでない人」の差が大きく、スキルや営業力によって年収が大きく変動します。一方、正社員は安定した昇給と福利厚生が保証されています。
正社員として年収を上げたい場合は、30代エンジニアが年収800万円を突破するためのキャリア設計と転職戦略が参考になります。

ケーススタディ:正社員からフリーランスへ転向したAさんの事例
ここでは、私のチームで一緒に働いていた後輩エンジニアAさん(仮名)が、正社員からフリーランスへ転向した際の実例を紹介します。
状況(Before)
Aさんは大手SIerで7年間勤務し、年収は680万円(基本給45万円+賞与約130万円)でした。技術力はあるものの、社内の役職ポストが詰まっており、昇給ペースが鈍化していました。
- 年齢:32歳
- 経験:Java/Springを中心としたバックエンド開発7年
- 年収:680万円
- 課題:昇給頭打ち、技術選択の自由度がない
行動(Action)
Aさんはまず、現職を続けながら2つのフリーランスエージェントに登録し、市場価値を確認しました。レバテックフリーランスとMidworksに登録し、それぞれの担当者から「月単価85〜95万円が見込める」という回答を得ました。
具体的な準備として、以下を3ヶ月かけて実施しました。
1ヶ月目は副業案件での実地体験です。週末の副業案件(週10時間程度)でフリーランスの働き方を体験しました。Crowdworksで見つけたREST API開発案件(時給3,000円)を2件こなし、請求書の書き方や確定申告の流れを把握。具体的には、freeeの無料プランを導入し、請求書を発行し、月末締め翌月15日払いの流れを実践しました。そうした結果、実際の業務フローが見えてきました。
2ヶ月目は税務・法務の準備です。税理士法人に相談し、確定申告の基礎知識を習得しました。青色申告の届出書を税務署に提出し、複式簿記による記帳方法を税理士から指導を受けました。また、開業届と青色申告承認申請書を同時に提出し、65万円の控除を受けられる体制を採用しました。経費として計上できるもの(PC、書籍、通信費など)のリストを税理士と作成し、節税の準備を整えました。
3ヶ月目は資金準備と退職交渉です。6ヶ月分の生活費として約200万円を貯蓄し、案件が見つからない期間のリスクに備えました。また、退職前にMidworks経由で1社の継続案件(金融系システムのAPI開発、月単価85万円・3ヶ月更新)を確保してから退職届を提出。引き継ぎ期間1ヶ月を経て、スムーズにフリーランスへ移行しました。
結果(After)
フリーランス転向1年目の年間売上は1,020万円(月単価85万円×12ヶ月)となりました。経費・社会保険料・税金を差し引いた手残りは約720万円で、正社員時代の手取りから約80万円増加しました。
- 年間売上:1,020万円
- 手残り:約720万円(正社員時代より+80万円)
- 稼働時間:月140〜160時間(正社員時代より-20時間/月)
ただし、Aさんは「常に次の案件を探す不安」や「福利厚生がないことへの不便さ」も感じており、「全員にフリーランスを勧めるわけではない」と語っていました。
30代エンジニアがフリーランス独立を成功させるための準備と判断基準では、より詳しい準備ステップを解説しています。

あなたに向いているのはどちらか:判断フレームワーク
正社員とフリーランス、どちらを選ぶべきかは「年収だけ」では決められません。以下の5つの観点で自分の優先順位を整理してみてください。
収入の安定性と収入の上限
正社員は毎月の給与が保証されており、不況時でも急な収入減は起きにくいです。一方、フリーランスは単価次第で年収1000万円超も狙える反面、案件切れによる収入ゼロのリスクもあります。
正社員向き:住宅ローンを組みたい、家族を養っている、安定を最優先したい方に向いています。
フリーランス向き:リスクを取ってでも収入を最大化したい、十分な貯蓄がある方に向いています。
福利厚生の価値
正社員の福利厚生は「見えないコスト」として軽視されがちですが、退職金・年金・健康保険・家賃補助などを合計すると年間100〜200万円の価値があることも珍しくありません。特に退職金は長期勤続によって大きな金額になるため、転職やフリーランス転向の際には必ず試算しておくべきです。
キャリアパスの方向性
マネジメント志向の場合、正社員の方がキャリアパスを描きやすいです。フリーランスでPMをやるケースはありますが、組織のラインマネジメント経験を積むには正社員が有利です。一方、技術スペシャリストとして特定領域を極めたい場合は、フリーランスの方が案件を選びやすいメリットがあります。
技術選択の自由度
フリーランスは案件を選べるため、自分が伸ばしたい技術領域に集中しやすいメリットがあります。正社員は会社の方針に左右されるため、希望と異なる技術を担当することもあります。ただし、フリーランスでも市場のニーズに合わせた技術選択が必要になるため、完全に自由というわけではありません。
働き方の自由度
リモートワークや稼働日数のコントロールは、フリーランスの方が圧倒的に自由度が高いです。週4日稼働や、長期休暇を自由に取れるのは大きなメリットです。ただし、案件契約中は一定の稼働を求められるため、自由度は契約内容次第でもあります。
キャリアの方向性に迷っている場合は、中堅エンジニアがキャリア停滞を抜け出す90日設計も参考にしてください。

まとめ
正社員とフリーランスの年収比較は、単純な数字の比較では完結しません。社会保険料の負担、福利厚生の価値、キャリアパス、働き方の自由度など、多角的な視点で検討する必要があります。
この記事で紹介したポイントをまとめると、額面年収だけでなく実質報酬で比較すること、経験7年目以降で年収差が最大化する傾向があること、自分の優先順位(安定性・収入上限・自由度など)を整理すること、フリーランス転向は十分な準備期間を設けることが重要です。
最終的に、「自分が何を優先するか」によって正解は変わります。迷ったときは、まず市場価値を確認することから始めてみてください。転職エージェントやフリーランスエージェントに登録するだけでも、自分の選択肢が可視化されます。









