
Cursor vs Windsurf:AI-Native時代のコードエディタ、PjMの私はどう使い分けるか?
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
PjMとして、また一人のエンジニアとして、AIをいかに開発プロセスに組み込み、生産性を向上させるかは、私の最大の関心事の一つです。VS CodeにGitHub Copilotを導入するという、いわば「第一世代」のAIコーディングが当たり前になった今、開発環境そのものが次のステージへと進化を始めています。
それが、「AI-Native(エーアイ・ネイティブ)」と呼ばれる新しい思想のコードエディタです。
今日は、その代表格である「Cursor」と、その競合として注目される「Windsurf」に焦点を当てます。「AIと共に開発すること」を前提に作られたこれらのツールは、私たちの仕事をどう変えるのか。そして、PjM兼エンジニアである私は、この二つのツールをどう評価し、どう使い分けるべきだと考えているのか。その思考の全てを、詳しく解説していきます。
AI-Nativeエディタとは何か?VS Code + Copilotとの違い
まず、「AI-Nativeエディタ」とは何でしょうか。それは、単にAIの拡張機能を追加したVS Codeとは、その思想が根本的に異なります。
従来の「VS Code + Copilot」が、人間が運転する車に強力なナビゲーションシステムを後付けした「支援型」だとすれば、AI-Nativeエディタは、人間とAIが共にハンドルを握る「協働型」のコックピットです。AIはもはや補助機能ではなく、ファイル管理、デバッグ、ターミナル操作といった、エディタのあらゆる機能と分かちがたく統合されています。
この「協働」という思想の違いが、これから解説するCursorとWindsurfのそれぞれの特徴に、深く現れているのです。
Cursor:既存資産を活かす、現実的な最適解
Cursorは、多くの開発者にとって、AI-Native時代への最もスムーズな入り口と言えるでしょう。
思想:「最強の開発環境VS Codeを、AIでさらに強化する」
Cursorの賢さは、「車輪の再発明をしなかった」点にあります。彼らは、既に巨大なエコシステムが完成しているVS Codeをフォーク(複製して開発)し、その上に強力なAI機能を統合するという、極めて現実的なアプローチを取りました。
長所と具体的な強み
- 既存の環境をほぼ引き継げる安心感: あなたが長年かけてカスタマイズしてきたVS Codeのキーボードショートカット、拡張機能、テーマ、設定のほとんどが、Cursorでもそのまま機能します。この「学習コストの低さ」は、多忙なプロフェッショナルにとって計り知れないメリットです。
- 強力なコンテキスト参照機能: Cursorの真骨頂は、
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コマンドを使って、プロジェクト内のファイルやフォルダ、さらにはWebページのドキュメントまでを、AIとの対話の「文脈」として簡単に指定できる点です。これにより、AIは「プロジェクトの全体像を理解した上で」コードを生成したり、質問に答えたりしてくれます。 - 高精度なAIチャットとインライン編集: エディタを離れることなく、選択したコードについてAIと対話し、修正案を即座に適用できます。このシームレスな体験は、開発のリズムを全く崩しません。
どんな人に向いているか
「今のVS Code環境は最高に気に入っている。でも、AIの恩恵はもっと受けたい」。そう考える、多くの現実的で、かつ生産性を追求するエンジニアにとって、Cursorはまさに「今すぐ導入すべき最適解」と言えるでしょう。
Windsurf:AI中心の、未来のワークフローへの挑戦
一方、Windsurfは、より野心的で、開発体験そのものを再定義しようという強い意志を感じさせるエディタです。
思想:「フロー状態」を維持し、開発者を創造的な作業に集中させる
Windsurfの核心思想は、開発者がコーディングに没頭できる「フロー状態」を、AIの力で維持・最大化することにあります。複雑なコードベースの管理や、定型的なタスクをAIエージェントに任せることで、人間はより創造的で、本質的な課題解決に集中できるべきだ、という考え方が根底にあります。
長所と具体的な強み
Windsurfは、その思想を実現するために、いくつかのユニークで強力な機能を搭載しています。
- 中核エージェント「Cascade」: Windsurfの心臓部とも言えるAIエージェントです。単にコードを補完するだけでなく、コードベース全体を深く理解し、開発者の意図を先読みして、様々なタスクを支援します。「Continue my work」と指示するだけで、中断した作業を文脈から判断して再開してくれるなど、まさに「相棒」と呼ぶにふさわしい挙動を見せます。
- 強力な外部ツール連携(MCP Support): これがWindsurfの大きな特徴の一つです。MCP(Multi-Component Protocol)という仕組みを通じて、Figma、Slack、Stripeといった外部ツールとAIが連携します。例えば、Figmaのデザインをドラッグ&ドロップするだけで、Cascadeがそれを解釈してコードに反映させたり、Slackでの議論を開発コンテキストとしてAIに与えたりすることが可能です。これは、単なるエディタの枠を超え、開発ワークフロー全体をAIが統合管理する未来を予感させます。
- インテリジェントな自動化機能: 生成したコードのLintエラーを自動で修正する「Lint Fixing」や、ターミナルコマンドを自動実行する「Turbo Mode」など、開発者が思考を中断させられる細かな手作業を、徹底的に排除しようという強い意志が感じられます。
どんな人に向いているか
「既存のやり方に固執せず、AIが開発プロセスの中心にいる、全く新しいワークフローに飛び込んでみたい」。そんな探究心と冒険心にあふれた、先進的なエンジニアや開発チームにとって、Windsurfは非常に刺激的で、生産性を根底から変える可能性を秘めた選択肢となるでしょう。
【PjM視点】チームで導入するなら、どちらを選ぶべきか
さて、PjMとして、この二つのツールを「チームの標準エディタ」として導入する場合、どのような観点で比較検討すべきでしょうか。両者ともVS Codeのフォークであるため、移行のしやすさに大差はないという前提に立つと、以下の3点が重要な評価項目となります。
- 1. ツールの成熟度とコミュニティ
- 評価ポイント: 現時点でのユーザー数、Web上で見つかる情報の量、アップデートの頻度と安定性。
- PjMとしての判断: チームで利用するツールは、個人の好み以上に「安定性」と「問題解決の容易さ」が求められます。問題発生時に、公式ドキュメントやコミュニティ、あるいはWeb検索で、どれだけ迅速に解決策を見つけられるか。より長く市場に存在し、多くのユーザーを抱えるツールの方が、この点では有利な傾向にあります。
- 2. AI機能セットの思想と方向性
- 評価ポイント: AIが主として解決しようとしている課題は何か。コード生成の効率化か、プロジェクト全体の情報連携か。
- PjMとしての判断: ここが両者を比較する上での本質です。チームが現在抱えている最大のボトルネックはどこにあるのかを分析します。もし「個々のエンジニアのコーディング速度」が課題であれば、Cursorのように堅実なコード支援機能を持つツールが適しています。もし「仕様の共有や、複数ツールをまたいだ情報の分断」が課題であれば、それらの統合を目指す機能を持つツールが、より大きなインパクトをもたらす可能性があります。
- 3. セキュリティとチーム管理機能
- 評価ポイント: 企業として導入する際のセキュリティポリシー、チームメンバーの利用状況を管理・統制する機能の有無。
- PjMとしての判断: 個人利用とは異なり、組織での導入には情報システム部門やセキュリティ部門の承認が不可欠です。AIにどのようなデータを送信するのか、その管理ポリシーは明確か。メンバー毎の利用権限を設定できるか。これらの管理機能が充実していることは、エンタープライズ利用において極めて重要な選定基準となります。
PjMとしての結論: 「どちらが良いか」を即断するのではなく、まずは自社のチームが抱える課題を正確に定義し、上記の評価項目に沿って両ツールを比較検討するべきです。具体的には、数名の有志でパイロットチームを作り、1ヶ月ずつ両方のツールを試用してみるのが、最も確実で失敗のない導入プロセスでしょう。その結果を基に、チーム全体の生産性に最も貢献するツールを、自信を持って選択することができます。
まとめ:あなたの「AIとの距離感」が、エディタを決める
CursorとWindsurf。この二つのエディタは、単なる機能の優劣ではなく、「あなたが、AIとどのような距離感で付き合っていきたいか」という哲学の違いを私たちに問いかけています。
- Cursorは、あなたがこれまで築き上げてきた最高の開発環境を尊重し、そこに強力なAIアシスタントを「招待」するスタイル。
- Windsurfは、AIという新しい主役のために、あなたの開発環境そのものを「再設計」するスタイル。
最強のエディタは、一つではありません。あなたの現在のスキル、プロジェクトの性質、そして未来に対する考え方そのものが、あなたにとっての最適なエディタを決定づけるのです。
ちなみに私自身は、チームでの協業や既存プロジェクトの改修にはCursorの安定性を、そして全く新しい個人プロジェクトで未来のワークフローを模索する際にはWindsurfのような挑戦的なツールを試す、といったハイブリッドな使い分けをしていくことになるだろうと感じています。
この記事が、あなたがAI-Native時代の新しい「相棒」を見つけるための、一助となれば幸いです。