「エンジニア35歳定年説」は本当か？40代以降も市場価値を高め続けるための生存戦略

2025年8月20日

こんばんは！IT業界で働くアライグマです！
「ITエンジニア35歳定年説」
この言葉を、あなたも一度は耳にしたことがあるかもしれません。技術の速い流れの中で、30代半ばを過ぎたエンジニアはもう第一線で活躍できないのではないか…そんな不安を煽る、亡霊のような言葉です。私自身、1986年生まれとして、この年齢の持つ重みを実感する一人です。果たして、この説は本当に現代の事実なのでしょうか？
今日は、多くのエンジニアがキャリアの岐路で直面するこの問題について、そして私たちがこれから先、40代、50代と価値ある専門家として生き残るための具体的な「生存戦略」について、深く、そして実践的に掘り下げてみたいと思います。

Contents

1. なぜ「35歳定年説」は、今も亡霊のように囁かれるのか？
2. 生き残るエンジニアが越えるべき「3つの壁」
3. 未来を切り拓くための具体的なアクションプラン
4. まとめ

なぜ「35歳定年説」は、今も亡霊のように囁かれるのか？

この説が決して単なる迷信ではなく、構造的な問題を背景にしているからこそ、今もなお多くのエンジニアを不安にさせます。その根深い理由を、もう少し解像度を上げて見ていきましょう。

圧倒的な技術の進化スピードと「学習の壁」: ドッグイヤーとも言われるIT業界では、昨日まで主流だった技術が、今日にはもうレガシーになっていることも珍しくありません。例えば、数年前までフロントエンド開発の主流だったjQueryは、今やVueやReactといったコンポーネントベースのフレームワークにその座を譲りました。私自身がメインで使っているPHPでさえ、Laravelのようなモダンなフレームワークを使いこなせなければ、時代遅れのエンジニアと見なされてしまいます。若手のように、プライベートの時間を全て投下して新しい技術を猛烈な勢いで吸収し続ける体力と時間に限界を感じ始めるのが、家庭や他の責任も増える30代半ばあたりなのです。
マネジメントへの移行圧力という「キャリアの画一化」: 日本の多くの企業では、年齢と経験を重ねると、自然とマネジメントへの道が期待される傾向があります。しかし、最高のプレイヤーが最高の監督になるとは限らないように、技術を極めたいスペシャリスト志向のエンジニアにとって、この画一的なキャリアパスは大きな苦痛となり得ます。マネジメントに適性がないまま管理職になり、コードから離れてしまった結果、市場価値を下げてしまうという悲劇も少なくありません。
年収とパフォーマンスの「コストの壁」: 20代の若手エンジニアと30代半ばのベテランエンジニア。同じ「Webアプリを開発する」というタスクであれば、企業がどちらに高い報酬を払うかは自明です。経験年数と共に上昇する年収に見合った、あるいはそれ以上の「付加価値」を提示できなければ、単に「コードが書ける」だけでは、より若く、より低いコストで同じ仕事ができるエンジニアとの厳しい競争に晒されてしまうのです。これは非常にシビアな現実です。

これらの要因が複雑に絡み合い、「35歳」という年齢が、エンジニアにとって一つの大きな、そして現実的な壁として意識されてしまうのです。

生き残るエンジニアが越えるべき「3つの壁」

しかし、絶望する必要は全くありません。35歳は「定年」ではなく、むしろキャリアの「第二章」をどうデザインするかを考える絶好の「転機」です。そのためには、私たちの前に立ちはだかる「3つの壁」を正しく認識し、それを乗り越えるための具体的な戦略を立て、実行することが不可欠です。

壁1: 技術のコモディティ化と「自分ならでは」の価値の壁

特定の言語やフレームワークが書ける、というスキルは、もはや「できて当たり前」の世界になりつつあります。そのスキルだけでは、いずれ価値は薄れていきます。なぜなら、同じスキルを持つエンジニアは世界中に無数に存在し、技術そのものが陳腐化するリスクも常にあるからです。
【乗り越え方】スキルを「掛け算」し、代替不可能な人材になる
これからのエンジニアに求められるのは、一つの専門性を深く掘り下げる「I字型」のスキルセットだけではありません。複数の専門性を掛け合わせ、あなただけのユニークな価値を生み出すのです。

専門性 × 専門性（π字型）: 例えば、私自身のスキルセットである「バックエンド開発（PHP/Laravel）」の深い知識に加えて、「AWSを用いたインフラ構築・運用」のスキルを掛け合わせれば、「アプリケーションの開発から安定した本番運用まで一人で完結できるエンジニア」という希少価値が生まれます。他にも、「フロントエンド（JavaScript）」に「UI/UXデザイン」の知識を、「データ分析」に「機械学習」の知識を掛け合わせるなど、組み合わせは無限大です。
専門性 × ビジネス理解（T字型）: 自分の書いているコードが、事業全体のどの部分に貢献し、どのようなビジネスインパクトを与えるのかを常に意識し、説明できるエンジニアは非常に貴重です。「この機能を実装すれば、ユーザーの離脱率が〇%改善され、売上が△円向上するはずです」といった提案ができるようになれば、あなたは単なる「作業者」ではなく、事業を成長させる「パートナー」として認識されるでしょう。

特定のフレームワークの知識だけでなく、こうした普遍的で本質的なソフトウェア設計の原則を学ぶことは、技術の流行り廃りに左右されない、エンジニアとしての「幹」を太くしてくれます。そのためのバイブルとして、多くのエンジニアに読み継がれているのがこの一冊です。
Clean Architecture　達人に学ぶソフトウェアの構造と設計

壁2: プレイヤーとしての価値の頭打ちとレバレッジの壁

一人の人間がコードを書いて生み出せる価値には、残念ながら物理的な限界があります。24時間356日働き続けることはできません。プレイヤーとして自分の時間単価を上げ続けることにも、いずれは天井が訪れます。
【乗り越え方】「自分以上の価値」を生み出すレバレッジを意識する
35歳以降は、自分一人の力だけでなく、いかにして「レバレッジ」を効かせ、自分以上の価値を生み出すかという視点への転換が求められます。

仕組み化・自動化: 繰り返し発生するデプロイ作業やテスト、定型的なレポート作成などは、CI/CDツールやスクリプトで徹底的に自動化しましょう。そうして生み出した時間で、より創造的で付加価値の高い仕事に集中するのです。
チームへの貢献（技術的影響力の行使）: あなたが書いた質の高いコード、あなたが整備した分かりやすいドキュメント、あなたが行う丁寧なコードレビューは、チーム全体の生産性と品質を底上げします。後輩の育成や勉強会の開催も、チームの力を増幅させる重要なレバレッジです。
プロジェクトマネジメント: 以前の記事「なぜ、あなたの個人開発は「エターナる」のか？PjMの武器で、今度こそリリースまでやり切る技術」でも触れましたが、プロジェクト全体を俯瞰し、リスクを管理し、計画通りに事を進めるスキルは、個人の開発能力以上に大きな価値を生み出すことがあります。

このような、自身の市場価値を客観的に捉え、戦略的にキャリアを築いていく思考法について、より深く学びたい方には、こちらのベストセラー書籍が必読です。
転職と副業のかけ算
会社というプラットフォームに依存せず、自分自身の価値をどう高め、最大化していくか。そのための具体的なアクションプランとマインドセットが、この一冊に凝縮されています。

壁3: 会社への依存と「稼ぐ力」の壁

「今の会社が倒産したら、自分は明日から家族を養っていけるだろうか？」
この問いに、即座に「YES」と答えられるエンジニアは、案外少ないのではないでしょうか。会社という組織に所属していると、知らず知らずのうちに、その看板や給与システムに依存してしまいがちです。会社の外でも通用する「個として稼ぐ力」を意識的に鍛えなければ、リストラや事業撤退といった環境の変化に抗うことができなくなります。
【乗り越え方】「会社の看板」なしで戦う場を持ち、自分の価値を試す

個人開発: アイデアをサービスとして形にし、公開・運用する経験は、技術力だけでなく、マーケティング、ユーザーサポート、マネタイズなど、ビジネスに必要なあらゆるスキルを総合的に鍛えてくれます。失敗しても構いません。その経験自体が、あなたの大きな資産になります。
副業: 本業とは異なる環境で自分のスキルを試すことは、自身の市場価値を客観的に測る絶好の機会です。また、本業以外の収入源を持つことは、経済的な安定だけでなく、「いつでも会社を辞められる」という精神的な余裕にも繋がります。
情報発信: このブログのように、自分の知識や経験を記事にしたり、勉強会で登壇したりすることは、あなたの専門性を外部に示し、個人のブランド価値を高める最も効果的な活動の一つです。思わぬところから仕事の依頼が舞い込んだり、同じ志を持つ仲間と繋がれたりすることもあります。

技術力だけでなく、キャリア戦略、学習法、生産性の向上、そして情報発信といった「個として稼ぐ」ために必要なソフトスキルを網羅的に解説した名著がこちらです。エンジニアとして、そして一人のプロフェッショナルとしての人生をどう歩むべきか、その指針を与えてくれます。
SOFT SKILLS ソフトウェア開発者の人生マニュアル第2版

未来を切り拓くための具体的なアクションプラン

さて、ここまで様々な戦略について語ってきましたが、「理屈は分かったけど、明日から何をすればいいの？」と感じる方もいるでしょう。そこで、今日から始められる具体的なアクションプランを3つ提案します。

「専門性＋1」の学習を1日30分だけ始める: 今の専門分野に隣接する領域で、興味のある技術を一つ選びましょう。AWSのドキュメントを読む、UIデザインの入門書を開く、何でも構いません。重要なのは、毎日続けることです。30分でも1年続ければ180時間以上。それは間違いなく新しいスキルになります。
自分の仕事を「言語化」する癖をつける: 今取り組んでいるタスクが「事業のどの課題を解決するのか」「なぜこの技術選定をしたのか」を、同僚や上司に説明する、あるいは個人ブログに書き出すなど、常に言語化しましょう。これにより、ビジネス視点や設計思想が自然と身につきます。
社外のコミュニティに顔を出す: 勉強会やカンファレンスに月一回でも参加してみましょう。自分とは異なる環境で働くエンジニアと話すことは、自分の市場価値を客観視し、新たなキャリアの可能性に気づく絶好の機会となります。

まとめ

「ITエンジニア35歳定年説」は、変化を恐れ、学習を止め、過去の成功体験に固執するエンジニアにとっては、残念ながら現実のものとなるかもしれません。しかし、それは決して年齢という数字によって一方的に決まるものではありません。
35歳は、キャリアの終わりなどではなく、これまでの経験を武器に、エンジニアとしての第二章を開くための、最高のスタートラインです。