
「コードを書く」はAIの仕事?PjMが明かす、AI時代に“市場価値が爆上がりする”エンジニアの5つの能力
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
都内の事業会社でPjMとして、AI技術を活用したプロジェクト推進に日々取り組んでいる私です。エンジニアとして長年、PHP、Laravel、Vue3といった技術スタックでコードを書いてきた経験から、AIコーディング支援ツール(Cursor, Junie, Claude Codeなど)がもたらす生産性の向上には、目を見張るものがあります。
AIが私たちの指示を理解し、驚くべきスピードで質の高いコードを生成する。そんな光景が、もはや開発現場の日常となりつつあります。この状況は、私たちエンジニアに、ある根源的な問いを突きつけます。
「AIがこれほどまでにコードを書けるようになった今、私たち人間のエンジニアの『価値』は、一体どこにあるのだろうか?」
「AIに仕事が奪われる」といった漠然とした不安を煽るつもりは毛頭ありません。むしろ私は、これはエンジニアという職業が、より高度で、より創造的なステージへと進化する、またとない機会だと捉えています。私たちの価値は決して失われるのではなく、ただ「変化」するのです。
今日は、AI時代において、エンジニアの価値が、かつての「コードを早く正確に書く能力」から、どのような新しい能力へとシフトしていくのか、PjM兼エンジニアとしての私の視点から、その具体的な中身を解き明かしていきたいと思います。
「コードを書く」という行為の変化:AIが“筆”となった時代
まず、私たちの「コードを書く」という行為そのものが、AIによってどう変化しているのかを認識する必要があります。
AIによるコーディングの自動化と効率化
AIは、以下のようなタスクで既に人間を凌駕するほどの能力を発揮し始めています。
- ボイラープレートコードの生成: プロジェクトの初期設定や、定型的なクラス・関数の雛形作成。
- 単純なロジックの実装: 明確な仕様に基づいた、単純なデータ処理やCRUD操作。
- ユニットテストの作成: 既存の関数に対するテストケースの網羅的な生成。
- 言語間のコード翻訳: Pythonで書かれたロジックをJavaScriptに書き換える、といった作業。
これらの領域では、もはや人間が手で一から書くよりも、AIに任せた方が速く、そして正確であることすらあります。
エンジニアの役割は「作家」から「編集長」へ?
この状況を、私は「エンジニアの役割が『作家』から『編集長』へとシフトしている」と捉えています。
これまでのエンジニアは、物語の文章を一文一文紡ぎ出す「作家」としての役割が大きかったかもしれません。しかしこれからは、AIという非常に有能なゴーストライター(あるいは共同執筆者)に対して、
- 「どのようなテーマで、どのような構成の物語を書くべきか」という全体構想(アーキテクチャ設計)を考え、
- AIが書き上げた原稿(生成されたコード)の事実確認、品質チェック、そして文脈に合わせた編集(コードレビューとリファクタリング)を行い、
- 物語全体のクオリティに責任を持つ「編集長」や「クリエイティブディレクター」としての役割が、より重要になってくるのです。
AI時代に価値が高まるエンジニアの5つの能力
では、この新しい時代において、具体的にどのような能力がエンジニアの価値を定義するのでしょうか。私は、以下の5つの能力が特に重要になると考えています。
能力1:課題発見と「何を創るべきか」を定義する力
AIは、与えられた問題を解くのは得意ですが、「解くべき問題」を自ら見つけ出すことはできません。
- ビジネスとユーザーへの深い理解: ユーザーが本当に困っていることは何か、ビジネス上の課題はどこにあるのかを深く洞察し、それを解決するための「何を創るべきか」を定義する能力。
- 要件定義と仕様化: 曖昧なビジネス要求を、AIでも理解できるような明確な技術的要件や仕様に落とし込む能力。
PjMとしての私の経験上、この「課題設定能力」こそがプロジェクトの成否を分ける最も重要な要素であり、これはAIには決して代替できない、人間の高度な思考活動です。エンジニアもまた、ただ「作る」だけでなく、「何を、なぜ作るのか」という上流工程への関与が、これまで以上に価値を持つようになります。
能力2:堅牢で美しい「システムを設計する力」
AIは優れたコードの断片を生成できますが、システム全体の整合性や将来性までを見通した設計は、まだ人間の経験と大局観に及びません。
- アーキテクチャ設計: スケーラビリティ(拡張性)、メンテナンス性(保守性)、セキュリティといった、システムの土台となる非機能要件を考慮した、堅牢で美しいアーキテクチャを設計する能力。
- 技術選定: プロジェクトの目的や制約条件に合わせ、無数にある技術スタックの中から最適な組み合わせを選択する能力。
- トレードオフの判断: 開発スピード、コスト、品質といった、相反する要素のトレードオフを適切に判断する能力。
私が普段扱っているPHP/LaravelとVue3の組み合わせにおいても、AIは個々のコントローラーやコンポーネントを作るのは得意ですが、それらをどのように分割し、どう連携させれば、将来にわたって保守しやすいシステムになるのか、という全体設計は、依然として熟練したエンジニアの腕の見せ所です。
能力3:AIを「賢く使いこなす力」
AIはもはや、一部の専門家だけのものではありません。全てのエンジニアにとって、AIを効果的に使いこなすリテラシーが必須スキルとなります。
- 高度なプロンプトエンジニアリング: AIの能力を最大限に引き出すための、的確で文脈豊かな指示を与える能力。
- ツールの目利きと使い分け: Cursor, Junie, Claude Codeなど、それぞれのAIツールが持つ特性や思想を理解し、タスクに応じて最適なツールを使い分ける能力。
- ハルシネーションへの対処: AIが生成する「もっともらしい嘘」を見抜き、ファクトチェックを怠らず、そのリスクを管理する能力。
AIを単なる「答えをくれる機械」ではなく、「思考を加速させるパートナー」として使いこなせるかどうかが、生産性の大きな分かれ目となります。
能力4:品質に責任を持つ「オーナーシップ」
AIはコードを生成しますが、そのコードが引き起こすバグやセキュリティインシデントに対して、AIは一切責任を取ってくれません。
- 最終的な品質保証: 生成されたコードがプロジェクトの品質基準を満たしているか、徹底的にテストし、レビューし、その品質に最終的な責任を持つという、プロフェッショナルとしての「オーナーシップ」。
- セキュリティ第一の思考: AIが生成したコードに潜む可能性のある脆弱性を常に意識し、セキュアコーディングの原則に照らして検証する能力。
- パフォーマンスへの配慮: AIが生成したコードが、パフォーマンス上のボトルネックにならないかを評価し、最適化する能力。
AIが開発プロセスに深く関わるほど、この「最後の砦」としての人間のエンジニアの責任は、むしろ重くなると言えるでしょう。
能力5:チームとビジネスを繋ぐ「コミュニケーション能力」
AIがコーディング作業の一部を担うことで、エンジニアはこれまで以上に、人間同士のコミュニケーションに時間を割くことができるようになり、その重要性も増していきます。
- 技術的負債や設計思想の説明: なぜその技術を選択したのか、この設計にはどのような意図があるのか、といった技術的な背景を、PjMや他のステークホルダーに分かりやすく説明する能力。
- チーム内での知識共有とメンタリング: AIの活用方法や、新しい技術に関する知見をチーム内で共有し、若手エンジニアを育成する能力。
- 建設的な議論のファシリテーション: コードレビューや設計会議において、多様な意見を引き出し、建設的な議論を通じてチームとしての最適な結論を導き出す能力。
PjM/エンジニアとしての「私」が今、意識していること
この大きな変化の波の中で、私自身が日々の業務で意識しているのは、「思考」と「学習」への時間投資です。
「コードを書く時間」から「考える時間」への投資
AIの支援によって「手を動かす」時間が短縮された分、その時間を「頭を動かす」時間へと再投資しています。つまり、目の前の実装だけでなく、「このプロジェクトの本当の課題は何か」「このアーキテクチャは3年後も通用するか」「ユーザーにとっての本当の価値はどこにあるか」といった、より本質的で戦略的な問いについて考える時間を、意図的に確保するようにしています。
技術的好奇心とビジネス視点の両立
エンジニアとしての技術的好奇心を満たしつつも、常に「それはビジネス上の課題解決にどう繋がるのか」というPjMとしての視点を忘れないようにしています。AI時代に価値あるエンジニアとは、単に技術に詳しいだけでなく、その技術をどう活用してビジネス価値を創造できるかを語れる人材だと考えているからです。
次世代へのバトン:学び続ける姿勢をどう伝えるか
これは少し個人的な視点になりますが、これからエンジニアを目指す若い世代や、私のチームの若手メンバーには、特定の技術を覚えること以上に、「変化に適応し、常に学び続ける姿勢」の重要性を伝えていきたいと思っています。AIと共に働くことが当たり前になる彼らの世代にとって、この姿勢こそが最も価値あるスキルとなるはずです。
まとめ:エンジニアの価値は消滅するのではなく、より高次な領域へシフトする
AIの進化は、私たちエンジニアの価値を脅かすものではありません。むしろ、それは私たちの価値を、単調な「作業」から、より高度な「知的創造活動」へとシフトさせる、またとない機会なのです。
「コードを書く能力」が不要になるわけではありませんが、その重要性は相対的に低下し、代わりに、
- 何を創るべきかを見極める「課題設定能力」
- どう創るべきかを構想する「設計能力」
- AIという強力な道具を使いこなす「AI活用能力」
- 創ったものに責任を持つ「品質へのオーナーシップ」
- そして、人々と協働し、ビジネスを動かす「コミュニケーション能力」
といった、より人間的な、そしてより本質的な能力が、これからのエンジニアの価値を定義していくことになるでしょう。
AIという強力なパートナーを手に入れた私たちは、これまで以上に複雑な課題を解決し、革新的なプロダクトを生み出し、社会に大きなインパクトを与えることができるようになるはずです。
その未来は、決して恐れるものではなく、むしろワクワクするような可能性に満ちています。さあ、私たちもスキルをアップデートし、AIと共に新しい時代のエンジリグを楽しんでいきましょう。