
【2025年版】データベースの種類を総まとめ!RDBMSとNoSQLの違いから最適な選び方まで徹底解説”
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
Webサービスやアプリケーションを開発する上で、データの永続化、つまり「情報を保存しておく仕組み」は絶対に欠かせません。その心臓部とも言えるのがデータベースです。
しかし、一口にデータベースと言っても、その種類は驚くほど多岐にわたります。
- 「RDBMSとNoSQLって、結局何がどう違うの?」
- 「プロジェクトに最適なデータベースって、どうやって選ばばいいんだろう?」
- 「最近よく聞くクラウドデータベースって、何が便利なの?」
このような疑問を抱えているエンジニア、特にキャリアの浅い方や、これまで特定のデータベースしか触ってこなかった方は多いのではないでしょうか。
実際、私のブログの検索データを見ても、「データベース 種類」や「RDBMS 種類」といったキーワードでの検索流入は非常に多いです。これは、多くの開発者が自分たちのプロジェクトに最適な選択をするための、信頼できる情報源を探している証拠と言えるでしょう。情報が溢れる現代だからこそ、体系的で分かりやすい知識が求められているのです。
この記事では、古くからシステム開発の根幹を支えてきたリレーショナルデータベース(RDBMS)から、現代的なアプリケーションで主流となりつつあるNoSQLデータベースまで、主要なデータベースの種類とその特徴、そしてプロジェクトの特性に応じた最適な選び方について、2025年の最新トレンドを交えながら、徹底的に、そして“世界一優しく”解説していきます。
データベースの二大巨頭:RDBMS vs NoSQL
現代のデータベースを理解する上で、まず押さえるべき最も大きな分類が、RDBMS(Relational Database Management System)とNoSQL(Not only SQL)です。この2つの基本的な違いを理解することが、データベース選定の第一歩となります。
まずは、全体像を掴むために、両者の特徴を比較した表を見てみましょう。
特徴 | RDBMS (リレーショナルデータベース) | NoSQL (非リレーショナルデータベース) |
---|---|---|
データ構造 | テーブル(行と列)による厳格な構造 | 多様な形式(キーバリュー、ドキュメント、グラフ等)で柔軟 |
スキーマ | 厳格(スキーマ・オン・ライト) 事前に定義が必要 |
柔軟(スキーマ・オン・リード) スキーマレスも可能 |
一貫性 | 強い一貫性(ACID特性) トランザクション重視 |
結果整合性(BASE特性) 可用性・速度重視 |
スケーラビリティ | スケールアップが得意 (サーバーの性能向上) |
スケールアウトが得意 (サーバーの台数増加) |
クエリ言語 | SQL(標準化されている) | 製品ごとに独自のAPIやクエリ言語 |
代表例 | MySQL, PostgreSQL, Oracle, SQL Server | MongoDB, Redis, Cassandra, Neo4j |
この表だけ見ても、専門用語が多くてピンとこないかもしれませんね。大丈夫です。ここから一つずつ、具体例を交えながら丁寧に解説していきます。
伝統と信頼のRDBMS(リレーショナルデータベース)
RDBMSは、データをテーブルという表形式の構造で管理する、最も伝統的で広く使われているデータベースです。Excelのシートを想像していただくと分かりやすいでしょう。データは行(レコード)と列(カラム)で構成され、それぞれのテーブルは「キー」と呼ばれる一意のIDを使って、互いに関連付け(リレーション)られます。
例えば、「ユーザー」テーブルと「投稿」テーブルがあった場合、「投稿」テーブルに「どのユーザーが投稿したか」を示すuser_id
という列を持たせることで、両者を紐づけることができます。これがリレーショナルデータベースの基本的な考え方です。
RDBMSの主な特徴
厳格なスキーマと正規化
RDBMSの最大の特徴は、厳格なスキーマにあります。スキーマとは、データベースの構造定義のこと。データを格納する前に、「users
テーブルにはid
(整数)、name
(文字列)、email
(文字列)という列があります」といった定義をきっちり決めておく必要があります。
これにより、想定外のデータ型(例えば、年齢の列に文字列が入るなど)が保存されるのを防ぎ、データの整合性を強力に担保します。この性質は「スキーマ・オン・ライト(書き込み時にスキーマを適用)」と呼ばれます。
また、RDBMSの設計においては正規化というプロセスが重要になります。これは、データの重複をなくし、整合性を保つために、データを複数のテーブルに適切に分割していく設計手法です。例えば、「投稿」テーブルに投稿者の名前やメールアドレスまで含めてしまうと、同じユーザーが投稿するたびに同じ情報が重複してしまいます。そこで、「ユーザー」テーブルに分割し、IDで関連付けるのです。この正規化により、データの更新が容易になり、矛盾が生じにくくなります。
標準言語「SQL」とインデックス
データの操作には、SQL(Structured Query Language)という、ほぼすべてのRDBMSで共通して使える標準化された言語を使用します。一度SQLを習得すれば、MySQLでもPostgreSQLでも、基本的な操作は同じように行えるため、学習コストが低いのがメリットです。
そして、RDBMSのパフォーマンスを語る上で欠かせないのがインデックスです。これは、本の索引のように、特定の列の値からデータが格納されている場所を高速に探し出すための仕組みです。インデックスがない状態で数百万件のデータから特定のユーザーを探すのは、本を最初から最後まで1ページずつめくっていくようなもので、非常に時間がかかります。適切にインデックスを設定することで、この検索速度を劇的に向上させることができます。
トランザクションとACID特性
RDBMSを語る上で絶対に欠かせないのが、トランザクションとACID特性です。トランザクションとは、「関連する一連の処理を、すべて成功するか、すべて失敗するかのどちらかの状態にする」という仕組みのこと。
銀行の振込処理を例に考えてみましょう。
- Aさんの口座から5万円を引き落とす
- Bさんの口座に5万円を振り込む
この2つの処理は、絶対にセットで実行されなければなりません。もし1だけ成功して2が失敗したら、5万円が宙に浮いてしまいます。トランザクションは、このような事態を防ぐための仕組みです。
そして、このトランザクションの信頼性を保証するのがACID特性です。
- A (Atomicity: 原子性): トランザクションは完全に実行されるか、全く実行されないかのどちらか。
- C (Consistency: 一貫性): トランザクションの前後で、データの矛盾が生じない。
- I (Isolation: 独立性): 複数のトランザクションを同時に実行しても、互いに影響を与えない。
- D (Durability: 永続性): 正常に完了したトランザクションの結果は、障害が発生しても失われない。
このACID特性により、RDBMSは金融システムや在庫管理システムなど、データの信頼性が極めて重要な場面で、長年にわたり採用され続けています。
代表的なRDBMS製品
- MySQL: 世界で最も普及しているオープンソースのRDBMS。Webアプリケーションのバックエンドとして、WordPressをはじめとする多くのシステムで採用されています。シンプルで高速なのが特徴で、特に読み取り処理のパフォーマンスに定評があります。Oracle社によって買収されましたが、コミュニティ版は現在も無料で利用できます。
- PostgreSQL: こちらもオープンソースですが、MySQLよりも多機能で拡張性が高いことで知られています。複雑なクエリや、JSON型のようなモダンなデータ型も扱えるため、近年非常に人気が高まっています。標準SQLへの準拠度が高く、堅牢なデータ管理が求められる業務システムでの採用が増えています。
- Oracle Database: Oracle社が開発する商用データベースの巨人。非常に高価ですが、その分、性能や信頼性、サポート体制はトップクラスで、大企業の基幹システムや金融機関で圧倒的なシェアを誇ります。
- Microsoft SQL Server: Microsoftが開発しており、Windows環境との親和性が非常に高いのが特徴です。C#などを使った業務アプリケーション開発でよく利用されます。
データベースのアーキテクチャや設計思想について、より深く体系的に学びたい方には、こちらの書籍がおすすめです。ソフトウェア開発に携わる者として、一度は読んでおきたい名著です。
ソフトウェアアーキテクチャの基礎 ―エンジニアリングに基づく体系的アプローチ柔軟性と拡張性のNoSQLデータベース
NoSQLは、RDBMSが苦手としていた領域、特に爆発的に増え続ける非構造化データ(ビッグデータ)の扱いや、水平方向のスケーラビリティ(スケールアウト)を解決するために2000年代後半から登場したデータベースの総称です。
「Not only SQL」という名前が示す通り、SQLだけでなく、あるいはSQLを使わずに、多様なデータモデルを扱えるのが最大の特徴です。
NoSQLの主な特徴
柔軟なスキーマ
NoSQLデータベースの多くは、RDBMSのような厳格なスキーマを持ちません。これは「スキーマレス」あるいは「スキーマ・オン・リード(読み込み時にスキーマを解釈)」と呼ばれ、アプリケーションの変更に非常に迅速に対応できるというメリットがあります。
例えば、ユーザープロファイルに「趣味」という新しい項目を追加したい場合、RDBMSならALTER TABLE
というコマンドでテーブル定義を変更する必要がありますが、NoSQL(特にドキュメント指向型)なら、新しい項目を持つデータをそのまま追加するだけで済みます。この柔軟性が、アジャイル開発のようなスピード感が求められる現代の開発スタイルと非常にマッチしています。
高いスケーラビリティ(スケールアウト)
NoSQLデータベースは、スケールアウト、つまり安価なサーバーの台数を増やすことで、システム全体の性能を向上させる設計思想に基づいています。データ量やアクセス数が急増しても、サーバーを追加していくだけでリニアに対応できるため、大規模なWebサービスとの相性が抜群です。
一方、RDBMSは伝統的にスケールアップ(サーバー自体のCPUやメモリを高性能なものに交換する)で性能を向上させてきましたが、これには物理的な限界と高額なコストが伴います。
BASE特性と結果整合性
NoSQLデータベースの多くは、ACID特性の代わりにBASE特性という考え方を採用しています。
- BA (Basically Available): 基本的にいつでも利用可能である(可用性)。
- S (Soft state): システムの状態は時間と共に変化しうる。
- E (Eventually consistent): しばらく待てば、いずれデータは一貫性のある状態になる(結果整合性)。
これは、分散システムにおいて、常に厳密な一貫性を保とうとすると、可用性やパフォーマンスが犠牲になるというトレードオフを受け入れる考え方です。例えば、SNSで「いいね!」を押した時、そのカウントが世界中のサーバーに即座に反映されなくても、少し遅れて反映されれば問題ない、というようなケースに適しています。
多様なデータモデル
NoSQLは単一の技術ではなく、データの持ち方によって、主に以下の4つのタイプに分類されます。プロジェクトの用途に応じて、最適なデータモデルを選択できるのが強みです。
- キーバリュー型
- 概要: 最もシンプルなモデル。一意なキーと、それに対応する値(Value)のペアだけでデータを格納します。「
user:123
」というキーに対して、ユーザー情報を文字列やJSONで保存する、といったイメージです。 - 代表例:
Redis
,Amazon DynamoDB
- ユースケース: 超高速な読み書きが求められる場面。Webサイトのセッション管理、リアルタイムなランキング表示、キャッシュサーバーなど。
- 概要: 最もシンプルなモデル。一意なキーと、それに対応する値(Value)のペアだけでデータを格納します。「
- ドキュメント指向型
- 概要: JSONやBSONといった、階層構造を持つドキュメント形式でデータを格納します。一つのドキュメントに関連する情報をまとめて格納できるため、直感的で扱いやすいのが特徴です。
- 代表例:
MongoDB
,Google Firestore
- ユースケース: Webアプリケーションのバックエンドとして最も広く使われています。ブログの記事データ、ECサイトの商品カタログ、ユーザープロファイルなど、柔軟なデータ構造が求められる場面に最適です。
- カラム指向型(ワイドカラムストア)
- 概要: RDBMSが行単位でデータを格納するのに対し、列(カラム)を単位としてデータを格納します。これにより、大量の書き込み処理と、特定の列に対する集計処理が非常に高速になります。
- 代表例:
Apache Cassandra
,Google Bigtable
,HBase
- ユースケース: ビッグデータ分析基盤、IoTデバイスから送られてくる大量のセンサーデータ、メッセージングアプリの履歴データなど。
- グラフ型
- 概要: データそのもの(ノード)と、データ間の「つながり」や「関係性」(エッジ)を効率的に扱うためのモデルです。
- 代表例:
Neo4j
,Amazon Neptune
- ユースケース: SNSの友人関係の表現、ECサイトのレコメンデーションエンジン(「この商品を買った人はこんな商品も見ています」)、不正検知システム(取引の関連性を追跡)など、データ間のリレーションシップが重要な場面で威力を発揮します。
フルスタックエンジニアとして活躍するためには、バックエンドだけでなく、適切なデータベースモデルを選択する能力も求められます。また、ドメイン駆動設計の文脈でも、どのデータベースモデルがビジネスのドメインを最も適切に表現できるかを考えることは非常に重要です。より複雑なビジネスロジックを扱う際には、以下の書籍が大きな助けとなるでしょう。
ドメイン駆動設計入門 ボトムアップでわかる!ドメイン駆動設計の基本データベース選定の実践的チェックリスト
さて、RDBMSとNoSQL、それぞれの特徴を理解したところで、いよいよ「じゃあ、自分のプロジェクトではどっちを選べばいいの?」という疑問に答えていきましょう。
CAP定理を理解する
NoSQL、特に分散データベースを理解する上でCAP定理は避けて通れない重要な概念です。これは、分散システムにおいて、以下の3つの特性のうち、同時に満たせるのは最大2つまでである、という定理です。
- C (Consistency: 一貫性): 全てのノードが常に同じデータを保持していること。
- A (Availability: 可用性): システムの一部に障害が発生しても、全体としては常にリクエストに応答できること。
- P (Partition Tolerance: 分断耐性): ネットワークの分断が発生しても、システムが動作し続けること。
ネットワーク分断は避けられないため、実質的にはCP(一貫性と分断耐性)かAP(可用性と分断耐性)のどちらかを選ぶことになります。RDBMSの多くはCP型、NoSQLの多くはAP型に分類されます。あなたのシステムが、一瞬のデータの不整合も許さないのか(CP)、それとも常に動き続けることを優先するのか(AP)が、選定の大きな指針となります。
企業規模やフェーズによる選定シナリオ
- スタートアップ・新規事業:
- 推奨: ドキュメント指向NoSQL (MongoDB, Firestore)
- 理由: ビジネスモデルや仕様が頻繁に変わるため、スキーマレスの柔軟性が開発スピードを加速させます。まずは市場の反応を見るMVP(Minimum Viable Product)開発に最適です。
- 中規模Webサービス(成長期):
- 推奨: RDBMS (PostgreSQL, MySQL/Aurora) + キーバリュー型NoSQL (Redis)
- 理由: ユーザー情報や決済情報など、一貫性が求められるコアなデータはRDBMSで堅牢に管理。一方、セッション情報やランキングなど、高速なアクセスが求められる部分はRedisでキャッシュし、両者の良いとこ取りをする構成が一般的です。
- 大企業の基幹システム:
- 推奨: 商用RDBMS (Oracle) または PostgreSQL
- 理由: 長期的な安定稼働と手厚いサポート、そして厳密なデータ一貫性が最優先されるため、実績のあるRDBMSが選ばれるケースがほとんどです。
最近のトレンド:NewSQLとベクトルデータベース
- NewSQL: RDBMSの信頼性とNoSQLのスケーラビリティを両立しようとするカテゴリです。
Google Cloud Spanner
やCockroachDB
などが代表例で、地理的に分散した環境でも強い一貫性を保ちながらスケールアウトできるのが特徴です。非常に強力ですが、まだ発展途上であり、導入の難易度やコストが高いのが現状です。 - ベクトルデータベース: 近年、生成AIの台頭と共に急速に注目を集めているのがこの分野です。AIがテキストや画像を数値のベクトルとして表現する際の、そのベクトルデータを高速に検索・類似度計算することに特化しています。
Pinecone
やWeaviate
などが有名で、RAG(Retrieval-Augmented Generation)などのAIアプリケーション開発に不可欠な存在となりつつあります。
インフラエンジニアでなくとも、現代のWeb開発者はこれらのクラウドサービスに関する基本的な知識を持つことが求められます。インフラ全般の知識を身につけたい方には、こちらの体系的な教科書がおすすめです。
改訂新版 インフラエンジニアの教科書まとめ
今回は、多種多様なデータベースの世界を、RDBMSとNoSQLという2つの大きな軸で整理し、それぞれの特徴と選び方について詳しく解説しました。
- データの整合性とトランザクションを重視し、構造化されたデータを扱うなら、伝統と信頼のRDBMS。
- データの柔軟性とスケーラビリティを重視し、大規模で非構造化なデータを扱うなら、モダンで拡張性の高いNoSQL。
かつては「データベースといえばRDBMS」一択の時代もありましたが、今やプロジェクトの要件に応じて、多種多様な選択肢の中から最適なものを選ぶ時代です。そして、その選択をより容易にし、開発者が本来のアプリケーション開発に集中できるようにしてくれるのが、クラウドのマネージドデータベースサービスです。
それぞれの技術の特性を正しく理解し、あなたのプロジェクトに最適なデータベースを選定することが、サービス成功への重要な鍵となります。この記事が、そのための羅針盤となれば、これほど嬉しいことはありません。