
ObsidianとCursor、そしてローカルLLM。PjMが実践する「思考の全て」を統合する究極のAI開発環境
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
現代のエンジニアやPjMのワークフローは、高度に専門化する一方で、深刻な「分断」という課題を抱えています。
- アイデアや議事録、知識はナレッジベース(Obsidian, Notionなど)に。
- 実際のコーディングはコードエディタ(VSCode, PhpStormなど)で。
- AIとの対話はチャットUI(ChatGPT, Claudeなど)を通じて。
私たちは日々、これらのアプリケーション間を何度も行き来し、情報をコピー&ペーストし、思考のコンテキストを切り替えるという、目に見えないコストを支払い続けています。この「摩擦」が、私たちの集中力を削ぎ、生産性を低下させている元凶です。
もし、これら全てがシームレスに統合された、一つのワークフローを構築できるとしたら?
あなたの思考の断片が、一切の摩擦なく、最終的な実装(コード)にまで流れ着くとしたら?
この記事では、貴殿のブログで特に高い関心を集めている3つのツール—Obsidian, Cursor, そしてローカルLLM—を組み合わせ、その理想を実現するための、究極のAI開発環境の構築方法を、PjMである私が実践する具体的な手順を交えて、徹底的に解説します。
なぜ、今「ワークフローの統合」が必要なのか?
この究極のワークフローを構築する前に、まず、なぜそれが必要なのか、私たちが日々直面している3つの根本的な問題を整理しましょう。
知識のサイロ化問題
あなたがObsidianに丹精込めて書き溜めたメモ、仕様に関する考察、過去のプロジェクトの知見。それらは、コードエディタを開いた瞬間、遠い存在になってしまいます。結局、私たちは記憶を頼りにするか、アプリケーションを切り替えてコピペするしかありません。これにより、本来活かされるべき貴重なナレッジが「サイロ化」し、死蔵されてしまうのです。
AIのコンテキスト問題
ChatGPTのようなクラウドAIは非常に強力ですが、あなたの個人的な知識や、現在開発中のプライベートなソースコードについては何も知りません。そのため、何かを質問するたびに、毎回ゼロから背景情報をプロンプトとして与える必要があります。これは非効率であると同時に、機密情報を含むコードを外部サーバーに送信することへの、拭いがたいセキュリティ懸念が伴います。
コンテキストスイッチングの認知負荷
「Obsidianでメモを取るモード」から「Cursorでコードを書くモード」へ、そして「ブラウザでAIと対話するモード」へ。このアプリケーション間の移動は、私たちが思う以上に、脳に大きな負荷(コンテキストスイッチングコスト)をかけています。一度集中が途切れれば、再び「ゾーン」に入るためには、多くの時間とエネルギーが必要となるのです。
究極のワークフローを構成する3つの神器
これらの問題を解決し、思考から実装までをシームレスに繋ぐのが、これから紹介する3つのツール、いわば「三種の神器」です。
神器1:Obsidian – あなたの「第二の脳」
もはや説明不要かもしれませんが、Obsidianは、あなたの知識と思考をネットワーク化するための、強力なナレッジベースです。単なるメモツールではなく、双方向リンクによってアイデア同士を繋げ、思考を深めるための「第二の脳(セカンドブレイン)」として機能します。この記事では、ワークフローの「起点」となる、全ての知識の源泉です。
この「セカンドブレイン」という考え方そのものを、より体系的に学びたいのであれば、その概念を世界に広めた名著を読むのが一番の近道です。
SECOND BRAIN(セカンドブレイン) 時間に追われない「知的生産術」デジタル情報をいかにして整理し、知識や創造性として活用していくか。その具体的な手法が、この一冊で解説されています。
神器2:Cursor – AIネイティブな開発環境
Cursorは、AIとの連携を前提にゼロから設計されたコードエディタです。リポジトリ全体をAIが把握し、文脈に応じたコード生成やリファクタリングを得意とします。この記事では、ワークフローの「終点」となる、実装(コーディング)のハブです。
神器3:ローカルLLM (Ollama) – プライベートな思考パートナー
そして、これら2つを繋ぐ神経系が、ローカルLLMです。Ollamaのようなツールを使えば、強力なAIをあなた自身のPC上で、プライベートかつオフラインで動作させることができます。この記事では、ワークフロー全体の「知能」を司る、思考のパートナーとなります。
【実践】思考から実装までをシームレスに繋ぐ、具体的な連携術
それでは、いよいよこれら3つの神器を連携させ、究極のワークフローを構築する具体的な手順を解説します。こうした自分自身のワークフローを常に改善し続ける姿勢こそが、優れたエンジニアの条件とも言えます。その普遍的な哲学と実践について、まずはこちらの一冊で深く学んでおくことをお勧めします。
達人プログラマー ―熟達に向けたあなたの旅優れたエンジニアであり続けるための普遍的な哲学と実践が、この本には詰まっています。
Step 1: ローカルLLMを「神経系」として起動する
まず、ワークフロー全体の頭脳となるローカルLLMを準備します。以前の記事「ローカルLLM環境構築ガイド」で解説した通り、Ollamaをインストールし、ターミナルからお好みのモデル(例えば llama3
)を起動しておきます。
ollama run llama3
このターミナルは、これから行う全ての作業の裏側で、あなたの指示を待つプライベートなAIサーバーとして機能し続けます。
Step 2: CursorのAIを、ローカルLLMに向ける
次に、実装のハブであるCursorが、クラウドではなく、あなたのローカルLLMと対話するように設定します。
- Cursorの
Settings
(設定)を開きます。 AI
セクションに移動し、「Model Provider」を探します。Ollama
を選択し、必要であればモデル名(例:llama3
)を指定します。
これで、Cursorのチャット機能やコード生成機能(Cmd+K
)は、すべてあなたのPC内で完結するようになります。機密性の高いソースコードについて、情報漏洩のリスクを一切気にすることなく、AIに相談できる環境が整いました。
Step 3: Obsidianの知識を、ローカルLLMで拡張する
次に、知識の源泉であるObsidianにも、同じ神経系(ローカルLLM)を接続します。
- Obsidianの
コミュニティプラグイン
から、「Ollama」を検索し、インストールします。 - プラグインを有効化し、設定画面でモデル名(例:
llama3
)を指定します。
これで、あなたの第二の脳は、強力なAIと思考を交わせるようになりました。Obsidianのノートに書き留めたアイデアの断片を選択し、「この文章を膨らませて」「この議事録を要約して」「このアイデアのメリットとデメリットをリストアップして」といった指示を、ローカルLLMに直接出すことができます。
Step 4: Obsidianの知識をCursorに持ち込む(究極の連携)
これが、このワークフローの最終形態です。
- まず、Cursorで、あなたのObsidianの保管庫(Vault)フォルダを直接開きます。(CursorはVSCodeベースなので、
.md
ファイルも快適に編集できます) Cmd+Shift+P
でコマンドパレットを開き、「Workspaces: Add Folder to Workspace…」を選択し、次にあなたの開発プロジェクトのフォルダを追加します。
これで、Cursorの画面左のエクスプローラーには、あなたの「知識(Obsidian Vault)」と「コード(プロジェクトフォルダ)」が、並列に表示されるはずです。
この状態で行う、究極のワークフローを想像してみてください。
あなたは、Obsidianのノートに、新しい機能の仕様や擬似コードを書き出します。
次に、Cursorの画面を分割し、左にそのObsidianノート、右に実装対象のPHPファイル(例:
MyClass.php
)を開きます。そして、左側のObsidianノートに書いた擬似コードを選択し、
Cmd+K
を押して、AIにこう指示します。「この擬似コードを、右側で開いている
MyClass.php
の設計に合わせて、PHPのクラスメソッドとして実装してください。」
AIは、あなたの「思考(Obsidianノート)」と、「プロジェクトの全体像(Cursorが把握するコードベース)」の両方を完全に理解した上で、完璧なコードを生成します。もはや、アプリケーション間のコピー&ペーストや、思考の断絶は存在しません。
このワークフローを実現する「基盤」
ここまで解説してきた究極のワークフローは、複数の高機能なアプリケーションを同時に、かつスムーズに連携させるため、それを支えるパワフルなハードウェア基盤があってこそ、真価を発揮します。
何を隠そう、これは現在、私が実際の業務で、まさにこのワークフローを実現するために愛用しているモデルでもあります。
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まとめ
私たちが目指すべき未来のワークフローは、単一の万能ツールを待つことではありません。Obsidianの「知識をネットワーク化する力」、Cursorの「コードを文脈で理解する力」、そしてローカルLLMの「プライベートな思考力」。それぞれのツールの思想を理解し、それらを連携させることで、思考から実装までが一直線に繋がる、あなただけの究極の環境を構築できるのです。
これは、単なる生産性の向上ではありません。自身の思考プロセスそのものを、AIと共に再設計する、エキサイティングな挑戦です。この記事が、その第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。