知らないと損するSESとフリーランスの本質的な違い|契約とキャリアパスをPjMが徹底解説

こんばんは!IT業界で働くアライグマです!

ITエンジニアとしてキャリアを考える際、多くの人が「SES」と「フリーランス」という働き方の選択肢に直面します。両者はしばしば混同されがちですが、その実態は契約形態から働き方の自由度、キャリアパスに至るまで、全くの別物です。この違いを理解しないまま契約を結んでしまうと、「思っていたのと違う…」という事態に陥りかねません。

特に最近では、「フリーランス」という聞こえの良い言葉を使いながら、実態はSESと変わらない契約を提示する企業も増えています。自分の身を守り、理想のキャリアを築くためには、両者の本質を正確に理解することが不可欠です。

この記事では、現役PjMであり、自らもエンジニアとして多くの契約形態を見てきた視点から、「SES」と「フリーランス」の決定的な違いを徹底的に解説します。契約の罠から、リアルな金銭事情、そしてあなたに最適な働き方の選び方まで、踏み込んで解説していきましょう。

SESとフリーランス、言葉の定義と根本的な違い

まず、最も基本的な定義から押さえましょう。この二つの言葉がどのように使われ、その根底にどのような違いがあるのかを明確にします。

SES(システムエンジニアリングサービス)とは?

SESとは、エンジニアの「労働力」そのものを、特定の期間、クライアント企業に提供する契約形態を指します。多くの場合、エンジニアはクライアント企業のオフィスに常駐し、そこの社員の指示のもとで開発業務を行います。

契約の主体はあくまでエンジニアが所属するSES企業とクライアント企業であり、エンジニア個人が直接契約を結ぶわけではありません。法的には「準委任契約」という形を取ることがほとんどです。重要なのは、「作業を遂行すること」が目的であり、成果物の完成責任を負わない点です。

フリーランス(業務委託)とは?

一方で、一般的に「フリーランス」と呼ばれる働き方は、特定の企業に属さず、個人事業主として独立して仕事を請け負うスタイルを指します。IT業界におけるフリーランスの契約は、主に「請負契約」を指すことが多いです。

これは、特定の「成果物(例:〇〇という機能を持つシステム)」を完成させて納品することを目的とする契約です。SESと違い、仕事の進め方や働く場所、時間などはエンジニア自身の裁量に委ねられています。クライアントは、仕事の進め方について細かく指示することはできません。

PjM視点での決定的違いは「指揮命令権」の所在

PjMとして様々なエンジニアと仕事をしてきた経験から言える最も決定的な違いは、「指揮命令権」がどこにあるかです。

  • SES: 契約上、指揮命令権は所属するSES企業にありますが、実態としては常駐先のクライアント(プロパー社員)から日々の業務指示を受けることがほとんどです。つまり、働き方の自由度は低い傾向にあります。
  • フリーランス(請負): 指揮命令権は完全にエンジニア自身にあります。クライアントは仕様の要求はできますが、「このコードをこう書け」「明日までこれをやれ」といったプロセスへの介入はできません。自らの裁量で仕事を進められる自由度の高さが最大の特徴です。

この「誰の指示で動くのか」という点を理解するだけで、両者の本質的な違いが見えてきます。

メリット・デメリットを徹底比較

次に、それぞれの働き方が持つメリットとデメリットを、エンジニアの視点から具体的に比較してみましょう。

SESのメリット・デメリット

メリット

  • 営業活動が不要: 所属企業が案件を探してきてくれるため、自分で仕事を探す手間が省けます。
  • 収入が安定しやすい: 多くの場合は月額固定での契約となるため、毎月の収入が安定します。
  • 未経験や若手でも参画しやすい: 経験が浅くても参画できる案件が比較的多く、実務経験を積む場として活用できます。
  • 社会保険などの福利厚生: 正社員としてSES企業に所属する場合、社会保険や福利厚生が適用されます。

デメリット

  • 案件を選べない(案件ガチャ): 自分の希望と異なる案件や、スキルアップに繋がらない単純作業の案件にアサインされる可能性があります。
  • 単価が上がりにくい: クライアントからの評価が高くても、所属企業との契約があるため、個人の単価が直接的に上がりにくい構造です。
  • 帰属意識の欠如: 常駐先を転々とすることが多く、自社にも常駐先にも深く馴染めず、孤独感を感じることがあります。
  • 多重下請け構造: 間に複数の会社が入ることで、中間マージンが抜かれ、エンジニアへの報酬が低くなることがあります。

フリーランスのメリット・デメリット

メリット

  • 高単価を目指せる: 自分のスキルが市場価値と直結するため、スキル次第で大幅な収入アップが可能です。
  • 働く場所や時間、案件の自由: 自分のライフスタイルに合わせて、リモートワークや時短案件など、柔軟な働き方を選択できます。
  • 直接契約による高い報酬: クライアントと直接契約すれば、中間マージンがなく、報酬を最大化できます。
  • 専門性が高まる: 自分の得意分野や伸ばしたいスキルに特化した案件を選ぶことで、キャリアの専門性を高められます。

デメリット

  • 収入が不安定: 案件が途切れると収入がゼロになるリスクがあります。常に次の仕事を探す必要があります。
  • 営業から経理まで全て自分で行う: 開発業務だけでなく、営業、契約交渉、請求書発行、確定申告など、全ての雑務を自分で行う必要があります。特に、年に一度の確定申告は多くのエンジニアが頭を悩ませるポイントです。とはいえ、今は分かりやすいガイドブックが数多く出版されています。例えば、税理士が監修したこちらの一冊は、非常に読みやすいと評判です。
  • 高い自己管理能力が求められる: 誰もタスクや進捗を管理してくれないため、徹底した自己管理ができないと仕事になりません。
  • 社会的信用の低さ: 正社員と比較すると、住宅ローンやクレジットカードの審査などで不利になる場合があります。

契約と金銭面でのリアルな違い

表面的な働き方だけでなく、契約書やお金の流れにこそ、本質的な違いが隠されています。

契約形態:「準委任契約」と「請負契約」の罠

前述の通り、SESは「準委任契約」、フリーランス(請負)は「請負契約」が基本です。

  • 準委任契約 (SES): 労働力を提供し、善良な管理者の注意をもって業務を遂行する義務(善管注意義務)を負います。成果物の完成は義務ではありません。
  • 請負契約 (フリーランス): 仕事を完成させる義務を負います。バグなど契約内容に不適合な点があれば、修正する責任(契約不適合責任)が発生します。

注意すべきは「偽装請負」です。 請負契約であるにもかかわらず、クライアントがSESのように現場で直接的な指揮命令を行っている場合、それは違法な「偽装請負」にあたる可能性があります。契約書の内容と実態が乖離していないか、常に注意が必要です。このような契約に関する知識は、エンジニアが自分の身を守る上で最強の武器になります。特に近年「フリーランス保護新法」が施行され、私たちの働き方に関する法律も変わってきています。より深く学びたい方は、専門の解説書などを一冊手元に置いておくことを強くおすすめします。例えば、以下の書籍は弁護士の方が執筆しており、非常に信頼性が高いです。

60分でわかる! フリーランス法 超入門

報酬(単価)の考え方

  • SES: 「月単価〇〇万円」のように、時間(人月)をベースに報酬が設定されます。スキルよりも、稼働時間で計算される側面が強いです。
  • フリーランス: プロジェクト全体で「〇〇万円」という形や、納品物ベースでの報酬設定が基本です。時間ではなく、提供する価値(スキル、成果物)によって報酬が決定されます。

あなたはどっち?キャリアパスから考える最適な選択

結局のところ、どちらが良い・悪いという話ではなく、自分のキャリアプランや志向によって最適な選択は異なります。

安定志向・経験を積みたい若手エンジニアならSESから

もしあなたがエンジニアとしての実務経験が浅く、まずは安定した環境で様々な現場を経験したいのであれば、SESからキャリアをスタートするのは有効な選択肢です。営業の手間なく、確実に実務経験を積める点は大きなメリットと言えるでしょう。

専門スキルを武器に高単価を目指すならフリーランス

一方、特定の技術領域で高い専門性を持ち、それを武器に自分の価値を最大化したいのであれば、フリーランスが向いています。自己管理能力と営業力は必須ですが、成功すればSESでは得られない高い報酬と自由な働き方を手に入れることができます。もしフリーランスという道に強く惹かれるのであれば、その生態系をより深く知ることから始めるのが良いでしょう。業界のバイブルとも言える、こちらの書籍がおすすめです。

フリーランス1年目の教科書:失敗しない独立のために知っておくべきこと: 仕事ゼロから安定収入を得る実践ステップ

これを読めば、必要な準備や心構え、そして継続していくための知恵を体系的に学ぶことができます。

まとめ

今回は、混同されがちな「SES」と「フリーランス」の違いについて、契約形態からキャリアパスまで踏み込んで解説しました。

両者の最大の違いは、自分の「時間」を売るのがSESであり、自分の「スキル・成果物」を売るのがフリーランスであるという点に集約されます。どちらの働き方を選ぶにせよ、そのメリット・デメリット、そして何より契約内容を正しく理解することが、後悔しないキャリアを歩むための第一歩です。

この記事が、あなたの働き方を見つめ直す一助となれば幸いです。