
【祝リリース】個人開発を「完成」させた全技術。PjM流セルフマネジメント術と『Pocket Neuron』開発の裏側
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
「週末に意気込んで始めた個人開発が、いつの間にかGitHubの肥やしになっている…」
多くの開発者が、一度はそんな苦い経験をしているのではないでしょうか。作りたいアイデアはある。それを形にする技術もある。なのに、なぜかプロジェクトは完成しない。その原因は、あなたの技術力ではなく、プロジェクトの「進め方」にあるのかもしれません。
今日は、私が普段の仕事で使っているプロのPjMの技術を、いかにして個人のプロジェクトに応用し、実際に一つのサービスをリリースまで導いたか、その具体的な方法と、完成したサービスのお披露目をさせていただきたいと思います。
なぜ、あなたの個人開発は「エターナる」のか?
個人開発が頓挫する原因は、驚くほど共通しています。
- 曖昧なゴール設定: 「何かすごいものを作りたい」という気持ちだけで、具体的な「完成の定義」がない。どこまで作れば終わりなのかが分からないため、永遠に走り続けることになります。
- 無計画な機能追加: 開発の途中で「あれもいいな」「この機能も面白そうだ」と次々にアイデアを実装した結果、プロジェクトのスコープが肥大化。本来の目的を見失い、複雑さに押しつぶされてしまいます。
- 進捗の不可視化: 一人で黙々と作業していると、今自分が全体のどの位置にいるのか、ゴールまであとどれくらいなのかが分からなくなります。終わりの見えないトンネルを進むような感覚は、確実にモチベーションを蝕んでいきます。
- 完璧主義の罠: 100%完璧な状態になるまで公開できないと思い込み、細部のデザインや、まだ誰も使わないようなエッジケースの対応に時間を費やし、永遠にリリース日がやってきません。
これらの課題は、精神論では解決できません。必要なのは、プロジェクトを客観的に捉え、制御するための「技術」、すなわちプロジェクトマネジメントです。
PjMの「武器」を、たった一人の自分に使おう
プロの現場で使われるプロジェクトマネジメントの「武器」は、個人開発という、たった一人の戦場でも絶大な効果を発揮します。私が特に重要だと考えている4つの武器を、個人開発向けにカスタマイズしてご紹介します。
武器1:プロダクト・バックログ ~「やることリスト」からの卒業~
これは単なるToDoリストではありません。「ユーザーにとって価値のある機能」を単位として、やるべきことを優先度順に並べた、プロジェクトの心臓部です。
実践のコツ:
スプレッドシートやテキストファイルで構いません。まず思いつく限りの機能を「〇〇ができる」「〇〇が表示される」といったユーザー視点の言葉で書き出します。そして、その中で「これがなければ、このサービスは意味がない」というコア機能に印をつけ、一番上に持ってきます。それ以外は、一旦「あれば嬉しいもの」として下に並べておくだけで良いのです。重要なのは、常に上から順番に着手し、途中で下のタスクに手を出さないと固く誓うことです。
武器2:スプリント計画 ~「今週やること」だけに集中する技術~
巨大なバックログを前にして圧倒されないための技術が、スプリント計画です。
実践のコツ:
「今週末」「今週の平日夜」といった、自分が開発に使える時間を一つの単位(スプリント)とします。そして、そのスプリントの開始時に、バックログの一番上から「この期間で確実に完了できる」と自信を持って言える量だけのタスクを取り出します。そして、その期間中は、何があってもそのタスク以外はやりません。たとえ素晴らしいアイデアを思いついても、それはバックログに追加するだけです。この「集中」と「制限」が、あなたをフィーチャークリープの罠から救い出します。
武器3:カンバンボード ~進捗を「見える化」して、自分を褒める~
人間のモチベーションは、進捗が「見える」ことで劇的に向上します。
実践のコツ:
TrelloやNotion、GitHub Projectsといった無料ツールを使い、「ToDo(これからやること)」「Doing(今やっていること)」「Done(完了したこと)」の3つのレーンを作ります。Doingに入れるカードは、常に1枚か2枚に絞りましょう。そして、タスクが完了し、カードをDoneに移動させる瞬間を、自分自身で最大限に祝福してください。この「Doneに溜まっていくカード」の可視化された実績こそが、孤独な開発作業を支える最高のガソリンになります。
武器4:超シンプルなロードマップ ~未来の自分への約束~
プロジェクトの全体像を見失わないための、簡単な地図です。
実践のコツ:
壮大な計画書は不要です。以下のような、ごく簡単なバージョン管理で十分です。
- v0.1(MVP版): コア機能だけが動く、登録不要のバージョン。
- v0.2: ユーザー登録機能と、基本的なデータ保存機能を追加する。
- v1.0: デザインを整え、主要な機能を盛り込んだ正式版として公開する。この簡単なロードマップが、道に迷った時の道標となり、「今はv0.2のタスクに集中すべきだ」という冷静な判断を助けてくれます。
【実践報告】この手法で、記憶力ゲーム「Pocket Neuron」をリリースしました!
そして、このセルフ・プロジェクトマネジメント術を実践した結果、ついに私自身のサービスを一つ、世に送り出すことができました。
▼ 瞬間記憶力ゲーム「Pocket Neuron」
このサービスは、私自身の「言われたことをすぐに忘れてしまう」というワーキングメモリの弱さを、少しでも改善できないかという、極めて個人的な課題から生まれました。
開発にあたり、私は実際にTrelloでカンバンボードを作り、上記のロードマップに沿って開発を進めました。そして本日、メールアドレスでのユーザー登録機能と、日々のスコアの推移をグラフで確認できる機能を備えた、v1.0と呼べるバージョンをリリースすることができました。
難易度選択
数字入力
結果
成績推移
もちろん、まだまだ追加したい機能はたくさんバックログに眠っていますが、まずは「ユーザーの課題を解決できる価値ある製品」として、自信を持ってお届けできる形です。
ぜひ一度、遊んでみてください。そして、もしよろしければ、その感想をXで教えていただけると、今後の開発の大きな励みになります。
まとめ
個人開発を成功させる秘訣は、自分という存在を二人に分けることなのかもしれません。情熱のままにコードを書く「一人の優秀なエンジニア」と、そのエンジニアを冷静に見つめ、タスクを管理し、ゴールまで導く「一人の優秀なPjM」に。
技術力というエンジンに、プロジェクトマネジメントという名のハンドルとブレーキを装備する。それだけで、あなたの素晴らしいアイデアが「GitHubの肥やし」で終わる確率は、劇的に下がるはずです。
この記事が、あなたの眠っているプロジェクトを、再び動かし始めるきっかけになれば幸いです。