設計書と現実が「完全に乖離」している瞬間

こんばんは!IT業界で働くアライグマです!

システム開発において、設計書はプロジェクトの指針となる重要なドキュメントです。要件定義や仕様策定の段階で作成され、チーム全体の共通認識を持つために不可欠なものとされています。しかし、開発が進むにつれ、設計書と現実の実装がまったく異なるものになってしまうことは、決して珍しくありません。

「設計通りに作ったのに、なぜか動かない」「途中で仕様が変わりすぎて、設計書がもはや役に立たない」「設計書に書かれていない仕様が、いつの間にか前提になっている」――こうした経験をしたエンジニアは多いのではないでしょうか?

本記事では、なぜ設計書と現実が乖離してしまうのかを掘り下げ、その原因と具体的な対策を詳しく解説していきます。プロジェクトの成功率を上げるために、設計と実装のギャップをどう埋めるべきか、一緒に考えてみましょう。

設計書と現実が乖離する瞬間

仕様変更が止まらない

システム開発において、仕様変更は避けて通れないものです。プロジェクトが始まった時点では想定していなかった要件が追加されたり、事業環境の変化によって方針が変わったりすることはよくあります。

例えば、以下のようなケースが典型的です。

  • クライアントから「やっぱりこの機能を追加してほしい」とリクエストされる
  • 上層部の意向で「競合サービスに対抗するため、新しい要素を取り入れよう」と急な変更が入る
  • 実際にシステムを動かしてみたら「この画面のレイアウトを使いやすく変更してほしい」と指示が来る

このような変更が積み重なると、設計書と実際のコードが大きく乖離してしまうのです。特に、大きな仕様変更が短期間のうちに何度も繰り返されると、設計書の更新が追いつかなくなり、最終的には「もはや設計書は参考にならないから、コードを見て判断するしかない」という状況に陥ります。

設計書が理想論すぎる

設計時には「理想的なデータフロー」「整ったアーキテクチャ」を描くものですが、実際の開発では、パフォーマンスや開発スピードの都合で現実的な実装が優先されることが多いです。

例えば、

  • 設計では「すべてのデータを正規化」していたが、実装時にクエリのパフォーマンスが悪化し、非正規化せざるを得なくなった
  • 「マイクロサービス化する」と決めたのに、開発の手間が大きすぎてモノリシックな構造のまま進めることになった
  • 理想のAPI設計をしていたが、フロントエンドの要望でレスポンス形式を変更せざるを得なくなった

このように、設計書は「理想」、現実は「実用性重視」というギャップが発生することで、乖離が生じてしまいます。

ドキュメントの更新が追いつかない

現場のエンジニアは、実装やバグ修正に追われるあまり、設計書を更新する余裕がなくなることがよくあります。

特に、短期間でのリリースを求められるプロジェクトでは、設計書の更新は後回しにされがちです。

  • 「設計書を直すよりも、とりあえず動くものを作るほうが優先」
  • 「設計書の更新が面倒で、誰も手をつけない」
  • 「コードを見れば分かるから、設計書の修正は不要という空気になる」

こうした状況が続くと、設計書と現実のシステムは完全に乖離してしまいます

設計書と現実の乖離を防ぐには?

設計書は「適度な柔軟性」を持たせる

設計を完璧に固めすぎると、仕様変更や実装時の調整に対応できなくなります

そのため、「この部分は変更の可能性がある」「ここは最適な方法を実装時に選ぶ」といった、ある程度の柔軟性を持たせた設計が重要です。

  • すべての細かい仕様を決めすぎず、変更しやすい設計を意識する
  • 「絶対に変わらない部分」と「後から調整する部分」を分けて設計する」
  • 設計の段階で「どこまで確定しているか」を明示しておく

設計書の更新を開発フローに組み込む

設計書と実際のシステムを一致させるためには、設計書の更新を開発プロセスに組み込むことが必要です。

  • 設計書の更新をPull Requestの必須項目にする
  • 設計ドキュメントをGitなどで管理し、変更履歴を明確にする
  • スプリントごとに「設計書の見直し」をタスク化する

こうすることで、設計書が古くなりすぎることを防ぐことができます。

コード自体を「ドキュメント」として活用する

設計書の更新が難しい場合は、コード自体を設計ドキュメントとして活用する方もあります。

  • クラス名や関数名を分かりやすくすることで、設計意図を表現する
  • コメントやREADMEを充実させ、設計の背景を説明する
  • API仕様は自動生成ツール(Swaggerなど)を活用する

こうすることで、設計書を手作業で更新する負担を減らしつつ、ドキュメントとしての役割を維持できます。

まとめ

設計書と現実が乖離するのは、開発現場ではよくあることです。しかし、それを放置すると、チーム内の混乱や開発コストの増加につながります。

設計書を現実と一致させるために重要なのは、

  • 柔軟な設計を心がけること
  • 設計書の更新を開発プロセスに組み込むこと
  • コード自体をドキュメントとして活用すること

このような対策を取ることで、設計書と現実のギャップを最小限に抑え、スムーズな開発を進めることができます。