技術記事を書こうとして脱線するエンジニアの心境

こんばんは!IT業界で働くアライグマです!

エンジニアとして技術ブログを書こうとすると、気がつけば最初に考えていたテーマとはまったく異なる方向に話が進んでしまうことがあります。本来は特定の技術についてわかりやすく解説するつもりだったのに、書き進めるうちに歴史的背景を掘り下げてしまったり、開発現場での体験談が増えてしまったりすることはないでしょうか。

この現象は、単なる「脱線」ではなく、エンジニアならではの思考の流れによるものとも言えます。技術をより深く理解しようとするあまり、関連情報を調査し、次々と新しい知識を吸収していくうちに、いつの間にか本来の主題とは別の話に夢中になってしまうのです。

本記事では、技術記事を書こうとしながら脱線してしまうエンジニアの心境を掘り下げ、その原因を探るとともに、スムーズに執筆を進めるための方法について考えてみたいと思います。

技術記事を書こうとして脱線するエンジニアの心境

技術記事を書き始めると、なぜか背景を語りたくなる

技術記事を執筆する際、多くのエンジニアは単なる手順書を書くことにとどまらず、その技術が誕生した背景や必要とされる理由を説明したくなります。読者に単なる「やり方」だけでなく、「なぜそれが必要なのか?」を理解してもらうことが重要だと考えるからです。

たとえば、「Laravelのサービスコンテナの使い方」という記事を書こうとした場合、最初に意識するのは実際のコード例や実装方法でしょう。しかし、執筆を進めるうちに、次のような疑問が頭をよぎります。

  • そもそもサービスコンテナとは何か?
  • なぜLaravelはサービスコンテナを採用しているのか?
  • PHPのオブジェクト管理の歴史を振り返ると、サービスコンテナの役割がより明確になるのでは?

このように考え始めると、サービスコンテナの基本的な使い方を説明するはずの記事が、気づけば「PHPにおける依存性注入の進化」といった壮大なテーマへと変貌してしまいます。

読者にとって背景知識は確かに重要ですが、あまりにも詳細に解説しすぎると、本来の主題がぼやけてしまい、読者が求めていた情報にたどり着くのが遅くなってしまうという問題が発生します。

例え話を入れすぎて迷子になる

技術的な概念をわかりやすく伝えるために、例え話を使うことは非常に効果的です。特に、抽象的な概念や初心者には理解しづらい仕組みを説明する際には、適切な比喩が役立ちます。しかし、これが過剰になると、文章が本来のテーマから逸脱し、最終的に例え話ばかりが印象に残る記事になってしまうことがあります。

たとえば、「Vue 3のリアクティブシステム」について説明する際、

  • 「リアクティブシステムとは、まるで通知を受け取る郵便受けのようなものです。」
  • 「あるいは、監視カメラのようにデータの変化を見張っていて、変わった瞬間に自動で動作するのです。」

といった具合に、つい複数の例え話を用いてしまうことがあります。

最初の1つの例えで伝わる場合もあるのに、「もう少しわかりやすく」と考えるあまり、次々に別の例え話を加えてしまうと、読者の注意がそちらに向かいすぎて、本来伝えたかった技術の核心部分が伝わりにくくなるという結果を招きます。

技術記事の目的は、読者に技術的な知識をわかりやすく提供することです。そのため、例え話はあくまで補助的な役割と考え、本題から逸れすぎないようにすることが重要です。

実装例を書こうとして、最適解を求めすぎる

技術記事を書く際には、読者が実際に試せるコード例を提供することが重要です。しかし、「もっと良い書き方があるのでは?」と考え始めると、なかなか筆が進まなくなります。

たとえば、「PythonでデータをCSVに書き込む方法」を説明しようとすると、

  • csv.writer を使う方法
  • pandas.to_csv() を使う方法
  • DictWriter との違いを解説

……と、どれを採用すべきか迷い始めます。さらに、「この書き方だとエラー処理が甘いかもしれない」「よりシンプルな記述方法はないだろうか」と考え出すと、技術記事の執筆がストップし、コードのリファクタリングに時間を費やすことになってしまいます。

もちろん、読者にとって最適な実装方法を示すことは大切ですが、記事の目的が「技術の紹介」なのか「最適なコードの探求」なのかを意識することが重要です

まとめる段階で「もっと良い構成があるはず」と考え始める

ようやく記事を書き終えたと思っても、次にやってくるのが「構成の迷走」です。

  • 「この順番で本当に読みやすいだろうか?」
  • 「結論を最初に持ってきた方がいいのでは?」
  • 「いや、やっぱり前提知識を説明してからの方がいいか?」

こうした考えが浮かぶと、何度も記事の構成を変更し、結局どのパターンが最適なのかわからなくなってしまいます。

完璧な構成を求めるあまり、記事の公開が遅れてしまうのはエンジニアあるあるの一つです。「完璧な記事」よりも「伝わる記事」を目指すことが重要です。

まとめ:どうすれば脱線せずに技術記事を書けるのか?

技術記事をスムーズに執筆するためには、いくつかのポイントを意識することが大切です。

  • 記事のゴールを決める
    執筆前に「この技術をどのレベルの読者に伝えるのか?」を明確にしておくと、脱線しにくくなります。

  • 見出しを先に作る
    記事の骨組みを決めておくことで、構成がブレにくくなります。

  • 例え話や背景説明は最小限にする
    必要な部分に絞ることで、主題がぼやけるのを防ぎます。

  • 完璧を求めすぎない
    「8割の完成度で公開する」というマインドを持つと、執筆のハードルが下がります。

エンジニアの思考は、本質を追求しようとする性質を持っています。しかし、そのせいで技術記事の執筆が進まないのは本末転倒です。脱線しそうになったら、「この情報は本当に必要か?」と立ち止まることが大切です