データベースのレプリケーション、同期ズレでデータが不整合になった話

こんばんは!IT業界で働くアライグマです!

データベースのレプリケーションは、システムの可用性向上や負荷分散を目的として広く利用されています。しかし、レプリケーションが適切に管理されていない場合、データの同期ズレが発生し、深刻なデータの不整合を引き起こすことがあります。特に、非同期レプリケーションを採用しているシステムでは、データの伝播に遅延が生じる可能性があり、それによってアプリケーションの挙動に影響を与えることがあります。

本記事では、データベースのレプリケーションにおける同期ズレの問題が実際のシステムでどのように発生し、どのような影響を及ぼしたのかを紹介し、その原因と具体的な対策について詳しく解説します。

データベースのレプリケーションとは

データベースのレプリケーションとは、あるデータベース(プライマリ/マスター)に対する変更を、他のデータベース(セカンダリ/スレーブ)に複製する仕組みのことを指します。これにより、システム全体のパフォーマンス向上や、障害発生時の可用性向上が期待できます。

レプリケーションには、主に「同期レプリケーション」と「非同期レプリケーション」の2種類があります。それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

同期レプリケーション

同期レプリケーションでは、プライマリデータベースでデータの変更が発生すると、その変更がすべてのセカンダリデータベースに即座に反映される仕組みになっています。この方法の利点は、すべてのデータベースで整合性が確保されることですが、一方でレプリケーション処理が完了するまでトランザクションがコミットされないため、パフォーマンスが低下する可能性があります。

非同期レプリケーション

非同期レプリケーションでは、プライマリデータベースでの変更が即座にセカンダリデータベースに反映されるわけではなく、一定の遅延を伴ってデータが同期されます。この方法の最大の利点は、書き込み処理が速くなることですが、レプリケーションの遅延によってデータの整合性が崩れるリスクがあるため、慎重な運用が求められます。

レプリケーションの同期ズレが発生した事例

発生した問題

あるECサイトで、ユーザーが商品を購入したにもかかわらず、管理画面で注文データが表示されないという問題が発生しました。ユーザー側の注文履歴には正常に記録されているものの、管理者が確認する画面では注文情報が欠落していました。

原因

  • 非同期レプリケーションの遅延: プライマリデータベースで注文データが登録されたが、セカンダリデータベースへの伝播が遅延していた。
  • クエリの読み取り先の不一致: ユーザーの注文履歴はプライマリデータベースから取得していたが、管理画面では負荷分散のためセカンダリデータベースを参照していた。
  • 高負荷時のデータ転送遅延: ピーク時には数秒の遅延が発生し、注文情報が管理画面で一時的に欠落する状況が発生していた。

影響

  • ユーザーからの問い合わせが急増し、カスタマーサポートの対応コストが増加。
  • 一部の注文が正しく処理されているか不明確になり、在庫管理の混乱が発生。
  • 信頼性の問題により、サービスの評価が低下するリスクが発生。

レプリケーションの同期ズレを防ぐための対策

一貫性のあるデータ参照ルールの適用

  • 重要なデータ(注文情報、決済情報など)は、常にプライマリデータベースから取得するように統一。
  • 読み込み負荷を分散するためのクエリは、データの整合性が求められない部分に限定。

レプリケーション遅延の監視とアラートの導入

  • レプリケーションのラグ(遅延時間)をリアルタイムで監視し、閾値を超えた場合にアラートを発生させる仕組みを導入。
  • 遅延が長時間続く場合は、一時的にすべての読み込みをプライマリデータベースに切り替える運用を実施。

セカンダリデータベースの最新データを取得するクエリの利用

  • MySQL の WAIT_FOR_REPLICATION や PostgreSQL の synchronous_commit 設定を活用し、データが最新であることを保証。
  • READ_COMMITTED などの適切なトランザクション分離レベルを設定し、一貫性を確保。

データベースの負荷分散戦略の見直し

  • 必要に応じて、セカンダリデータベースの台数を増やし、負荷を分散。
  • キャッシュ(Redisなど)を活用し、データベースへの読み込み負荷を軽減。

ユーザーへの情報提供の工夫

  • レプリケーション遅延が発生する可能性がある場合、管理画面に「データ更新が遅れる可能性があります」と表示。
  • 遅延が発生した場合、注文情報の取得先を自動的にプライマリデータベースに切り替えるロジックを追加。

まとめ

データベースのレプリケーションは、システムのパフォーマンスと可用性を向上させるために欠かせない技術ですが、適切に管理しないと同期ズレが発生し、データの不整合が生じるリスクがあります。

特に、非同期レプリケーションではデータの整合性を確保するための工夫が必要です。本記事で紹介したように、

  • データの取得先を適切に管理する
  • レプリケーションの遅延を監視する
  • データベースの負荷分散を最適化する

といった対策を講じることで、同期ズレによるトラブルを防ぐことができます。レプリケーションの管理はシステムの安定運用に直結するため、常に最新の状況を把握し、適切な設計と運用を行うことが重要です。