
SESフリーランスが転職を迷う理由とその解決法
こんばんは!IT業界で働くアライグマです!
フリーランスエンジニアとして、特にSES(システムエンジニアリングサービス)の形態で活躍されている方の中にも、自身のキャリアパスについて改めて考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。
SESフリーランスは、多様な案件に携われたり、比較的高収入を得やすかったり、働く時間や場所にある程度の自由があったりと、魅力的な働き方の一つです。しかしその一方で、将来への漠然とした不安を感じたり、より安定した環境を求めて正社員への転職を考えたりすることもあるでしょう。
ですが、いざ転職しようと思っても、「本当に今転職すべきなのだろうか?」「フリーランスのメリットを手放して後悔しないだろうか?」といった迷いが生じ、なかなか一歩を踏み出せないケースも少なくありません。
この記事では、SESフリーランスの方が転職を迷ってしまう具体的な理由を掘り下げ、その迷いを解消し、ご自身にとって納得のいくキャリアを選択するための解決策を詳しく解説していきます。
SESフリーランスが転職を迷う主な理由
なぜ、多くのSESフリーランスは転職に迷ってしまうのでしょうか?そこには、様々な理由や心理が隠されています。
収入面の不安(減収リスク)
現在の高単価・高収入への執着
フリーランス、特にSES案件は、比較的単価が高く、正社員時代よりも収入が大幅にアップしたという方も多いでしょう。一度経験した高い収入水準を手放すことへの抵抗感は、転職をためらう大きな理由の一つです。
正社員給与への不安
転職先の正社員としての給与が、フリーランス時代の収入(特に手取り額)を下回ってしまうのではないか、という懸念があります。特に経験が浅い場合や、特定のスキルに特化しすぎている場合に、この不安は大きくなります。
可処分所得の変化
フリーランスは経費計上が可能ですが、正社員になると給与所得控除のみになります。また、社会保険料の負担割合も変わるため、単純な年収比較だけでは分からない、可処分所得の変化も気になるところです。
働き方の自由度を失うことへの懸念
時間や場所の制約
毎日の通勤、決められた勤務時間、オフィスでの勤務といった、正社員ならではの時間的・場所的な制約を受け入れることへの抵抗感があります。フリーランスの自由な働き方に慣れているほど、このギャップは大きく感じられます。
案件選択の自由度の喪失
フリーランスであれば、自分のスキルや興味に合わせて案件を選ぶことが可能ですが、正社員になると会社の方針や指示に従ってプロジェクトにアサインされることになります。やりたくない業務や、興味のない技術に関わらなければならない可能性への懸念です。
人間関係や社内政治
常駐先が変わるSESとは異なり、正社員は同じ組織で長く働くことになります。固定された人間関係の中で発生しうる煩わしさや、社内政治といった、フリーランス時代にはあまり意識しなかった要素への不安も転職をためらわせます。
スキル・経験への不安
経験の偏り
SESでは特定の技術領域や工程(例えば下流工程のみ)に長期間従事することも多く、自身のスキルセットに偏りがあるのではないか、正社員として求められる幅広いスキルや経験(上流工程、マネジメントなど)が不足しているのではないか、という不安を感じることがあります。
最新技術へのキャッチアップ不足
常駐先の業務に追われ、自主的な学習や最新技術のキャッチアップが疎かになっていると感じている場合、転職市場で自分のスキルが通用するのか不安になります。
将来性・安定性への期待と現実
正社員=安定というイメージ
一般的に「正社員は安定している」というイメージがあり、将来の安定を求めて転職を考える方は多いです。福利厚生や雇用の継続性への期待があります。
変化する「安定」の定義
一方で、近年は終身雇用制度が過去のものとなりつつあり、大企業でもリストラが行われる時代です。「正社員=絶対安泰」ではないという現実も認識しており、スキルさえあればフリーランスでも安定して稼げるのではないか、という考えも同時に存在します。このギャップが迷いを生みます。
転職活動へのハードル
手間と時間
日々の業務をこなしながら、職務経歴書の作成、企業研究、面接対策といった転職活動に時間と労力を割くこと自体が大きなハードルになります。
市場価値への不安
自分のスキルや経験が、転職市場でどの程度評価されるのか分からないという不安があります。特にSESでの経験が、事業会社などでどう見られるのか気になる方も多いでしょう。
転職先が見つかるか
そもそも、希望する条件に合う転職先が見つかるのかどうか、という根本的な不安も存在します。
現状への満足(不満はあるが、大きな問題ではない)
大きな不満がない
収入や働き方に多少の不満や将来への不安はあっても、現状のSESフリーランスとしての働き方に大きな問題はなく、それなりに満足している場合、あえて変化を選ぶことへのモチベーションが上がりにくいことがあります。
変化への抵抗(現状維持バイアス)
人間には、変化を避け、現状を維持しようとする心理(現状維持バイアス)が働くことがあります。転職という大きな変化に対して、無意識に抵抗を感じている可能性もあります。
迷いを解消するための解決策(具体的なアクション)
これらの迷いや不安を抱えたままでは、前に進むことはできません。迷いを解消し、納得のいくキャリア選択をするために、以下の具体的なアクションを試してみましょう。
自己分析とキャリアプランの明確化
なぜ転職したいのか?動機を深掘りする
まず、「なぜ自分は転職を考え始めたのか?」その根本的な動機を深く掘り下げてみましょう。「収入アップ」「安定」「スキルアップ」「やりがい」「人間関係」など、具体的な理由を書き出してみます。
キャリアにおける優先順位付け
次に、自分がキャリアにおいて何を最も重視するのか、優先順位を明確にします。「収入」が最優先なのか、「働く時間や場所の自由度」なのか、「技術的な挑戦」なのか。全てを満たすことは難しい場合もあるため、自分にとって譲れない条件を明らかにします。
強み・弱み・市場価値の把握
これまでの経験を棚卸しし、自分の技術的な強み、得意なこと、逆に苦手なことや不足しているスキルを客観的にリストアップします。可能であれば、自身の市場価値(どのくらいの年収が期待できるかなど)も把握しましょう。(後述のエージェント活用も有効です)
将来像の設定
5年後、10年後、自分はどのようなエンジニアになっていたいか、具体的な目標を設定します。目標が明確になることで、今取るべき行動が見えてきます。
情報収集と比較検討
リアルな情報の収集
転職サイトや企業の採用ページだけでなく、口コミサイト、SNS、知人の話などを通じて、正社員のリアルな給与水準、労働環境、企業文化などの情報を集めましょう。
市場動向の把握
現在のエンジニア転職市場の動向や、どのようなスキルが求められているのかを把握します。自分のスキルセットとのギャップを確認し、必要であれば学習計画を立てます。
多様な選択肢の検討
正社員への転職だけが選択肢ではありません。フリーランスとして継続する場合でも、より条件の良いエージェントに変更する、エンド直請け案件を目指す、あるいは受託開発に挑戦するなど、様々な道があります。自社開発企業への転職や、起業という選択肢も視野に入れて比較検討しましょう。
体験談の収集
実際にSESフリーランスから正社員へ転職した人や、他の働き方を選んだ人の体験談を聞くことは、非常に参考になります。
収入シミュレーションと比較
手取り額での比較
正社員になった場合の想定年収だけでなく、税金や社会保険料を差し引いた後の「手取り額」をシミュレーションしてみましょう。フリーランス時代の収入(売上から経費や税金・保険料を引いた額)と比較することで、より現実的な収入の変化が見えてきます。
トータルでの比較
給与だけでなく、賞与、退職金、家賃補助、資格取得支援、研修制度といった福利厚生も含めて、トータルで比較検討することが重要です。目先の収入は下がっても、長期的に見るとメリットが大きい場合もあります。
スキルアップと実績作り
不安領域の克服
自己分析で見えたスキル不足の領域について、学習を進めたり、関連資格を取得したりすることで、自信をつけることができます。
アピールできる実績の構築
転職活動でアピールできるよう、現在の業務や自己学習を通じて、具体的な成果や実績(ポートフォリオ)を作りましょう。GitHubでのコード公開や技術ブログでの発信も有効です。
市場価値の向上
常に自身の市場価値を高める意識を持ち、具体的な行動を起こすことが、将来の選択肢を広げます。
転職エージェントの活用
客観的なアドバイスと情報提供
IT業界に特化した転職エージェントは、キャリア相談に乗ってくれたり、客観的な市場価値を診断してくれたりします。非公開求人の情報を持っていることも多いです。
転職活動のサポート
職務経歴書の添削や面接対策など、転職活動の具体的なサポートを受けることで、活動のハードルを下げることができます。複数のエージェントに登録し、比較検討するのも良いでしょう。
「試しに」転職活動をしてみる
行動から得られる気づき
頭で考えているだけでは分からないことも多いです。実際に興味のある企業に応募し、選考を受けてみることで、企業のリアルな評価や、自分が本当に何を求めているのかが見えてくることがあります。
内定後の判断
必ずしも転職する必要はありません。内定を獲得してから、提示された条件と自身のキャリアプランを照らし合わせ、最終的に判断するという選択肢もあります。
フリーランス保護新法の動向も注視
2024年に成立した「フリーランス保護新法」(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスの保護を強化するもので、今後の運用次第ではフリーランスの待遇改善に繋がる可能性があります。(2025年秋頃までに施行予定)こうした法制度の動向も、働き方を選択する上での判断材料の一つとして注視しておくと良いでしょう。
まとめ
SESフリーランスの方が転職に迷うのは、決して珍しいことではありません。収入、働き方の自由度、スキル、将来性など、様々な要因が絡み合い、決断を難しくさせていることでしょう。
大切なのは、なぜ迷っているのか、その原因を一つ一つ丁寧に紐解き、ご自身のキャリアにおける価値観や目標を明確にすることです。そして、十分な情報収集と自己分析に基づき、主体的にキャリアを選択していくことです。
正社員への転職が唯一の正解ではありません。フリーランスを続けること、別の働き方を探ること、すべてが選択肢です。この記事でご紹介した解決策を参考に、焦らず、しかし着実に行動を起こし、ご自身が心から納得できるキャリアパスを見つけてください。あなたのキャリアがより良い方向へ進むことを応援しています。